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第404回:マンガ規制反対集会を見て考える
 なぜ自動車メディアはここまで影響力がないのか?

2010.03.25 小沢コージの勢いまかせ! 小沢 コージ
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第404回:マンガ規制反対集会を見て考える なぜ自動車メディアはここまで影響力がないのか?

社会の規制がクルマ離れを加速する

先日、巨匠ちばてつや先生や、里中満智子先生、永井豪先生らによる、東京都青少年健全育成条例改正(=通称「マンガ規制」)に対する反対会見&集会のニュースを見てて思った。なぜ我々自動車ジャーナリストは、こういうことができないのだろうか。なぜこういう行動が一般メディアを通じ、盛り上がって報道されることがないのだろうか、と。

同様に2006年、電気用品安全法による中古楽器販売規制についても、これまた教授こと坂本龍一さんら著名ミュージシャンが立ち上がって規制を撤廃させたことを思い出す。ホントに素晴らしいし、正しいジャッジだったと思う。

で、振り返ると我々自動車業界でも数限りなく、同様もしくはそれ以上に理不尽な規制が行われてきたわけですよ。人によって見かたは異なるだろうけど、時に厳しすぎるスピード違反の罰則規定をはじめ、最近じゃバイクに対して異様に理解のない駐車違反取り締まりや免許制度、一部おかしなエコカー減税の規定など数々。もちろん正しい部分もあるが、大部分は「安全」や「環境」を御旗に、クルマを楽しむ、という行為があまりに置き去りにされてきたと思う。

これら時流に即してない規制は、日本の正しい自動車文化の発達をねじ曲げ、進歩を止めかねない深刻な決めごとであり、我々の職業は脅かされ、今の若者のクルマ離れはもちろん、全年齢層でのクルマ離れ、老人の運転問題などすべてに影響しかねないと、個人的には考えている。でも、それに対する反対はほとんど成功していない。

クルマを理解していない?

実は昔から専門誌では、少なからず反対行動はなされていた。身近なところでは、1980年代の創刊直後の『NAVI』は、ジャーナリストの矢貫隆さんをはじめ、交通問題にどんどん意見してきたし、他メディアで取り上げられることもあった。だが、それによって規制が撤廃されたり、緩和されたことはまず無かった。
『CAR GRAPHIC』にも大昔、スピード規制に対する意見的な記事があったという。でも全く無視されたらしい。

ところが、先日のトヨタのプリウス問題においては、実は『ベストカー』の記事をみた大新聞やテレビからの反応もあるわけで、そういうネガティブキャンペーンに限っては専門誌や専門ジャーナリストの意見が使われたりするわけですよ。
だから改めて思ったのだ。ようするにコレは根本的には国民気質の問題であり、大メディアの意識の問題であり、我々日本人は長らくクルマを真の意味で理解してこなかったんだと。ホントに簡単に、恣意(しい)的で一方的な「クルマ=悪者」的な報道がなされてしまう。


クルマは刃物以上に、便利な道具であり恩恵ももたらす一方、危険もはらんでいる。しかし、それは両刃の剣であり、われわれ現代人は確実にクルマから喜びや快楽、利便性を得ていたのだ。だからことさら危険性を重視して強調することは公平性に欠けるし、経済成長にも悪影響がある。
でも現実は一部でそうなってしまっている。今、日本のクルマ文明&文化は確実にミスリードされていて、危機にさらされていると私は思う。

いまだ日本は7000万台という巨大な車両保有台数を抱え、売れなくなったとはいえ、年間500万台前後の新車マーケットを誇る。が、ことクルマという道具に対する理解度、使いこなし度は相当低い。もしやそれは日本人の道具文化に対する理解欠如なのかもしれない。
似たような例としては、1970〜80年代のバイクの「3ナイ運動」を思い出す。モータリゼーションの発展と同時に、若者のバイク事故が増え、それは結局「バイクを買わない、乗らない、免許を取らない」の3ナイ運動につながった。当然、バイク雑誌はもちろん、ホンダをはじめ、メーカーも反対したが、結局それは遂行され、今や日本のバイク文化は風前の灯火である。たしかにバイクは危ない。だが、単純になくせばいい問題なのだろうか。

著名人を作らないと!

一方、翻って冷静に我々の力を分析すると、情けなくも問題なのが、一般的な著名人がほとんどいないことだ。そこはマンガ界と比べ決定的に劣っているところで、唯一いるのは巨匠、徳大寺有恒さんぐらいで、他は私も含め、ハッキリいって業界内有名人ばかり。一般人にクルマの大切さを伝えられる人がほとんどいない。タレント出身レーサーが、一番有望かもしれない。

それから自動車雑誌はどうしてもバイヤーズガイド的な部分が多くなりがちで、純粋娯楽、純粋エンターテイメントとしては認められにくいし、その方向での努力を怠ってきたように思う。マンガの場合は、もはや一部アートであり文化であり、純粋性が分かりやすく、問題を提起しやすい。“マンガカルチャーの危機”と大きな声で叫びやすいのだ。

しかし自動車の場合、“自動車カルチャーの危機”と叫んでも、結局メーカーが売ってるんだろ? 商売だろ? と思われてしまうフシがある。もっと、人の根源に関わる嗜好(しこう)品であり、クルマは人間の欲望を正しく成長させるものであること、つまり「クルマの哲学的重要性」を正しく訴えてこなければいけなかったのだろう。

そのあたりは本当に反省であり、我々はクルマという商品の魅力の上にあぐらをかき、エンターテイメントメディアとしての努力を怠ってきたのかもしれない。過去のツケが、今イッキに回ってきていると考えることもできるのだ。

というわけでバラエティ自動車ジャーナリスト、小沢コージはここに宣言したく思います。今後、私はますます自動車をエンターテイメントと認識し、発展することを誓おうと。具体的にはベストカーの「愛のクルマバカ列伝」をもっと頑張り、初のレギュラーテレビである「アンダーステア」を発展させ、さらなる別メディアでも今までに無い視点のクルマページ、番組を作ることに注力します。そしてもちろんこの「勢いまかせ」をもっとハチャメチャなものに(笑)。

なーんて、俺1人だけの力なんてたががしれてるけどね。でも、同世代の自動車ジャーナリストは、今生き残りをかけて頑張ってるし、「アンダーステア」で競演してる河口まなぶ君にしろ、ものすごい勢いでニューメディアに取り組んでいる。おなじみイタリアの大矢君もすごい(ちなみに彼とは同い年だ)し、他にも多い。

というわけで、みなさん期待してて下さい&応援してね!!(笑)

(文=小沢コージ)

テレビ番組『アンダーステア』収録中の一コマ。
テレビ番組『アンダーステア』収録中の一コマ。 拡大
小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』

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