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実に3年半ぶりのカムバック 「ホンダCR-V」はなぜ日本で復活を果たしたのか?

2026.03.06 デイリーコラム 内田 俊一
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王者であることを死守

ホンダは6代目「CR-V」を、先代の販売終了から3年半ほどのブランクを経て、日本市場に導入した(参照)。なぜ再び日本での販売が決まったのだろう? そのあたりを含め、CR-Vのあれやこれやを開発責任者にたずねてみた。

まずホンダのなかでのポジションであるが、現在グローバルマーケットにおいて、最も売れているホンダ車は実はCR-Vであり、押しも押されもしない基幹車種の筆頭である。しかし、SUV人気の伸長もあって、今や周囲はライバルだらけだ。そうしたなかで、どう戦っていくのか? 開発責任者の佐藤英資さんは、「グローバルで見れば、CR-Vはこのセグメントのなかで王者的な位置づけにおり、6代目でも王者であることを死守しなければいけない。それが最大のミッションだった」と明かす。

そこで開発陣は、相反する性能と価値を徹底的に洗い出し、それを高い次元で両立することを目指したという。例えばそれは、「上質なインテリアなのにタフに使えるとか、スポーティーな外観ながら、乗降性がいいとか、運転しやすいけど荷室容量もしっかりある」といったことだ。これについて佐藤さんは、「SUVだからという言い訳や諦めを一切排除して、究極のオールラウンダーを目指した」と述べる。実はホンダは、こういった相反する性能の両立を得意としてきた。なにせ彼らは、四輪事業の草創期から「MM(マンマキシマム・メカミニマム)思想」を具現し続けているのだ。

6代目となる「ホンダCR-V」。写真は上級グレードの「e:HEV RSブラックエディション」。
6代目となる「ホンダCR-V」。写真は上級グレードの「e:HEV RSブラックエディション」。拡大
販売の中止と再開の繰り返しもあって、日本ではちょっと影の薄い存在となってしまった「CR-V」だが、北米や中国での人気は健在。グローバルで見れば、実は最も売れているホンダ車なのだ。
販売の中止と再開の繰り返しもあって、日本ではちょっと影の薄い存在となってしまった「CR-V」だが、北米や中国での人気は健在。グローバルで見れば、実は最も売れているホンダ車なのだ。拡大
6代目「CR-V」と、本田技研工業 四輪開発本部 完成車開発統括部LPL室 チーフエンジニアの佐藤英資さん。
6代目「CR-V」と、本田技研工業 四輪開発本部 完成車開発統括部LPL室 チーフエンジニアの佐藤英資さん。拡大
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強みと弱みを把握して

話を6代目CR-Vにもどすと、開発するにあたっては、当然ながら歴代モデルの強みと、足りなかった部分を把握しておく必要がある。佐藤さんは日本市場におけるCR-Vの強みについて、「実用性の高さ。例えば荷室の大きさなどからくる利便性」と答える。また欧州でも販売していることから、「欧州で鍛え上げた走りのよさ」も挙げた。

いっぽう弱点はどこか? 先代にあたる5代目の導入を振り返ってみると、グローバルでのデビューよりいささか遅れて日本で発売されている。「それもあって、装備的に厳しい評価をいただいた。例えば7インチのセンターディスプレイが小さいとか。またセンシング機能も最新の仕様ではなかったので、そういったところはお客さまの声として挙がっていた」(佐藤さん)。

そこで6代目では、上級グレードの「RSブラックエディション」にホンダ最新の先進運転支援システム「ホンダセンシング360」を日本向けのSUVとして初搭載。そのほかの装備を見ても、特にブラックエディションは「グローバルで用意している装備の全部盛り」だという。パッケージ面でも、荷室容量を従来型の497リッターから586リッターに拡大。ドアミラーをスキンマウント(ピラーではなくドアパネルに装着するマウント方法)にするとともに、Aピラーの角度とドアミラーの端の角度を合わせるなどして、視界も大幅に向上させている。

走行性能を見ても、「e:HEV」の変速制御にステップシフトを用いることで、車速に応じた加速フィーリングを実現。そもそもパワートレイン自体が現行「アコード」由来の最新のものとなっており、「走りの質も、ひとランク上がっている」と自信をみせた。

