第875回:キモは氷上性能! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「ウインターマックス アイスプロ」を試す
2026.07.01 エディターから一言 拡大 |
違いは氷の上で表れる! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX ICE Pro(ウインターマックス アイスプロ)」に、冬の北海道で試乗。氷上性能を徹底的に追求したという新製品の、パフォーマンスの一端に触れた。
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話題の「シンクロウェザー」があればこそ
ダンロップのスタッドレスタイヤであるウインターマックスシリーズから、新作のウインターマックス アイスプロが登場した。ユーザーがスタッドレスタイヤに最も強く求めている、氷上性能に特化したタイヤだという。
ダンロップが、既存の「ウインターマックス02/03」の延長線ではなく、このような性能特化型のスタッドレスタイヤを開発した背景には、オールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」の影響がある。ウエットに強く、ウインター性能も高められたシンクロウェザーが、非降雪地域・準降雪地域をカバーするようになったことで、スタッドレスタイヤはより氷上性能に特化できるようになった、というのがダンロップの考えだ。
そんなウインターマックス アイスプロのキャッチフレーズは、「ゴムがやわらかくて・粘る」である(報道資料より)。ご存じスタッドレスタイヤは、タイヤと氷上路面の間にある水膜をいかに排除して、デコボコとした起伏にゴムを密着させられるかが肝となる。そこでウインターマックス アイスプロは、ゴムの性質を大きく改良している。
要となるのは、新開発の氷上性能特化型ゴムだ。特徴としては、ゴムそのものがこれまでより柔らかく、氷上の小さな凹凸に密着したあとも、滑らず、さらに粘るという。詳細は明らかにされなかったが、住友ゴムが開発した新素材が、ゴムの構造材であるポリマーや補強材であるシリカと強く結びつき、粘りを与えるとのこと。またこうした柔らかいゴムの特性は、経年劣化にも有効だという。
耐摩耗性よりパフォーマンスの持続性を重視
先代にあたるウインターマックス03では、そのゴムにオイルとの親和性が高い「液状ファルネセンゴム」を配合し、柔らかさを得ていた。そして経年劣化でオイルが抜けても、液状ゴムが残り続けることで柔軟性を保っていた。対してゴムそのものが柔らかくなったウインターマックス アイスプロでは、オイルが抜けにくくなった。液状ゴムも引き続き使われているから、より性能が持続するようになったという。
興味深いのは先代モデルとの狙いの違いで、説明会で示された性能比較チャートでは、アイスプロは氷上性能が上がっている一方で、ライフ性能が若干下がっていた。それはつまり、ゴムが柔らかくなったぶんだけ減りが早くなったということだろう。しかし、“タイヤの性能維持”という面で見ると、従来よりも長い期間、ゴムの柔らかさを持続できるようになっている。
この点を考慮すると、例えばあなたのスタッドレスタイヤが、4年(スタッドレスタイヤの一般的な性能寿命)たっても溝を使い切らずに余らせている状況であれば、アイスプロが視野に入ってくる。その状況であれば、多少ライフが短くなることよりも、性能を維持できることのメリットのほうが大きくなるからだ。
逆に4年で溝を使い切る状況なら、シンクロウェザーの選択肢が見えてくる。溝を使い切るということは、雪の少ないドライ路面を走っている割合が多いからだ。であればウエット/ドライ性能に優れるオールシーズンタイヤのほうが、より安全性が高まるというわけだ。
これはあくまで机上の空論で、その中間であればこれまでどおり、ウインターマックス03(や耐摩耗性の高いスタッドレスタイヤ)を使えばいい。つまり目新しさだけでなく、使用環境も加味してタイヤ選びを考えてみてほしい。
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意外にもしっかりとしたドライブフィール
ウインターマックス アイスプロの試乗会は、北海道の住友ゴム旭川タイヤテストコースと、その周辺の一般道で行われた。当日の天気は快晴、気温は約-3℃と、溶けた雪が凍りやすい絶妙なコンディション。一般道での試乗車は「ボルボV60 B4 AWD」だ。テストコース周辺の生活道路に目視できるようなアイスバーンこそなかったが、雪が踏み固められ、やや引き締まった路面状況だった。
話を聞く限り、相当にゴムが柔らかいのだろうな。そう思いつつ試乗したウインターマックス アイスプロはしかし、予想以上にしっかり感のあるタイヤだった。氷上特化型とうたう割にコンパウンドがぐにゃぐにゃと腰砕けしないのは、接地面を増やすために採用されたセンターフラット形状の影響か。トレッド面にはムービングも感じられず、縦方向のグリップ(ブレーキおよびトラクション)もしっかりかかる。
少し残念だったのは、実際の走破性に対して接地感がやや薄かったこと。比較対象のない走行であり、ソフトなコンパウンドを予想しすぎたせいかもしれないが、もう少し手応えがモチモチしていてもよいと感じた。
氷上で感じた確かな違い
テストコースでは、先代モデルにあたるウインターマックス03との比較試乗が行われた。装着車は「フォルクスワーゲン・ゴルフ」だ。コース前半は氷上路面で、1周目にはそこで30km/hからのフルブレーキングを体験。次いで圧雪路のワインディング路(50km/hを目安)を走り、2周目では先ほどの氷上でスラロームを体験。そしてまたワインディング路を走って戻るというものだ。合計2スティント4周の試走となった。
氷上での性能差は、明らかだった。当日は、冬季の旭川にしては気温が高かったこともあって、氷上路面のコンディションはかなり厳しかった(本稿掲載の走行写真は別日撮影のもの)。この状況でウインターマックス03を履いたゴルフは、まずスタートからトラクションコントロールが介入。速度を24km/hまでしか伸ばせなかった。対して、アイスプロでは明らかに蹴り出しがよく、トップスピードも30km/hには届かなかったが28km/hをマーク。速度が高まったぶんだけ制動距離もパイロン区間半分ほど伸びてしまったが、確実な加速感と、より高い制動Gを感じ取ることができた。
また氷上スラロームでも、アイスプロのほうが絶対的なグリップはもちろん手のひらに伝わる接地感も高く、少ない舵角で車体が向きを変えてくれるから、その後の挙動も落ち着いていた。
ワインディング路では、この傾向がさらに強く表れた。速度の乗り方は断然アイスプロが速く、接地感も高いから、速度が3~5km/h高めでも安心して走り続けられる。スラロームでは小さな舵角で向きが変わるため、フロントタイヤを無駄にこじる必要がなく、その抵抗で発生するオーバーステアの量も少なかった。
また下り坂での旋回ブレーキも、安心して掛けることができた。思えば日陰には凍っている箇所も多かったのだろう。氷の路面が入り混じっていたぶんだけ、市街地の走行より確かな手応えを感じ取ることができた気がする。加えて、相対的に見るとウインターマックス03より柔軟性のあるタイヤだということも分かった。
正直なところ、周回数が少なすぎて肝心な“粘り”を体感するところまでには至らなかったが、ダンロップのスタッドレスタイヤとしてアイスプロは、確実な進化を遂げていたといえるだろう。
(文=山田弘樹/写真=住友ゴム工業、webCG/編集=堀田剛資)
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山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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