スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX(4WD/CVT)
スバルにしかできないこと 2026.10.06 試乗記 「スバル・レヴォーグ レイバック」にストロングハイブリッド搭載モデルが登場。高効率なパワーユニットが積まれたのはもちろんのこと、既存の純エンジン車とはデザインやボディーサイズも違っているというから興味深い。上位グレードの「プレミアムS:HEV EX」を試す。回した先にドラマがある
水平対向4気筒って、やっぱりいいなぁ。スバル・レヴォーグ レイバックのストロングハイブリッド搭載モデルを走らせながら思ったのは、そのことだった。
2基のモーターと組み合わせられた2.5リッターのFB25型ユニットは、ストロングハイブリッド専用設計で、11.9の高圧縮比、直噴、ミラーサイクルという高効率型である。でもって、ボア×ストロークは94.0×90mmのショートストロークで、最大トルクを4000-4400rpmで発生する。中低速は270N・mの駆動用モーターが担当してくれるから、ガソリンモデル用のCB18型1.8リッターターボ(ボア×ストローク=80.6×88.0mm)みたいに最大トルクの300N・mを1600-3600rpmの低回転から生み出す必要がない。なので、回したときにドラマが感じられるのだ。ハイブリッドなのに!?
一般にターボ過給のエンジンより、自然吸気ユニットのほうがフィーリング面では優れる。といわれているけれど、FB25型のよさの理由が、排気量大きめの自然吸気というだけではないにせよ、あくまで筆者個人の感想ですけれど、これはいい。そうとういい。と某CMで鈴木亮平が言っているセリフをマネしたくなるほどよい。
それこそ、スバルのウェブサイトにあるように、「クランクシャフトを中心に水平かつ左右対称に配置されたピストンが、まるでボクサーがパンチを繰り出すように横方向に往復」している感がある。
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どこまでも続くパンチの応酬
ボクシングと異なるのは、パンチの応酬が一方的ではないことだ。すなわち、力石 徹が放ったストレートに、矢吹 丈がクロスカウンターを狙い、そのクロスカウンターに力石がダブルクロスを狙ってストレートを放つや、丈はそれにトリプルクロス、そのトリプルクロスに力石がクアドラプル、すぐさま丈がクインタプル! というようなストレートの打ち合いをえんえん続けるわけである。
えんえん打ち続けるので、「互いの慣性力を打ち消し合う」ことになり、「振動の少ないスムーズなエンジンフィールを提供」してくれる。ピストンが垂直方向に運動する直列エンジンより、エンジン全高が低く、低重心、というメリットも、もちろんある。
スバルがいうボクサーとは、野蛮な殴り合いをするひとではない。鋼のように鍛え上げられた肉体と精神によって、チェスのように知的なゲームを繰り広げるアスリートのことなのだ。そのことをFB25型はわかりやすく教えてくれる。おいら、ボクサー。
スバルのストロングハイブリッドのS:HEVは、まずは2024年の「クロストレック」に、次いで2025年の新型「フォレスター」に、そして今回筆者が試乗した、2026年7月発表のレヴォーグ レイバックに搭載されることで、スバルの主力ユニットになろうとしている。これもMAGA、日本語に訳すとき、鹿はガとは読まないので、馬鹿と書いてはいけない、トランプ米大統領のおかげだ。バイデン前大統領のEV優遇政策をちゃぶ台返ししたことから、スバルも戦略を見直し、EVの独自開発は中止、暫時ハイブリッドに注力することにしたのだから。
エアスクープがなくなった
そのスバルのS:HEV、読者諸兄姉はお気づきだろうか? これまですべて、車高を上げたモデルに搭載されていることを。クロストレックの最低地上高は200mm、フォレスターは220mm、第3弾のレヴォーグ レイバックはほかのモデルよりやや低いとはいえ、それでも180mmもとってある。その理由は奈辺にありや?