北海道・鷹栖での雪上試乗会より、標準グレードの「e:HEV RS」。
北海道・鷹栖での雪上試乗会より、標準グレードの「e:HEV RS」。拡大
上級グレード「e:HEV RSブラックエディション」のインストゥルメントパネルまわり。従来モデルの反省を踏まえ、機能・装備は現行ホンダ車のなかでも、特に充実したものとなっている。
上級グレード「e:HEV RSブラックエディション」のインストゥルメントパネルまわり。従来モデルの反省を踏まえ、機能・装備は現行ホンダ車のなかでも、特に充実したものとなっている。拡大
荷室の広さに加え、後席の多機能ぶりも6代目「CR-V」の美点。十分広かった従来型より、足元スペースを16mm拡大。さらに調整幅190mmのスライド機構を設け、リクライニング機構の稼働幅も10.5°拡大している。
荷室の広さに加え、後席の多機能ぶりも6代目「CR-V」の美点。十分広かった従来型より、足元スペースを16mm拡大。さらに調整幅190mmのスライド機構を設け、リクライニング機構の稼働幅も10.5°拡大している。拡大
細かい点では、ドアミラーのマウントを変更するなどして、運転席からの視界を改善。運転時のストレスを軽減している。
細かい点では、ドアミラーのマウントを変更するなどして、運転席からの視界を改善。運転時のストレスを軽減している。拡大
先代にあたる5代目「CR-V」。
先代にあたる5代目「CR-V」。拡大
5代目「CR-V」と入れ替わるかたちで登場した「ZR-V」。日本では同車に後を任せ、CR-Vはお役御免となったのだが……。
5代目「CR-V」と入れ替わるかたちで登場した「ZR-V」。日本では同車に後を任せ、CR-Vはお役御免となったのだが……。拡大
「ジャパンモビリティショー2026」より、ホンダのブースを飾る次世代BEVの「Honda 0」シリーズ。今、ホンダが日本で上級車種に力を入れる理由は、近い将来、ラインナップが「軽やコンパクトと高級BEVしかない」といういびつな形になってしまうのを避けるためでもあるのだ。
「ジャパンモビリティショー2026」より、ホンダのブースを飾る次世代BEVの「Honda 0」シリーズ。今、ホンダが日本で上級車種に力を入れる理由は、近い将来、ラインナップが「軽やコンパクトと高級BEVしかない」といういびつな形になってしまうのを避けるためでもあるのだ。拡大
ユーザーの声とメーカーの事情によって、日本で復活を遂げた「CR-V」。このモデルが両者の期待に応えられるか、要注目である。
ユーザーの声とメーカーの事情によって、日本で復活を遂げた「CR-V」。このモデルが両者の期待に応えられるか、要注目である。拡大

「やっぱりCR-Vが欲しい」

さて、日本市場では2022年8月に5代目CR-Vの販売が終了。その3カ月後に新車種「ZR-V」が登場した(参照)。そのサイズは全長×全幅×全高=4570×1840×1620mmと、5代目CR-Vの4605×1855×1680mmに近いものだ。いっぽう、6代目CR-Vは2022年に北米で販売が開始され、その後、欧州や中国にも導入されたが、その時点では日本市場に投入されなかった。理由は、従来型より大幅にサイズアップしたから。外寸は4700×1865×1690mmとなっており、日本の道路事情や市場環境にそぐわないと判断されたのだ。また、4・5代目CR-Vの販売台数が落ちていたことから、上述のZR-Vに後継を託す予定だったのだ。

しかし、佐藤さんによると「ZR-Vは販売的には好評であったが、さらにサイズの大きいSUVが欲しいというニーズもあった。既存のCR-Vユーザーから、『新しいCR-Vが欲しい』という声も多く寄せられた」という。ブランドロイヤルティーの高さが、再投入のきっかけになったようだ。

そしてもうひとつ、メーカーとしてのホンダの事情もあった。現在ホンダは「N-BOX」などのヒットもあり、軽自動車やスモールカーが得意なメーカーというイメージが日本ではついているという。「しかし、今後はラインナップのBEV(電気自動車)化を進めていくので、高価格帯のホンダ車も売っていきたい。とはいえユーザー目線で見ると、買い替えの際に軽自動車からいきなり高価格帯のBEVを提案するのは難しいだろう。それであれば、ZR-Vやアコード、CR-Vといった、ある程度の価格帯のものを今導入しておくことで、次にくる高価格帯のBEVに、ユーザーをつなげていこうという考えもある」と述べた。

ユーザーの声に、ラインナップの事情に、メーカーのおもわくにと、さまざまな理由があって、このタイミングで日本での復活を果たしたCR-V。このクルマをマーケットがどう受け止めるのか? いろいろな意味で興味津々である。

(文=内田俊一/写真=本田技研工業、内田俊一、webCG/編集=堀田剛資)

 
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