フォルクスワーゲン・トゥアレグ【海外試乗記】
時代を読んだSUV 2010.04.26 試乗記 フォルクスワーゲン・トゥアレグ高級SUV「トゥアレグ」がフルモデルチェンジし、2代目へ。注目のハイブリッドモデルも加わった新型の走りを、イタリアはフィレンツェ郊外で試した。
軽量化がカギ
フォルクスワーゲン初のSUVとして2002年に登場し、約7年間で累計50万台以上のセールスをあげる大ヒットモデルとなった「トゥアレグ」。その2世代目となる新型は、6代目「ゴルフ」など、最新のフォルクスワーゲン・ファミリーに共通の新しいフロントマスクを採用するなど、よく見れば相応にアップデートされているものの、基本的なフォルムは初代モデルの流れを踏襲している。きっとその背景には、歴史のないトゥアレグにとって、今はまだイメージを定着させる段階だという考え方があるのだろう。
しかし、見た目とは逆にその中身は、実は大きく進化している。中でもまず注目すべきは、大胆な軽量化ぶりだ。
新型トゥアレグは車両重量を先代比10%も削減している。10%といっても、さすが重量級。減量分は実に203kgから最大222kgにも及ぶ。そのボディはわずかにサイズアップし、剛性も向上させながら、ホワイトボディで5%の軽量化を実現。さらに、サスペンションへのアルミ素材の多用や構造の変更、遮音材の見直しなどを行っている。しかしなんといっても大きいのは、4輪駆動システムをデフロックやローレンジを備えた従来の「4XMOTION」から、トルセン・トランスファーを用いる「4MOTION」へと変更したことだろう。
ユーザーの大半が、そこまでのオフロード性能を必要とはしていないと考えれば、燃費や運動性能の向上などのメリットにつながるこの割り切りは、ちょっと寂しいが理解はできる。それでも、大容量燃料タンクや専用サスペンションを4XMOTIONと組み合わせた「テレインテック」(V6 TDIモデルにオプション)も用意されるから、本当に必要な人はこれで、というわけである。
身軽なフットワーク
パワートレインはガソリン、ディーゼルそれぞれ2種類の計4種類。ガソリンは引き続き用意される3.6リッターV6 FSI、そしてV8に代わって、新たにハイブリッドがラインナップの頂点として設定された。
主力となるV6 FSIのスペックは現行モデルと基本的に同等である。しかしながら8段AT、アイドリングストップシステムの採用をはじめとする各部のリファイン、そして車体の軽量化の恩恵で、燃費は欧州複合モードで12.4リッター/100km(8.1km/リッター)から9.9リッター/100km(10.1km/リッター)へと大幅に向上している。
当然、走りっぷりも大きな変化を見せた。アクセルを踏み込んだ瞬間にクルマがスッと動き出す感覚は、街中のゴー・ストップの繰り返しの中ですら軽快感をもたらす。ステアリングの操作に遅れなく、リニアに向きが変わるフットワークの身軽さも心地よいものだ。試乗したクルマは19インチタイヤを履いていたので、乗り心地はややバネ下の重さを感じさせたが、標準の17インチならエアサスペンション無しでも十分快適に感じられるに違いない。
うれしいのは、軽量化にも関わらずエンジン音、ロードノイズがよく抑えられていたことだ。それだけでも走りの質が一段上がったように感じられたほどである。高いボディ剛性の確保、さらには従来の遮音材に代えて、より軽量で同等の効果を実現する多層防音材を用いたことなども効いているに違いない。
「ハイブリッド」の走りは上質
注目のハイブリッドは、V型6気筒3リッター直噴スーパーチャージャー付きエンジンと電気モーターの組み合わせで、システム最高出力は380ps、最大トルク59.1kgmを獲得。それでいて8.2リッター/100km(12.2km/リッター)という好燃費を実現している。CO2排出量は193g/kmとなる。
発進は電気モーターだけの力で行われ、加速していくと自動的にエンジンが始動する。その際のつながりは滑らかだし、エンジン/モーターが協調しての加速は強力だ。そして、そこでアクセルペダルを緩めると、即座にエンジンが停止してクラッチが切り離されコースティング、つまりは滑走モードに入る。なんと160km/hという高速域まで、アクセルオフによるエンジン停止を行うのがこのシステムの特徴であり、燃費を稼ぐカギなのだ。アクセルペダルを再度踏み込めばエンジンが自動で再始動しクラッチがつながるが、その際のショックもよく抑えられている。動力性能、走りの質ともに、トゥアレグの頂点としてユーザーを納得させることができそうだ。
軽量化、ハイブリッドという2大トピックを優先的に紹介したが、特に後席の居住性が改善され、荷室容量も広がった室内スペース、各種安全デバイスを統合制御する最新の予防安全システムの搭載など、土台となる部分の進化も著しい新型トゥアレグ。見た目の変化は少ないが、実はまさに時代を先読みしていたかのような、現代のSUVとしてふさわしい進化を遂げていると言えるだろう。
ただし問題は価格だ。「ハイブリッド」のヨーロッパでの価格は7万3500ユーロ。日本円に単純換算すると900万円超となり、今はラインナップから落ちているV8モデルより100万円以上も高くなってしまうのである。日本導入はV6モデルを含めて来年の予定であり、まだ時間はある。ぜひ、戦略的な価格設定を望みたいところだ。
(文=島下泰久/写真=フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
-
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】 2026.10.16 欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
NEW
日産キックスX e-4ORCE(前編)
2026.10.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産キックス」に試乗。デザインが新しいのはもちろんのこと、まさに下ろしたての最新のパワートレインを搭載。日産の大きな期待を背負ったコンパクトSUVである。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。








