アウディA5スポーツバック40 TDIクワトロ アドバンスト(4WD/7AT)【試乗記】
楊貴妃のしゃっくり 2021.03.15 試乗記 美しいスタイリングで人気を集める「アウディA5スポーツバック」のマイナーチェンジモデルが上陸。本命はやはりシリーズ初登場となるディーゼルエンジン搭載モデルだろう。一般道と高速道路でその仕上がりを試してみた。アースカラーがよく似合う
首都高速5号線を走りながら、めちゃくちゃスムーズな乗り心地に感心した。このスムーズさを何にたとえるべきか。季節的にはちょっと早いけれど、う~む、ひやむぎなんてのはどうか。ところてんでは柔らかすぎる。なめらかプリンでもない。全体に硬いことは硬いのだ。コシがある。底の硬いシューズを履いているようなゴツゴツ感が路面によっては顔を出す。サシが入っていない赤身の肉っぽい印象もある。というより、脂身がない。皮下脂肪のほとんどないアスリートという感覚か。
と、思いつくままに比喩を並べてみました。なんのこっちゃさっぱりわからないかもしれない。フェイスリフトを受けたアウディA5スポーツバックのディーゼルの、よりパワーのあるほうのモデル「40 TDIクワトロ」を運転してみて、浮かんできた筆者のイメージである。
この試乗車、まずもってブリティッシュグリーンのようなボディー色がいい。カタログと同じだから、新しいA5のイメージカラーらしい。ドアを開けると、ブラウンのレザーと合皮のインテリアが目に飛び込んでくる。
アウディというと、ミニマリズム。外装色はシルバー、内装はブラック。という印象があるけれど、有機的なアースカラーもよく似合っている。ボディー色は9万円、内装は22万円のオプションである。プラス30万円ちょっとで、森を大切にするドイツ国民にふさわしい色の組み合わせが手に入るのだ。ドイツ国民ならずとも一考に値する選択ではあるまいか。
ご存じのように、インゴルシュタットが送り出す「A4」ベースの美しき4ドアファストバッククーペは、開けると巨大な荷室が現れるテールゲートを備えている。美貌と、自転車がそのまま入るくらいの実用性が同居する、貴重な存在なのだ。現行型は2016年デビューした2代目で、日本には翌年に上陸している。2021年1月13日に発売された最新のA5は、それまでを前期型とすると、後期型ということになる。
絶世の美女に並ぶ美しさ
主な変更点を整理しておくと、外観では、横じまだったフロントのグリルが、全モデル、ハニカムになり、そのすぐ上、ボンネットとグリルとのあいだに細いスリットが設けられた。アウディが「往年の『アウディ・スポーツクワトロ』をほうふつとさせる」というこれは、細かいといえば細かいデザイン上の変更にすぎないけれど、そもそも冷却口というのは高性能の証しである。たいていのメカ好きは穴が開いているほどウレシイ。アウディはその細いスリット状の冷却口を自社のエポックをつくったクルマと結びつけ、超高性能モデルの「RS 5」や「RS 7」、さらにA4などとも共通のデザイン言語として用いることで、ファミリーの歴史と伝統、絆みたいなものをアピールしているわけだ。
さらに、キラキラと輝くマトリクスLEDヘッドライトを標準装備とすることで、A5の持ち前の美貌をいささかも損なうことなく、持ち前の美貌に凛々(りり)しさを加えることに成功している。その容姿端麗なこと、自動車界のキーラ・ナイトレイかマリア・シャラポワか……。
インテリアではセンタースクリーンを8.3インチから10.1インチに大型化し、インフォテインメントシステムをアップデート。渋滞支援機能付きアダプティブクルーズコントロールを標準装備とするなど、運転支援システム方面の充実も図っている。
パワートレインには、前述したようにディーゼルエンジンを新設定。ガソリンの「45 TFSIクワトロ」とディーゼルの「35 TDI」に12Vマイルドハイブリッドシステム(MHEV)を組み合わせていることもニュースのひとつだ。TDIと呼ばれる2リッター直噴ディーゼルターボには、最高出力163PSの35 TDIと同190PSの40 TDIがあり、前者はFWD、後者は4WDのクワトロのみとなる。
グレードは基本的に「アドバンスト」と「Sライン」の2本立て。アドバンストがスタンダードで、スタンダードだけれど、従来のSラインよりもスポーティーな位置づけだとアウディ ジャパンは主張している。
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ディーゼルらしさは控えめ
実は筆者はマイチェン前の前期型モデルには乗っていないのですけれど、資料を見ると、2017年に上陸した当時のA5は19インチの255/35がスタンダードだった。それが後期型では18インチの245/40が標準となっている。快適性を重要視したということだろう。
もっとも、試乗車はオプションの19インチのホイール&タイヤを履いている。その代わり、と言ってよいのか、これまたオプションのダンピングコントロールスポーツサスペンションを装備している。この電子制御式サスペンションのおかげもあってだろう、冒頭に記したようなスムーズで快適な乗り心地を、おそらくは実現しているのだ。一般的に4WDのほうが乗り心地がいい傾向があるから、それもあるかもしれない。
A5に新登場したディーゼルエンジンと7段Sトロニックの組み合わせも、このスムーズネスに寄与している。40 TDIの2リッター直列4気筒ディーゼルターボエンジンは最高出力190PSを3800-4200rpmで、400N・mの最大トルクを1750-3000rpmで発生する。
4リッターV8自然吸気エンジン並みの大トルクは数値的にはものすごいけれど、感覚的にはそうでもない。大トルクが低回転からグワッと押し寄せてこないのだ。前後トルクを通常は40:60で配分するクワトロシステムのおかげもあるかもしれない。ともかく、このディーゼル、まるでガソリンエンジンみたいに伸び感のあるフィーリングで、そこが筆者的には好ましい。3000rpm以上回すと、ぐおーっという、ディーゼルなのに案外いい音を控えめに出すこともある。
エンジンブレーキが控えめというのは現代アウディの特徴というべきで、高効率を実現するためだろう、アクセルオフしても一瞬スーッと加速するような感覚がある。減速したいときには積極的にブレーキを踏めばよいだけだから、これはじきに慣れる。
100km/h巡航は7速トップで、わずか1300rpm。ディーゼルエンジンとはとうてい思えぬ静かさとなめらかさは、この低回転からも生まれている。
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あばたもエクボ?
