ルノー・ルーテシア1.6(FF/5MT)【ブリーフテスト】
ルノー・ルーテシア1.6(FF/5MT) 2010.05.19 試乗記 ……209万8000円総合評価……★★★★★
日本での発売から4年、お化粧直しが施された3代目「ルノー・ルーテシア」の走りと乗り心地は? MTモデルで試した。
楽しめる欧州スタンダード
「MTといえばスポーティなモデル専用」という誤った認識をもつ輸入車ディーラーは多い。市場を見渡せば、硬い乗り心地や2ドアの不便さなどと抱き合わせの高価格モデルばかりになり、ギアチェンジを駆使して限られたパワーを引き出すという、MT車本来の面白さを味わえるクルマはほとんど無くなってしまった。
だから、このフツウに4枚ないし5枚ドアの“実用車の内容を持つMT車”は、われわれMT愛好家にとって大歓迎だ。最近のAT車は便利で、速くて、経済的な例がほとんどだが、とくに大排気量車などは大パワーに頼りがち。低回転で回し、片手片足で横着な運転をしては、注意力が散漫になり、眠気を呼んだりする。クルマを操縦するという楽しみも割り引かれることは確かだ。クルマの運転など楽しむものではないし、快適にして便利な単なる移動手段としか考えない人ももちろんいるだろう。だからATを敵視するつもりはないが、商業主義優先の世の中では、MT愛好家は少数派となったが故に、欲しいクルマが年々減少つつあった。
「ルノー・ルーテシア」は、209万8000円というロープライスも魅力だし、これが欧州で多く使われている主流の仕様でもあるとおり、欧州小型車本来の魅力もたっぷり詰め込まれている。マイナーチェンジで新型「メガーヌ」にも似た穏やかな表情を得たが、その「メガーヌIII」はモデルチェンジでやや大きくなりすぎたから、このルーテシアこそ小型フランス車本来の魅力的なサイズだ。
渋滞を快適に過ごすのも、大事かもしれない。ハイブリッド車などで“毎日がエコラン”なカーライフも有意義かもしれない。が、やはり走る楽しみを味わうなら、欧州スタンダードたるこの5段MTのルーテシアに限る。エンジンをフルに回して楽しんだところでさほど燃費を気にしなくていいという意味でも、「ルーテシア」を試すのは、小排気量MT車の魅力を見つめなおす良い機会になるのではないだろうか。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「ルノー・ルーテシア」(欧州名:クリオ)の現行モデルは、2005年3月に本国デビューを果たした3代目。日本では2006年3月に発売された。
2010年3月5日にはマイナーチェンジが実施され、新設計のヘッドライト、バンパー、フロントフェンダーなどでフロントまわりのデザインを一新。リアもテールランプとバンパーがリニューアルされた。なお、デザインの変更で全長は4025mm(+35mm)になったが、シャシーは従来と変わらず。
エンジンは、1.6リッター直4DOHC16バルブ(112ps/6000rpm、15.4kgm/4250rpm)のみで、マニュアルモード付き4段ATまたは5段MTを組み合わせる。ボディ形状は5ドアのみ。安全面では、新たに横滑り防止装置(ESP)が標準装備されるのがポイントだ。
(グレード概要)
AT車、MT車ともに、基本的な装備は同じで、オートライトやフロント雨滴感知式オートワイパー、ヒーター付きの電動格納式ドアミラー、オートエアコンディショナーなどの快適装備、さらにブレーキアシスト付ABSやESPなどの安全装備が標準で備わる。スピードリミッター、クルーズコントロールは、AT車のみの装備だ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
光りモノが少なくスッキリサッパリしており、日本車の基準をもってすれば物足りないと思われるかもしれないが、欧州車らしいシンプルさに好感がもてる。それでも、シルバーの樹脂トリムはガラスに映り込んで邪魔。カーナビゲーションは別売で、前方の視界を妨げない低めの位置にくる。クルーズコントロールはMT車には付かない。ドライブコンピューターは燃費だけでなく消費量も出るから、給油量の予測ができる。
(前席)……★★★★
クルマそのものの乗り心地は、フランス車らしくフラット。姿勢変化は少なく快適だ。偏平率60のタイヤは、ロードノイズがやや大きめ。シートはルノーに対する期待値としては並。座面後傾角はあるが、クッションの後のほうは沈み込みが少々固いため前滑りしがち。最初のうちにうまくなじませてやる必要ある。
天井は高く、広々感は十分。ワイパーの扱いがうまく、前方の見切りはスッキリしている。
(後席)……★★★
折り畳める構造ゆえに、サイズ的にはミニマム。ヘッドレストは使うときだけ引き上げるタイプ。空席時には後方視界を妨げないメリットがあるが、逆に後席から見ると、前席のヘッドレストは巨大で邪魔。
乗り心地は、突き上げ感のないフラットなもので、意外や前席より静か。頭の真上とその後方のスペースは限られるが、視界前方には空間の広がり感があり、閉所に閉じ込められているという印象は薄い。なお、足先やひざまわりのスペースは、前席と干渉しない程度の空間が確保される。
(荷室)……★★★★
フロア面積は外見より広く、サスペンションの張り出しも少ない。容量的には、このボディサイズにしては望外だ。リアシートを倒せば、ほぼフラットな広いスペースが出現する。フロアは低く、トランクリッドの敷居は相対的に高い。ボードの下にはジャッキを収納。スペアタイヤは、フロア下(外)に吊り下げられる仏車伝統の方式をとる。ハッチゲートのリッドを上げても、雨の日の屋根代わりにはならない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
1.6リッターエンジンは、静粛にしてパワフル。MTということもあって、2リッターユニットに匹敵する加速感覚が味わえる。5段MTはこのクルマの大きな魅力のひとつで、その性格さえ変わって見える。ギア比はワイドではあるが、目一杯エンジンを回して楽しめる。そして、中高速コーナーで高性能車に十分ついていける路面追従能力を発揮する。パワーを使い切れる醍醐味(だいごみ)もある。回して使っても二けたを割らない燃費の良さも、フランス車らしい美点だ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
この項目こそ、「ルーテシア」らしい最良の美点。姿勢はフラットで、ソフトな路面への当たり具合はまさにフランス車。反発するバネ系の硬さよりダンパーの減衰力のほうが強く、バネ下の動きに対して、強い抑止力をもつ。従って接地性が高い。微舵(びだ)の応答性も素直にして確実。操舵(そうだ)力は軽めながら、安心感が得られる。旋回性はルノーらしく弱いアンダーステア領域にあるが、スロットルオフによるタックインは軽い。
(写真=荒川正幸)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2010年4月20日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2010年型
テスト車の走行距離:2614km
タイヤ:(前)185/60R15(後)同じ(いずれも、ダンロップSP SPORT 01)オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離:202.4km
使用燃料:18.2リッター
参考燃費:11.12km/リッター

笹目 二朗
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