新型「RAV4 PHEV」が実現した「EV走行換算距離151km」を支える技術とは?
2026.03.11 デイリーコラムEV走行換算距離が1.5倍に
6代目となる新型「トヨタRAV4」は2025年5月21日に都内で世界初公開され、日本では同年12月にハイブリッド車(HEV)が発売された。2026年3月9日にはプラグインハイブリッド車(PHEV)が発売され、ラインナップが拡充している。
HEV、PHEVともに2.5リッター直列4気筒自然吸気エンジンに発電用と駆動用の2つのモーターを備えたトランスアクスルを組み合わせ、シリーズパラレルハイブリッドシステムを構成していることに変わりはない。しかし、PHEVはさらなる高効率化を図った最新の第6世代を搭載している点でHEVと決定的に異なる。第6世代シリーズパラレルハイブリッドシステムは国内ではRAV4が初出しとなる。
新型RAV4のPHEVは第6世代シリーズパラレルハイブリッドシステムを搭載するのに加え、前型RAV4のPHEVに対してバッテリーを30%大容量化することにより、(WLTCモードによる)EV走行換算距離を従来の95kmから151kmへと大幅に伸長させている。新型のバッテリー容量は未公表だが、前型は18.1kWhだったことが分かっているので、単純に計算すれば23.5kWhということになる。2010年に発売された「日産リーフ」のバッテリー容量が24kWhだったことを考えると、新型RAV4 PHEVはひと昔前の電気自動車(BEV)並みのバッテリー容量を備えていることになる。
BEVもそうだが、PHEVも一充電あたりのEV走行距離は伸びる方向だ。EUで課される企業別平均CO2排出量規制をクリアするにはEV走行距離は長いほうが有利という側面もあるが、一方で、ユーザーもより長いEV走行距離を求めているということだろう。ユーザーが必要としていない航続距離はシステム重量やコストにはね返り、ひるがえってユーザーの負担になる。トヨタが新型RAV4 PHEVで前型に対してEV走行距離を1.5倍以上にしてきたのは、それが商品価値を高めるという裏づけ(=自信)があるからだろう。
第6世代ハイブリッドの技術的ハイライト
三菱自動車は2024年に行った「アウトランダー」の商品改良で、やはりEV走行距離を伸ばしてきた。従来は20kWhのバッテリー容量に対して87kmだったEV走行換算距離は、改良型では22.7kWhのバッテリー容量に対して106kmに伸ばしている(いずれもWLTCモード)。システムの高効率化もあり、バッテリー容量の増加以上の比率でEV走行距離は伸びている。
新型RAV4 PHEVが実現したEV走行距離は、商品改良で距離を伸ばしたアウトランダーPHEVの数値がかすむほどだ。バッテリー容量(RAV4の数値はあくまで予想だが)の違い以上に、EV走行距離の数字の開きは大きい。カラクリは高効率化を図った第6世代シリーズパラレルハイブリッドシステムにありそうだ。
第6世代の技術的なハイライトは、パワーコントロールユニット(PCU)に使うパワー半導体にシリコンカーバイド(SiC、シリコンと炭素の化合物)を採用したこと。PCUは走行時にはバッテリーの直流電流を交流電流に変換し、モーターに供給することで車速を制御。減速時は回生した電力を、今度は交流から直流に変換してバッテリーに充電する。PCUはハイブリッドシステムにおける電力損失の約4分の1を占めるといわれ、その大半をパワー半導体が占める。
パワー半導体に電流を流すと電力の一部は熱になって失われ、これが損失になる。SiCパワー半導体は従来のシリコンに比べ、電流を流すときの抵抗や、電流を流したり止めたりするオン・オフ(スイッチング)時の損失が小さい特徴がある。そのため、PCUの高効率化を図ることができ、同じ電気エネルギーでより長い距離を走れるようになるというわけだ。
さまざまに活躍するSiC
トヨタは1997年に発売した初代「プリウス」以来、ハイブリッドシステムの高効率化を追求するためパワー半導体の自社開発に取り組んできた。トヨタグループとしては1980年代から豊田中研、デンソーがSiCの基礎研究を始め、2007年からはトヨタも参加し、実用化に向けた技術開発を共同で進めている。ハイブリッドシステムとしては新型RAV4 PHEVがSiC初採用となるが、トヨタ車としては2020年に水素燃料電池車の「ミライ」が昇圧コンバーターにSiCを採用している。
SiCは高周波化しても効率的に電流を流すことができる。この特性を十分に引き出すことによりPCUを構成するコイルやコンデンサーの小型化が可能になり、PCU全体の小型化が可能となる。第6世代ハイブリッドシステムでは実際に大幅な小型化を果たしており、この小型化のおかげで前型RAV4 PHEVでは後席下に搭載していたDC-DCコンバーターと充電器をPCUと一体化することができた。その結果、後席下とエンジンコンパートメントを結んでいた高圧ケーブルが不要になり、kg単位の軽量化を実現している。
また、従来は別体だったPCUとトランスアクスル(2モーター+減速機)も一体化。別体だった従来はPCUとトランスアクスルを高圧ケーブルでつないでいたが、第6世代ではバスバーで内部連結する構造とし、小型・軽量化を図っている。高効率化だけでなく、さまざまな方面で構造改革を促す実力の持ち主がSiC。第6世代はそれ以前の世代とはスケールが異なる大きなジャンプアップを果たしている。
(文=世良耕太<Kota Sera>/写真=トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)

世良 耕太
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