日産ジューク 15RX(FF/CVT)【ブリーフテスト】
日産ジューク 15RX(FF/CVT) 2010.08.16 試乗記 ……238万3500円総合評価……★★★★
見た目が個性的な「日産ジューク」。中身のほうはどんな仕上がり? 市街地から高速まで、その実力を試した。
見た目だけじゃない
「ジューク」のボディサイズは、「デュアリス」の弟分といえるコンパクトなもので、街中における取りまわしはラクラク。高めのボンネットのせいで車体直前直下の見切りは良くないが、停止線の少し手前に止まることを心掛ければ、子供や小動物に対しても安心できる。いっぽう後方視界はオプションながらバックモニターが効果的に視界をサポートする。
低価格はこのクルマがもつ魅力のひとつではあるが、例えばブカブカしたドアの内張りなど、造りの甘さも散見され、ガッカリさせられる。ただ、このあたりは生産が順調に整えば、繕われる部分だろう。走行に関わるハード面はよくできているから、ユニークな顔だちをはじめとするキャラクターが気に入れば、老若男女を問わず、便利なシティコミューターとして人気を博するのではないだろうか。欲をいえば、全長は4m以下に収めてほしかったが。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「日産ジューク」は、2009年のジュネーブショーで発表されたコンセプトカー「カザーナ」の市販バージョン。日本では、2010年6月にデビューした。SUVとスポーツカーの長所をあわせもつというクロスオーバーモデルで、サイズのうえでは、同社のSUV「デュアリス」の下に位置する。
異形4灯のランプをもつフロントまわりや大きなフェンダーアーチがインパクトを与えるエクステリア、有機的デザインでまとめられたインテリアなど、個性的なデザインが大きな特徴。デビュー当初のエンジンは1.5リッター直4のみで、駆動方式もFFのみ。追って2010年秋には、新開発の1.6リッター直4ターボモデル(駆動方式はFFと4WD)が投入される予定だ。
(グレード概要)
ジュークは、エントリーグレードの「15RS」と、装備をより充実させた「15RX」(=今回のテスト車)の2グレード展開。
後者には本革巻きのステアリングホイールやスエード調トリコットのシート地のほか、走行距離や燃費値といった車両情報が表示される「インテリジェントコントロールディスプレイ」などが備わる。また、インテリジェントキーやプッシュ式エンジンスターター、SRSサイドエアバッグなどのオプションは後者でしか選べないなど、装備上の違いは大きい。なお上記のとおり、年内にもよりパワフルな上級グレードが追加投入される見込みである。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
凹凸に富んだ立体的な造形のメーターまわりは、外観のデザインとも相まって、この手のクルマにふさわしい華やかな雰囲気を盛り上げる。傘のような形状のひさしのおかげで明るさも十分。例えば、ライトをつけない昼間、ビルの谷間などの暗所でも数値が読みやすい。
センターコンソールにあるエアコンやドライブモードを選択するための液晶表示「インテリジェントコントロールディスプレイ」は、現代の若者にこびている印象。画面を見ながらメニューを選んで設定する2段階の操作は面倒だし、安全性に難がある。オーバードライブのスイッチは、ランプ付きのロータリー式より、普通の切り替え方式が望ましい。手の感触に頼る方が便利で安全だ。
(前席)……★★★★
シートの座り心地は、まずまず。サイズは大きめながら、クッションの硬さ配分が適切で腰の位置もよく決まる。表皮はありきたりな素材だが、価格相応か。
高い位置に座るおかげで、視界は良好。ボンネットが少し見える位置関係もいい。ただし、サイドミラーの形状がよろしくない。車両の幅と車線との関係はつかみにくいし、斜め前方の視界を妨げる。左側サイドミラーの下に付く補助ミラーは、小さくとも有効だ。
(後席)……★★★
広々感はないものの、天地の寸法が十分なので、決して狭苦しくはない。とくに足元は、ひざ下のスペースが十分に取られているから、ひざ前の空間がギリギリでも不満は少ない。頭の後方の空間は、ミニマムながら頭髪が触れるほどの狭さではない。アルファ・ロメオのまねとおぼしきデザインのドアノブは、使いにくい。縦型にする必然性はあるまい。敷居の高さ、ピラー下の膨らみは乗降時にやや邪魔に感じられるが、肝心の乗り心地は、思ったよりもいい。突き上げは感じないし、おおむねフラットな設定で前席との差を少なくしている。ロードノイズの遮断も良好だ。
(荷室)……★★★
広くはないが、コンビニやスーパーなど、日常の買い物で困ることはない。高さもあるので、容量的にはこのクラスのハッチバック車を上回る。ゲートの操作感は、重過ぎず、ほどほどといったところ。フロアはフラットなボードだが、その下にはジャッキなどを納める箱状の空間があり、そこにも転がりやすい小物などを収納することができる。開口部はバンパーの高さで、すなわち、やや高め。
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【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
大きく見えるボディではあるが、実際の重量は1170kgと思ったより軽く仕上がっている。副変速機付きCVTの広範囲な変速作業により、1.5リッターエンジンとは思えない活発さと低燃費を実現している。テスト距離256.5kmに対し、燃料の使用量は26.0リッター。10km/リッターに迫る燃費値は、市街地が4割を占める走行内容を考えると立派と言える。
なお、スポーツモードは山岳路など頻繁な加減速をする時には便利だが、高速道路ではエンジン回転が上がり過ぎるので、入れっぱなしにしない方がいい。普段の市街地でもオーバードライブを使って手動でオン/オフすれば、より経済的な運転もできる。
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(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
オフロードカーっぽい外観に似合わず、乗り心地は不当に硬くはない。姿勢はおおむねフラットで快適だ。路面によっては少しビリビリすることもあるものの、目地段差のハーシュネスなどは軽くいなす。視点が高いおかげで、コーナーの曲率もつかみやすい。重心高が高いわりにはロールもよくチェックされており、短いホイールベースと相まって、コーナリングは十分軽快。操舵(そうだ)は重すぎず、適度に軽めで、十分によく切れる。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2010年7月12日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2010年型
テスト車の走行距離:5123km
タイヤ:(前)215/55R17(後)同じ(いずれも、ヨコハマdBデシベルE70)
オプション装備:キセノンヘッドランプ(6万3000円)/バックビューモニター+カーウイングスナビゲーションシステム+ETCユニット+ステアリングスイッチ(30万9750円)/インテリジェントキー+プッシュエンジンスターター+電動格納式リモコンカラードドアミラー+Sパック+エンジンイモビライザー(13万6500円)/17インチタイヤ+アルミホイール(8万4000円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(6)
テスト距離:256.5km
使用燃料:26.0リッター
参考燃費:9.86km/リッター

笹目 二朗
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