アクセルを踏むと、瞬時にギアダウンする。Sトロニックはデュアルクラッチ式のはずなのに、いまや街なかでの低速域も含めてギクシャク感はみじんもなく、まるでトルコン型オートマチックのような変速を電光石火で行う。ステアリングは直進付近でかなり重めだ。それが直進安定性の高さを感じさせる要因にもなっていて、高速ツアラーとしての魅力をわかりやすく表現している。
ゆいいつ気になったのは、アイドリングストップから再始動する際の振動の大きさで、これだけはウチの旧型「N-ONE」並みだ。と思って、プレスリリースを読み直したら、なぁんだ。40 TDIクワトロには12V MHEVが付いていない。新しい「Q5」の40 TDIクワトロには付いているから、早晩、A5、そしてA4の40 TDIクワトロにもMHEVは装備されることになるのだろう。
なので、このクルマは、理想的には信号がないまま高速道路に上がれるところにガレージがあって、そこから高速道路を降りて信号がひとつもないまま目的地に到着できるひと向き、つまりドイツ本国での使用環境に近いほど輝きを増す。
と思ったけれど、「アウディドライブセレクト」を「オート」から「ダイナミック」に切り替えて街なかで乗っていると、Sトロニックのギアが1段落ち、エンジンがより鋭く反応するようになって、ステアリングがちょっぴり重くなる。乗り心地もキュッと締まって、スポーティネスを味わえる。アイドリングストップは作動しない。
あるいは、何事にも完璧はないのだからと、広い心で受け入れる。キーラ・ナイトレイやマリア・シャラポワのような美女、もとい、相手がだれであれ、他者と接する場合は、相手の事情に鑑み、相手の身になって、細かいことは言わない。それがおとなの態度である。実際、「ゆいいつ気になる」と書いておいてなんですけれど、ほんのしゃっくり程度のことです。かえってカワイイ。
(文=今尾直樹/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
アウディA5スポーツバック40 TDIクワトロ アドバンスト
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4755×1845×1390mm
ホイールベース:2825mm
車重:1680kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:190PS(140kW)/3800-4200rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/1600-4500rpm
タイヤ:(前)255/35R19 96Y/(後)255/35R19 96Y(ブリヂストン・ポテンザS001)
燃費:14.6km/リッター(WLTCモード)
価格:643万円/テスト車=788万円
オプション装備:オプションカラー<ディストリクトグリーンメタリック>(9万円)/ダンピングコントロールスポーツサスペンション(15万円)/シートヒーター<フロント&リア>+ステアリングヒーター(9万円)/ブラックスタイリングパッケージ<アウディエクスクルーシブ>+エクステリアミラーハウジング<グロスブラック>(10万円)/プラスパッケージ<ピアノブラックデコラティブパネル>+ブラックグラスルックコンソール(2万円)/ラグジュアリーパッケージ<パーシャルレザー&アーティフィシャルインテリアレザー&フロントスポーツシート>(22万円)/スマートフォンワイヤレスチャージング&リアシートUSBチャージング(6万円)/Bang & Olufsen 3Dアドバンストサウンドシステム(17万円)/ヘッドアップディスプレイ(15万円)/パークアシストパッケージ<パークアシスト&サラウンドビューカメラ>(8万円)/アウディレーザーライトパッケージ<マトリクスLEDヘッドライト&レーザーハイビーム&ヘッドライトウオッシャー>(14万円)/マルチスポークデザインアルミホイール<コントラストグレー 8.5J×19>(18万円)
テスト車の年式:2021年型
テスト車の走行距離:788.8km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:168.2km
使用燃料:15.1リッター(軽油)
参考燃費:11.1km/リッター(満タン法)/12.0km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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