プジョー3008グリフ(FF/6AT)【試乗速報】
常識を打ち破れ! 2010.06.30 試乗記 プジョー3008グリフ(FF/6AT)……385.0万円
プジョーの新型クロスオーバー「3008」が日本上陸。上級グレードに試乗し、その個性を確かめた。
犬顔の目立ちたがり屋
2009年、フランクフルトショーの会場で「3008」を初めて見たとき、しばらくポカンとしていたことを思い出す。フロントマスクは見る角度によっては“犬顔”だし、プロポーションもカタマリ感があって、まわりのプジョーとは明らかに違うオーラを放っていた。名前を聞いて、「308」から派生した個性的なクルマということは理解できたが、そのインパクトは「1007」をしのぎ、“4桁プジョー”きっての目立ちたがり屋、というのが私の第一印象だった。
そんな3008が、EURO5対応の最新1.6リッター直噴ターボエンジンと待望の6段オートマチックを搭載し、満を持しての日本上陸となった。ハッチバックと異なる、すこしずんぐりとしたプロポーションの持ち主は、ハッチバックとSUV、そしてモノスペースのいいとこどり。つまり、いま流行の“クロスオーバー”というわけだ。ボディの前後にステンレス製アンダーガードを備えるものの、SUV臭さはさほど強くなく、スポーティなモノスペースを演出するうえでは、とてもバランスのいい仕上がりを見せている。さしずめ、ヨーロッパ市場でのライバルは、フォルクスワーゲンの「クロスゴルフ」あたりだろうか?
メカ好きにはたまらない
さっそく運転席に陣取ると、少し高いアイポイントがいつもより見晴らしのいい眺めをもたらしている。これこそ、クロスオーバー最大の美点。1635mmという全高のおかげでヘッドルームも余裕たっぷり。運転席でもその恩恵は大きいが、後席ならさらにゆとりが感じられる。しかも、標準装着のパノラミックガラスルーフがもたらす開放感は格別で、ふだんは自ら進んでドライバー役を務める私でも、たまには後席でのんびりしたいと思ったほどだ。あとで運転を代わってもらったら、路面によってはリアからの突き上げが大きく感じられたのは予想外だったが。
運転席に戻り、背中を包み込むようなレザーシートの感触を確かめながら、あらためてコクピットを見渡すと、その仕上がりの高さに目を奪われる。「308ってこうじゃなかったよなぁ」という部分が次々に発見できるのだ。たとえば、より立体的になって存在感を増したセンターコンソールに、7つのトグルスイッチが横一列に並ぶところなど、メカ好きにはたまらない演出だ。メーターパネルも、速度計と回転計が分離したデザインとなり、表示の美しさも手伝って、ハッチバックとは違う1クラス上の上質さが漂っている。
プジョーとしては初採用のエレクトリックパーキングブレーキも、308との違いのひとつだ。はじめのうちは停車、発進の際にいちいちレバーを操作していたが、基本的にはドライバーが操作する必要はないという。メーカーによって作動/解除の方法がまちまちなのは紛らわしいが、3008だけを使うユーザーには親切な機能といえる。
バランスのいい走り
走り出して驚いたのは、この3008が308に輪をかけて乗り心地が快適なことだ。車高が高いこの手のクルマは、ベースモデルに比べて足まわりが締め上げられ、当然、乗り心地は硬くなるのが常なのに、3008は正反対なのである。18インチがおごられたおかげで、ときどきリアからの突き上げが伝わることがあるけれど、快適さでは308シリーズ中、ナンバーワンではないか。フラットな身のこなしもプジョーらしい。そうなると、コーナーでのマナーが気にかかる。だらしないロールが待ち構えているのだろうか? しかし、実際はボディのロールは穏やかで、乗り心地の良さと安定した動きを巧みに両立している。リアサスペンションに搭載される「ダイナミックロールコントロール」が実にうまく機能しているということだろう。
308に比べて150〜200kgも重量が増した3008だが、1.6リッター直噴ターボと6ATの組み合わせでは力不足は感じない。比較的低い回転数から豊かなトルクを発生させるエンジンは、4000rpmを超えると多少伸びが鈍るものの、6000rpmのレッドゾーンまできっちりと仕事をこなしていた。長らく4段だったオートマチックも、世間並みの6段に変わったおかげで不満も解消。実燃費は今後のテストでチェックしてもらうとして、10・15モードで10.6km/リッターという数字は、もうひと頑張りと言いたいところだ。
それにしても、全体としてのまとまりはベースとなる308を超えており、正直なところ予想以上の出来に驚いている。唯一の気がかりは、この手の2列シートのモノスペースが日本ではあまり人気がないことで、そんな常識を3008が打ち破ってくれることを期待したい。
(文=生方聡/写真=高橋信宏)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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