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ダイハツ・ミラ イースtuned by D-SPORT Racing(FF/5MT)

自動車って面白い! 2026.10.27 試乗記 佐野 弘宗 ダイハツのベーシックな軽乗用車をもとに、ラリーやレース向けの競技車両に仕立てた「ミラ イースtuned by D-SPORT Racing」。軽量ボディーをロールバーで固め、力強いターボエンジンを搭載した一台は、クルマの楽しさを学べる教科書のような一台となっていた。
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ダイハツもFUN TO DRIVE

この2026年8月末に2代目「コペン」の生産を終了してしまったダイハツだが、初代コペンの発売と同じ2002年に立ち上がったD-SPORTの活動が、最近とみに目立っている……と感じる向きも多いのではないか。

D-SPORTはダイハツ車専門のカスタマイズブランドで、大阪に本社を置く自動車関連企業のSPKが手掛けている。そんなSPKがダイハツと手を組んでD-SPORTレーシングラリーチーム(現在はD-SPORTレーシングチーム)を立ち上げたのが2022年。コペンを国内ラリーで走らせはじめただけでなく、同年と翌2023年のラリージャパンにも参戦。クラス優勝も果たしている。

近年のダイハツは、次期コペンと思われる試作スポーツカーを国内の各自動車ショーに持ち込んだり、2025年10月にはモリゾウ氏(=豊田章男トヨタ自動車会長)がマスタードライバーに就任したりと、スポーツイメージの構築に注力している。SPKとダイハツに資本関係はないそうだが、D-SPORTの活動が積極化している背景には、こうしたダイハツ本体の事情も無関係ではないと思われる。

そんななかで発売されたのが、ミラ イースtuned by D-SPORT Racing(DSR)だ。ベースはいうまでもなくミラ イースで、そこにコペン由来のインタークーラーターボ付きエンジン「KF-VET」と5段MT、本格的な6点式ロールケージ(サイドバー付き)、フロントスーパーLSD、フロントベンチレーテッドディスクブレーキなどをSPKの手で搭載した。つまりは競技ベース車両のコンプリートカーである。

ミラ イースDSRは299万8600円という本体価格で、100台の限定販売が実施された。2026年3月19日から4月6日という期間で購入希望を募った後の抽選販売となったが、最終的な競争率は約44倍というせまき門だったという。

「ミラ イースtuned by D-SPORT Racing」は、ダイハツと共同でD-SPORTレーシングチームを運営する大阪のSPKが手掛けた、競技用のコンプリートカーだ。
「ミラ イースtuned by D-SPORT Racing」は、ダイハツと共同でD-SPORTレーシングチームを運営する大阪のSPKが手掛けた、競技用のコンプリートカーだ。拡大
開発に際してはモータースポーツで得た知見をフィードバック。100台という販売台数に約4400件もの応募が殺到したという。
開発に際してはモータースポーツで得た知見をフィードバック。100台という販売台数に約4400件もの応募が殺到したという。拡大
ベースとなるのは中間グレードの「L“SA III”」(2026年8月の改良前のモデル)。ダッシュボードの左右縁をロールケージが貫通している。
ベースとなるのは中間グレードの「L“SA III”」(2026年8月の改良前のモデル)。ダッシュボードの左右縁をロールケージが貫通している。拡大
6点式ロールケージを装備する関係で、天井のアシストグリップは使用不可に。ダッシュボード左右のエアコンルーバーも取り外されている。
6点式ロールケージを装備する関係で、天井のアシストグリップは使用不可に。ダッシュボード左右のエアコンルーバーも取り外されている。拡大
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普段使いも(なんとか)できそう

DSRのベースとなったのは、ミラ イースの真ん中のグレードとなる「L“SA III”」である。より安価な「B“SA III”」グレードもあるが、これはリアサイドガラスが固定式となるのがネックだった。雨天の競技走行時にウィンドウをくもらせない換気ができることを考えて、今回のグレード選択になったとか。

また、ラリーやレースへの参戦を想定しつつも、リアドアや4人という乗車定員は維持しており、現地までの往復、あるいは日常生活でも困らないのもミラ イースDSRの売りだ。実際、乗降にはロールケージをくぐる、またぐ……といった動作が必要だが、座席におさまってしまえば、居住性は普通のミラ イースと変わりない。DSR化にともなう数少ない犠牲は、そのロールケージのせいでフロントサンバイザーとリアシートの可倒機能が使用不能になっていることくらい。マニュアルエアコン、オートライト、前後パワーウィンドウに最低限の運転支援(=スマートアシスト)は標準装備なので、オーディオとナビ関連を自分でなんとかすれば、実生活に困ることは(ほぼ)ないだろう。

