春は反則金祭り!? 2026年4月に始まる「自転車の青切符導入」を考える
2026.01.26 デイリーコラムいつから“無敵”になったのか?
先日見かけた光景は、ドライバー目線でいえば理不尽極まりないものだった。
場所は東京都内の私鉄駅の近くの、片側1車線あるけれど狭い三差路だ。そこで信号待ちをしていたのだが、自転車側の信号が赤になっても、それを無視して進む自転車の多いこと多いこと。まるで赤信号ではなく青信号であるかのように、まったく止まる気配がないのだ。
それも1台や2台じゃない。例外なく、次から次へと自転車が信号無視して進んでいくのだから悪夢でも見ているようだった。
おそらく「みんながやっているから」という気持ちなのだろう。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」の最上級活用を目の前でまざまざと見せられたような気分になってきた。どうやらそこでは、自転車にとっての赤信号は単なる飾りらしい。
おかげで青信号側のクルマは信号無視自転車の通過を待たなければならず、全く前へ進むことができなかった。一回の青信号でクルマは1台もこの交差点を通過できなかったのだからあきれるほかない。とにかくひどい光景だった。
最も問題だと思ったのは、自転車側には罪の意識の片りんも見られないことだ。まるで見えていないかのように赤信号を無視する。速度を落とす気配も、青信号側にいる(本来なら優先されるべき)クルマの存在を確認するそぶりすらなかったのだから。いつから自転車乗りは「無敵の人」になったのだろうか。筆者は思った。これでは自転車事故が減るわけがない……と(統計をみると実際に自転車事故は減っていない)。
反則金は「より実効性ある責任追及」
ドライバー目線で一方的に語って申し訳ないとは思うが、例えば東京都内でクルマを運転していると、ヒヤッとすることは少なくない。ウインカーを出して左折しようとするクルマを左側から抜いていったり、車線を逆走してきたり、赤信号を無視したり。「クルマとの事故になったら悪いのはクルマだし」と思っているのだろうか。それとも何も考えていないのか。もし事故になった際、身体的なダメージを追うのはどう考えても自転車のほうなのだけれど。
もちろん、自転車側からすればクルマに対して言いたいこともあるだろう。とはいえ、だからといって自転車がルールを守る必要がないかといえばそんなはずはない。都内の自転車の尊法精神が極めて低いのは事実だ。もちろん、しっかりとルールを守る自転車乗りも、なかにはいるわけだが。
しかし、そんな無敵のサイクリストでいられるのも、この3月までかもしれない。2026年(令和8年)4月1日からは自転車の交通違反に「交通反則通告制度」が導入され、悪質性・危険性の高い違反については取り締まりを実施するだけでなく「青切符」が適用されるようになるのだ。
つまり、これまでも飲酒運転などを対象に適用されていた「赤切符」だけでなく、反則金制度が設けられて、これまでよりも交通違反の摘発がされやすくなるのである。
「赤切符」とか「青切符」というのは、サッカーでいえば「レッドカード」とか「イエローカード」のようなもの。これまではレッドカードしかなかったから判定を出すハードルが高かったが(警察による捜査、検察の起訴、裁判を経てようやく罰金)、イエローカード制度ができたことで細かい違反も認定されやすくなったといえばわかりやすいだろうか。ただし、交通違反の場合は「イエローカード2枚で退場」ではなく「1枚もらった時点で反則金」となる。
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自転車側の安全のためにも
対象となるのは16歳以上のすべての自転車利用者で、対象となる違反内容はいくつかあるが、以下が取り締まりの中心となるだろう(カッコ内は反則金の金額)。
- スマホ・携帯を使用しながらのながら運転(1万2000円)
- 信号無視(6000円)
- 逆走・歩道通行などの通行区分違反(6000円)
- 一時停止不履行(5000円)
- 傘差し運転・イヤホン使用・無灯火運転(5000円)
どれも、都市部でクルマを運転していれば見かけないどころか一日に何度も見かける“よくある違法行為”だ。これまでは「みんながやっているから」と続いてきた自転車乗りのそれら事故につながる悪い常識は、今後はもう通用しなくなる可能性が高い。
特に施行直後となる2026年の春は、都市部で相次いで取り締まりが行われるだろう。
この制度が始まる背景には、「自転車事故が減らない」だけでなく「自転車が加害者となり歩行者にダメージを与える事故が増えている」という事実がある。自転車は対クルマとなると「弱者」ではあるが、歩行者に対しては「強者」。歩行者に対する加害性と責任を自転車乗りに認識してもらうことも目的というわけだ。
目指すところは、事故をなくすことである。
だから「どちらが悪い」ではなく、クルマ側が事故をなくす努力をしなければならないのは言うまでもない。と同時に、自転車側もあらためてルールを守ることの意味をしっかり考えるのもいいだろう。なにより、自分の身を自分で守るために。
もちろん、自転車乗りだってドライバーに対して言いたいことはたくさんあると思う。個人的にも、狭くて流れの速い、自転車レーンのない幹線道路でも車道を走れというのは、お互いのために考えたほうがいいと思ったりはする。ただ、対歩行者で考えると歩道を走るわけにはいかないから難しいところだが……。
(文=工藤貴宏/写真=webCG/編集=関 顕也)

工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
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