アメリカメーカーのブース紹介【北京モーターショー2010】
2010.05.01 自動車ニュース【北京モーターショー2010】アメリカメーカーのブース紹介
2009年に、ゼネラルモーターズ(GM)とクライスラーが経営破綻し、“落ち目”の印象が強いアメリカメーカー。だが、中国市場ではかなり様子が違う。北京ショーには米ビッグスリーが揃って出展した。
■GM、中国ではヒットを連発
GMは、中国の上海汽車との合弁会社で「キャデラック」「ビュイック」「シボレー」の3ブランドを展開している。2009年の販売台数は前年比58.6%増の72万7000台余りと、市場全体の伸び率(46%)を大きく上回った。GMは中国では落ち目どころか、反対に最も伸びているメーカーの1つなのだ。
それを支えているのが、2008年から投入された新型車の連続ヒットだ。ベストセラーの小型車「ビュイック・エクセル」と上級セダン「ビュイック・リーガル」のフルモデルチェンジ、さらに新規導入の「シボレー・クルーズ」が大成功し、販売を押し上げた。
日本ではアメ車というと「でかい」「燃費が悪い」というイメージがある。しかし中国市場でのGMの主力は、グループ傘下の独オペルや、韓国のGM大宇が開発した中小型車だ。たとえば、ビュイック・リーガルは「オペル・インシグニア」そのものだし、シボレー・クルーズは「オペル・アストラ」の車台をベースにGM大宇が開発したモデル。高級ブランドのキャデラックだけは、米本国で開発されたクルマが中心になっている。
また、GMは上海に「汎アジア自動車技術センター(PATAC)」と呼ぶ巨大な研究開発拠点を持ち、クルマの内外装のデザインや仕様を、中国市場向けに徹底的にモディファイしている。GMのブランドイメージは、欧州や日本のライバルと比較して、特に高いとは言えないのだが、それでもこれだけ売れるのは、中国の消費者の嗜好(しこう)をがっちりつかんだ商品を出し続けているからにほかならない。中国のGMを見ていると、その底力はやはりすごいと感じる。
■フォードは新型「フォーカス」を中国初公開
GMに関しては、ぜひ紹介しておきたいクルマがもう1台ある。GMが34%を出資するグループ企業、上海GM五菱の「五菱之光」だ。日本の軽ワンボックスに似た車体に1.1〜1.2リッターのエンジンを積むコンパクトカーである。実はこのクルマ、2009年はなんと60万台も売れ、乗用車と商用車を合わせた全カテゴリーの販売台数トップに立った。
五菱之光の実売価格は3万〜4万元(約40万〜54万円)。所得水準の低い農村部ではトラクターからの買い換え、都市部では個人商店の配達用などに売れまくっている。2009年12月、GMは上海汽車と共同でインド市場を開拓すると発表したが、両社は上海GM五菱の低価格車を現地生産する計画とされる。五菱之光は、GMの新興国戦略の一翼を担うグローバルモデルでもあるのだ。
フォードもGMと同様、中国市場での主力は中・小型車だ。内陸部の重慶市に本拠を置く長安汽車との合弁会社で、欧州フォードが開発したコンパクトカー「フィエスタ」、小型車「フォーカス」、上級セダン「モンデオ」を現地生産している。特にフォーカスは中国でも人気が高い。北京ショーでは、2010年1月のデトロイトショーでデビューした、新型フォーカスを中国初公開した。
■クライスラーは、ジープが人気
ちょっと話がそれるが、フォードのブースにはエンジンの仕組みなどを遊びながら学べる展示があり、中国人の親子がそれに興じていた。しかし、この日は報道関係者しか入場できないはずのプレスデイ。仮に父親が記者だとしても、子供と母親はどうやってもぐり込んだのだろうか?
実は、これは中国のモーターショーの風物詩とも言える光景。特別なコネを持っていたり、内部に手引きしてくれる者がいれば、プレスパスがなくても入れてしまうようだ。現地メディアの記者にとってはそれが当たり前で、気に止める人は誰もいない。とはいえ数年前に比べれば、プレスデイに見かける親子の数はだいぶ少なくなった。
クライスラーは、米本社の破綻(はたん)に加えて、親会社となったフィアットが中国市場から一時撤退していることもあり、特に目を引くクルマはなかった。ただ、中国に進出した最初の外資系メーカーは「ジープ」を生産していたAMC(後にクライスラーが買収)である。そんな歴史から、中国ではジープの知名度が高い。北京ショーの展示ブースでも、クライスラーブランドよりジープブランドの方がずっと人気を集めていた。
(文と写真=岩村宏水)