実際に運転席に座ると、簡素な液晶メーターパネルもミラ イースのままだ。もっとも、ミラ イースじたいは2026年8月の一部改良でアナログ式スピードメーターに変わって(グレード名からも“SA III”が外れて)いるが、取材車はそれ以前の個体がベースとなっている。いずれにせよエンジン回転計すら備わらないが、そういうものは必要に応じて追加すればいい。実際、D-SPORTでも、後付け用のタコメーターやブースト計が用意される。

ダッシュボードが切り欠かれてロールケージが貫通しているのも、競技用コンプリートカーらしく生々しい。ダッシュボードを避けるロールケージもあるが、この貫通タイプのほうが、わずかだが乗り降りはしやすい。

メーターは、ベース車と同じく簡素な液晶タイプ。D-SPORTレーシングのオプションとしてタコメーターやブーストメーターが用意される。
メーターは、ベース車と同じく簡素な液晶タイプ。D-SPORTレーシングのオプションとしてタコメーターやブーストメーターが用意される。拡大
フロントシートにはサイドバーをまたいで着座。リクライニング用のレバー付近をサイドバーが通っているため操作に難儀する。オプションでレカロ製のバケットシートが用意される。
フロントシートにはサイドバーをまたいで着座。リクライニング用のレバー付近をサイドバーが通っているため操作に難儀する。オプションでレカロ製のバケットシートが用意される。拡大
日常使用における軽セダンとしての実用性も維持。ドアは5枚でリアドアにはパワーウィンドウが備わり、2人乗りの後席もそのまま残されている。
日常使用における軽セダンとしての実用性も維持。ドアは5枚でリアドアにはパワーウィンドウが備わり、2人乗りの後席もそのまま残されている。拡大
荷室空間は基本的にベース車と共通。ただし、リアシートの可倒機構はロールケージと干渉するため使用できなくなっている。
荷室空間は基本的にベース車と共通。ただし、リアシートの可倒機構はロールケージと干渉するため使用できなくなっている。拡大

軽さは正義

このクルマのDSRたるところは前記のとおりだが、逆にいうと、それ以外の部分はすべて、ミラ イースのL“SA III”のまんまだ。ウレタン製ステアリングホイールやベーシックなシートがそのままなのも、メーターパネル同様「必要なものは自分で選んで交換すべし」という競技ベース車両のお約束といっていい。

ノーマルのミラ イースは全車インパネシフト(のCVT)なので、DSRでは、そのインパネシフトを除去した部分に事務的な樹脂板がボルト止めされる。円筒形の小物入れのあるフロアコンソールは専用品のようだ。ステアリングの位置調整もシートハイト調整も備わらないものの、CVTよりシートスライドが前がちになるおかげか、ミラ イースDSRのドライビングポジションは筆者にはドンピシャ。ドラポジさえ決まれば、ステアリングも固定式のほうが剛性面では有利ですらある。

ノーマル然としたフロントシートだが、硬めのクッションや一体型ハイバックシートのおかげで、着座姿勢も意外に安定しており、少なくとも今回のように高速道路とワインディングロードで遊ぶだけなら、完璧とはいわないが許容範囲ではある。

エンジンのピーク性能や5段MTのギア比はコペンのそれと共通だが、エンジン制御は専用だという。クラッチペダルが思ったより重く、そのつながりも唐突気味、ヒルスタートアシストも非装備……なのは、少量生産のコンプリートカーの宿命か。しかしひとたび走り出せば、とにかく弾けるような加速力で、そういう細かいクセへの不満もすべて吹っ飛ぶ。

この快活な速さは、エンジンうんぬんというより、車検証重量で700kgという軽さによるところが大きい。これは同じエンジンのコペンより150kg、最新軽ホットハッチの「ホンダN-ONE RS」より140kgも軽い。さらに、5年前に姿を消した「スズキ・アルト ワークス」と比較しても約30kg重いだけだ。

車両重量はカタログ値で710kg、車検証記載値で700kgと、とにかく軽量。軸重は前が440kg、後ろが260kgという配分だ。
車両重量はカタログ値で710kg、車検証記載値で700kgと、とにかく軽量。軸重は前が440kg、後ろが260kgという配分だ。拡大
快適装備としてはマニュアル式のエアコンを踏襲。16cmのフロントスピーカーも残されており、取り付け部品を設置すれば、一応はオーディオも装備できる。
快適装備としてはマニュアル式のエアコンを踏襲。16cmのフロントスピーカーも残されており、取り付け部品を設置すれば、一応はオーディオも装備できる。拡大
5段のマニュアルトランスミッションは、クロムメッキのシフトノブを含めて2代目「コペン」のものだ。
5段のマニュアルトランスミッションは、クロムメッキのシフトノブを含めて2代目「コペン」のものだ。拡大
運転席の足元に備わるABCペダル。クラッチは一般的な乾式単板ダイヤフラムスプリング式。操作感は重めでつながりも唐突なため、スムーズに発進、変速するには、ややコツがいる。
運転席の足元に備わるABCペダル。クラッチは一般的な乾式単板ダイヤフラムスプリング式。操作感は重めでつながりも唐突なため、スムーズに発進、変速するには、ややコツがいる。拡大

