アウディA5スポーツバック(4WD/7AT)【ブリーフテスト】
アウディA5スポーツバック(4WD/7AT) 2010.03.19 試乗記 ……698.0万円総合評価……★★★★
美しいスタイリングに機能性、居住性を併せ持つという「アウディA5スポーツバック」。その走りと実用性をじっくり確かめた。
らしさが際立つ
今、もっとも勢いがあるプレミアムブランド、アウディ。躍進の理由はいくつもあるが、すき間をすべて埋め尽くすような勢いのラインナップの拡充は、その中でも大きなポイントを占めているはずだ。幅広い顧客にアピールするという意味でもそうだし、ボリュームが増えてくれば「他人と違うクルマに乗りたい」というニーズに応えるべく新しい選択肢を用意する必要も出てくる。アウディは適切な時期に適切なモデルを投入し続けることで、見事、そのサイクルを拡大してきたわけである。
「A5スポーツバック」も、まさにそうした1台といえる。主力の「A4セダン/アバント」は当然、ますます台数を伸ばしており、かつてのように乗っているだけで優越感が得られるというものではなくなっている。しかし、だからといって2ドアの「A5クーペ/カブリオレ」には手が出ない。そんなユーザーがターゲットなのだ。
ハードウェアの完成度も、その狙いにうまくハマッている。似たようなところを狙ったか、すでに他ブランドには4ドアクーペも存在しているが、A5スポーツバックにはさらに、大きく開くテールゲートと広大な荷室という大きな武器がある。見た目にスタイリッシュで走りだってスポーティ。なのに後席に人を乗せる場合でもしっかり使えて、かつ、いざとなればアバントにも匹敵する収納力を見せつけるのだから、いいところを突いている。
あくまでニッチであり、それほどの台数を期待しているわけではないとアウディジャパンは明言しているが、立ち上がりは思いのほか良かったらしい。いまアウディを選んでいる人の趣向を考えれば、それも納得というものだ。
すきの無い市場リサーチ、鋭いコンセプト立て、そしてそれを具現する開発能力などなど、あらゆる面で今のアウディらしさが際立つA5スポーツバック。個人的に、もし「アウディ、どれ買ったらいい?」と相談されたら、まずはコレを薦めてみるだろう。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「クーペのスタイリング」「ワゴンの機能性」「セダンの居住性」を持ち合わせるとアピールされる、「A4セダン」ベースの5ドアハッチバックが「A5スポーツバック」。日本では2010年1月に発売された。
シャシーなどの基本骨格は「A4セダン」より受け継ぐものの、ボディサイズは、やや長く低いシルエット。ハッチゲートまでつながる伸びやかなルーフラインと、サッシュレスドアがもたらす、天地の薄いウィンドウグラフィックがデザインの特徴となる。「A4アバント」に引けをとらない、通常状態で480リッターという荷室容量もセリングポイント。
(グレード概要)
日本市場で販売されるのは、2リッター直4ガソリン直噴ターボエンジンを搭載する「2.0TFSIクワトロ」のみ。可変バルブリフト機構「アウディバルブリフトシステム」を採用し、最高出力211ps/4300-6000ropm、最大トルク35.7kgm/1500-4200rpmを発生。トランスミッションは7段の2ペダルMT「Sトロニック」が組み合わされ、クワトロシステムで4輪を駆動する。さらに、制動・減速時のエネルギーをバッテリーに蓄積するエネルギー回生システムを搭載、カタログ燃費は12.0km/リッター(10・15モード)を記録する。
ダンパーの減衰力やトランスミッションのシフトプログラム、エンジンレスポンスを任意に調整できる「アウディドライブセレクト」や、可変ステアリングギア比の「ダイナミックステアリング」はオプションで用意される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
操作系がドライバー側を向いたコクピットスタイルのインストゥルメントパネルなど、前席からの眺めにA5クーペと変わるところは無い。A4セダン/アバントとは似通っているけれど別のデザイン。どうせなら、もう少し違った個性を出しても良かったかもしれない、とは思う。
それでも各パーツの成形、立て付け、操作感などなど、すべてにおける品質の高さは相変わらずで、それだけでいい機械を操っているという気分にさせてくれる。ただし、MMI(マルチメディアインターフェイス)は、見下ろさないと操作できない点といい、スイッチ類の多さといい、やはり使いやすいとは言えず。このA5スポーツバックに限ったことではないが、エンジンスタートボタンが助手席側なのも気になる点だ。本国仕様の左ハンドルでは、当然ドライバー側になる。
(前席)……★★★★
サッシュレスとされたドアが、乗り込む瞬間からセダンとは違う高揚感をもたらす前席。クーペより15mm高いだけの全高にあわせて、シートポジションはクーペと同じく低めとされている。上半身は、特に横方向に適度な広がりを感じさせ、一方で下半身はタイトに囲むその雰囲気は、セダンとは明らかに異なるスポーティさの一方で、狭苦しさなどは感じないで済む、いいところを突いている。
シートは電動調整式のレザー張りが標準。サポート性は上々で、いったんポジションを決めてしまえば長距離でも疲労は少ない。