理由は2つ考えられる。ひとつは、スバルの規模だと、2.5リッター+電気モーターのハイブリッドはコストがそうとう高い、ということだ。それゆえ、フツーのモデルに搭載するとかなり割高に見えてしまう。その点、車高を上げたモデルであれば、車高を上げたぶん、車両価格を上げることができる。ガソリンモデルの上位グレード「ブラックセレクション」とS:HEVのエントリーグレード「プレミアムブラックS:HEV EX」は424万6000円の同一価格になっている。これはストロングハイブリッドに対するスバルの意気込みを示している……のではあるまいか。
そうなると、本命は物理的な要因か。S:HEVの、駆動用と発電用、2つの高出力モーターと、フロントディファレンシャルギア、それにAWDの電子制御カップリングをワンパッケージ化したトランスアクスルのユニットが意外とデカい。なので、例えばインプレッサの最低地上高130mmでは心許ない。180mm以上の最低地上高があったほうが、オンロードはよいとしても、オフロードで望ましい。ということではあるまいか。以上は筆者の想像です。
webCGの新オフィスが入る高層ビルの地下駐車場で、初めて対面した「レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX」は、ボンネットからレヴォーグ名物のエアスクープがなくなっている。ターボのインタークーラーがないから必要がないのと、ターボモデルとの差異化のためだろう。フロントの形状もシンプルで、そのぶん全長が35mm短い。
乗り込むと、タンとブラックのナッパレザーが用いられた内装に、「お。」と思う。車両価格452万1000円にふさわしい仕立てにしてある。
乗り心地も燃費もいい
山手通りに出て、首都高速を走りだすと、乗り心地のよさにすぐさま感銘を受けた。サスペンションは、ストロングハイブリッド搭載により、90kgほど重くなった車両重量に対応すべく、専用セッティングが施されている。最低地上高はガソリンモデル比で-20mmということだから、引き締められているわけだ。実際、引き締まっている。最低地上高は180mm、パワートレインも若干地上の上にあるはずなのに、無駄な動きがないのは、やっぱりスバル自慢の水平対向エンジンとシンメトリカルAWDによるところ大なのかもしれない。中空に浮かびつつ、安定している。という不思議な感覚がある。車速が40km/h以上になれば、乗り心地は快適。225/55R18という穏健なサイズの、ファルケンのオールシーズンタイヤも、路面とのコンタクトをソフトにしている。
首都高速の渋滞でACCを使ってみる。低速ではEV走行するから、静かで、ストップ&ゴーがスムーズ。これはガソリンモデルではできなかったことだ。
ストロングハイブリッドだけあって、スタートのボタンを押しても、エンジンは始動しない。電池のエネルギー残量が少ないと、当然、すぐにかかる。その際、最初だけ振動する。減速時にはシュウウウンという電子的なサウンドがかすかに聞こえてくる。
クーペっぽくAピラーがやや寝ており、街なかでは、左斜め前方視界の邪魔になると感じることもあった。着座位置が高いことは信号待ちのときに隣のクルマと並ぶとわかる程度で、運転中はそのことを忘れる。しかも、じつは後ろに広い荷室を持っている。まさにジャンルを超えたクロスオーバー。それでいて、スポーツツアラーという初代レヴォーグからのコンセプトはいささかも変わっておらず、燃費はWLTCモードで19.0km/リッターと、ガソリンモデルの14.1km/リッターの3割強増し。シブいクルマをお探しの読者諸兄姉の候補になるのではあるまいか。スバルだけですよ、これ。
(文=今尾直樹/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝/車両協力=スバル)
テスト車のデータ
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4735×1820×1550mm
ホイールベース:2675mm
車重:1690kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:160PS(118kW)/5600rpm
エンジン最大トルク:209N・m(21.3kgf・m)/4000-4400rpm
モーター最高出力:119.6PS(88kW)
モーター最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)
タイヤ:(前)225/55R18 98V M+S/(後)225/55R18 98V M+S(ファルケン・ジークスZE001A A/S)
燃費:19.0km/リッター(WLTCモード)
価格:452万1000円/テスト車=452万1000円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:1352km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:177.5km
使用燃料:12.8リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:13.9km/リッター(満タン法)/14.0km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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