この知見を未来の量産車にも

シャシーまわりは用途に合わせたモディファイが前提なので、今回のような販売時のままの仕立てでは、サスペンションもタイヤも、お世辞にも上質な乗り心地とはいえないミラ イースと同じである。……はずなのに、実際はアシのストローク感は驚くほど滑らかで、ステアリングもにわかには信じられないほど正確だ。それもこれもロールケージで飛躍的に強固になった車体剛性のおかげと考えると、まるで自動車工学の教科書のようだ。

バネやアブソーバーの設定もハッキリいうと“グニャグニャ”に近いのに、しつこいようだが、しっとりと落ち着いた路面感覚に驚く。乗り心地とハンドリングだけでいえば、体感価格はノーマルのミラ イースの200万円高か、それ以上。というか、ちょっと大げさにいえば、よくできた欧州コンパクトスポーツを思わせる高級感すらただよう。

もちろん、絶対的な性能は高くないので、しかるべき場所でコーナリングを楽しもうとすると、またたく間に限界をむかえるが、アシとタイヤのバランスは取れているので、ロール過多ではないし、旋回姿勢もいい。コペンでもおなじみのトルク感応型のスーパーLSDも追加されているので、ロールが深まってもトラクションも性能もまずまずだし、フロントブレーキも強化されている。あとはタイヤとバネだけちょちょいとイジれば、極上のホットハッチに仕上がりそうな気がする。

繰り返しになるが、ミラ イースDSRはあくまで競技参戦を想定したベース車両であり、今回のように中高年カーマニアがツルシのまま遊ぶのは想定外の乗りかただろう。にもかかわらず、普通に走っただけで、これほどりゅう飲の下がる思いがしたクルマは久しぶりだ。少しだけ元気なエンジンとMT、そしてしっかりした車体を与えるだけで、どんなクルマでもこんなに気持ちよく、楽しくなるのだ。その事実がダイハツ本体にもしみわたって、DSRのエッセンスを取り入れた量産車が出てきたら……なんて考えると、期待しかない。

(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=堀田剛資/車両協力=SPK)

ドライブトレインではフロントスーパーLSDの採用もトピック。コーナリング時には内輪の空転を抑え、高いトラクション性能を発揮する。
ドライブトレインではフロントスーパーLSDの採用もトピック。コーナリング時には内輪の空転を抑え、高いトラクション性能を発揮する。拡大
最高出力64PS、最大トルク92N・mを発生する0.66リッター直3ターボエンジン。エンジンそのものは「コペン」のものだが、ECUは専用品となる。
最高出力64PS、最大トルク92N・mを発生する0.66リッター直3ターボエンジン。エンジンそのものは「コペン」のものだが、ECUは専用品となる。拡大
購入後に改造されることを前提としているため、足まわりもベース車から変更はない。ただし、タイヤサイズは155/70R13から155/65R14に変更されている。
購入後に改造されることを前提としているため、足まわりもベース車から変更はない。ただし、タイヤサイズは155/70R13から155/65R14に変更されている。拡大
手を入れた箇所は基礎的でありながら、しっかり走りを楽しめるクルマに仕上がっていた「ミラ イースDSR」。この知見をぜひ、未来の量産車にも生かしてほしい。
手を入れた箇所は基礎的でありながら、しっかり走りを楽しめるクルマに仕上がっていた「ミラ イースDSR」。この知見をぜひ、未来の量産車にも生かしてほしい。拡大

テスト車のデータ

ダイハツ・ミラ イースtuned by D-SPORT Racing

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1500mm
ホイールベース:2455mm
車重:710kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:5MT
最高出力:64PS(47kW)/6400rpm
最大トルク:92N・m(9.4kgf・m)/3200rpm
タイヤ:(前)155/65R14 75S/(後)155/65R14 75S(ダンロップ・エナセーブEC300+)
燃費:--km/リッター
価格:299万8600円/テスト車=--円
オプション装備:--

テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:1653km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:401.0km
使用燃料:25.43リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:15.8km/リッター(満タン法)/16.4km/リッター(車載燃費計計測値)

ダイハツ・ミラ イースtuned by D-SPORT Racing
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ダイハツ・ミラ イースtuned by D-SPORT Racing(FF/5MT)【試乗記】の画像拡大
 
ダイハツ・ミラ イースtuned by D-SPORT Racing(FF/5MT)【試乗記】の画像拡大
 
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佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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