(後席)……★★★★
全高の低さから想像する以上の居住性を確保している後席。前席と同じく着座位置が低く、ルーフは後方まで伸ばされているため、頭上空間は大人の男性にも十分なだけ確保されている。A4と同じロングホイールベースのおかげで足元は広く、中央席を廃した2人掛けとしたことで横方向にも余裕がある。
もちろんA4セダンに比べればタイトではあるが、大事な人を招き入れるのにちゅうちょすることはないはず。見た目と違って、4人乗りとしてまったく不満無く使えるのだ。
(荷室)……★★★★
A5スポーツバックのセリングポイントのひとつが、この荷室。きれいにトリミングされたフラットな空間は、4名乗車時で480リッターという十分な容量を確保している、もちろん、それでも足りないとなれば後席バックレストを前に倒して荷室にあてることが可能だ。
そして、この広い空間を生かしてくれるのが大きく開くテールゲートである。旅行用スーツケースのような大きな荷物を積み込む時も、たとえばセダンだと開口部にあわせてあらかじめ横にして滑り込ませなければならないが、これならアバントと同じように、まず置いて、それから倒して詰めていくことができる。
セダンよりもスタイリッシュでありながら、この積載性に関していえば、使い勝手ははるかに上。これが単なる4ドアクーペではない、スポーツバックたるゆえんである。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
すでにアウディの多くの車種で使われている2リッター直噴ターボ、TFSIユニットは、1500rpm-4200rpmという幅広い回転域で35.7kgmもの最大トルクを発生する、きわめて柔軟なエンジン特性を誇る。Dレンジではどんどん積極的にシフトアップする7段Sトロニックとの組み合わせは絶妙で、心地よい加速を最小限のエンジン回転で得ることができる。当然、これは燃費にも効くし、静粛性の面でもプラスに働く。
それでいて、いざ回せばトルクピークを過ぎた4300rpmから今度は211psの最高出力を発生し、それを6000rpmまで持続。爽快な伸びまでも楽しめる。すべての面でバランスのとれた、秀作パワートレインである。
特にこのA5スポーツバックでは、A4などに比べてアクセルのツキにしろ、Sトロニックのレスポンスにしろ、これまでのシャープさ一辺倒から、わずかに丸みを帯びたように感じられ、せわしなさが薄まり、気持ち良く性能を引き出せるようになった。いよいよ熟成、洗練が進んできたようだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
A4に比べて重心が低くトレッドも広いことから、A5スポーツバックはステアリング操作に対して軽快に反応する小気味良いターンインを可能にしている。街中でも味わえるこの俊敏な動きは、セダンとは違うものに乗っているんだという満足感につながるはずだ。
うれしい驚きはボディのしっかり感。これだけ大きなテールゲートを持っていながら、まるでそれを意識させないのは特筆すべきポイントである。
一方、A4と同等の長いホイールベースのせいか、曲がり始めてからの動きはA5クーペほど曲がりたがる感じではない。しかしクルマのキャラクターを考えれば不満は皆無。後席に招き入れた人にとっても、その方がありがたいだろう。
乗り心地はどちらかといえば硬め。見た目のエレガントさとのギャップを覚えるむきもあるかもしれないが、これもアウディの個性なのはたしかだ。
しかもうれしいことに、パワートレインと同じく操舵感や乗り心地に、以前より明らかにしっとりとした感覚が備わっている。ステアリングフィールはやみくもに軽いわけではなく適度な手応えを返し、サスペンションは適度な硬さの奥で入力をしなやかに受け流す。上質感を増したこの手触りはA5スポーツバックに固有のものか、熟成の結果として他のモデルにも反映されるのかわからないが、いずれにせよ満足度は上々。進化を感じる乗り味である。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:島下泰久
テスト日:2010年1月29日-2月2日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2010年型
テスト車の走行距離:1575km
タイヤ:(前)245/40R18(後)同じ(いずれも、ブリヂストン POTENZA RE050A)
オプション装備:バング&オルフセンサウンドシステム(15.0万円)/アウディドライブセレクト(32.0万円)/APS(アウディパーキングシステム)(22.0万円)/電動チルト式2ウェイガラスサンルーフ(22.0万円)/アダプティブクルーズコントロール+アウディサイドアシスト(32.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(6):高速道路(4)
テスト距離:217.0km
使用燃料:29.01リッター
参考燃費:7.48km/リッター

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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