アルピナD3ビターボ リムジン(FR/6MT)【試乗記】
いまだけのご馳走 2010.02.03 試乗記 アルピナD3ビターボ リムジン(FR/6MT)……715.0万円
BMWをベースに開発されるプレミアムブランド、アルピナ。なかでも、ディーゼルエンジンと6段MTを併せ持つ(日本では)レアなセダン「D3」の走りを試した。
いいじゃないか、ディーゼル!
アルピナの現行ラインナップのなかではエントリーモデルながら、「D3ビターボ」は一番魅力的なモデルだ。日本では正規ルートで買えないBMWのディーゼルモデルを入手する、という意味において価値あるBMWモデルでもある。
むかしはディーゼルアレルギーの人も確かにいたが、今では燃費性能の経済性といった特典だけでなく、活発にして静かな動力性能という点でむしろガソリンユニットより評価は高い。
なにしろたった1500rpmで40.8kgmという、4リッターガソリンエンジン並みの高トルクを発生するし、最高回転は5200rpmも回る。本国ドイツのアウトバーンでは200km/hのバトルに耐えて、最高速度は244km/hに達する。まして公には100km/h、実情でも140km/h程度の日本の高速道路では、一番おいしいところを常用できる。そのうえその高トルクを利して低回転で回すゆえに、ガソリンエンジンより静かなクルーズが可能だ。
というわけで、いまやディーゼル/ガソリンという区分けも意識の外にあり、給油時に油種の指定を間違えさえしなければいいだけだ。
アイドル振動や音も皆無ではないが、カラカラ言うわけではないし、ビリビリした硬質の振動があるわけでもない。さらなる手だてとして、現代の情勢を鑑みてアイドリングストップ機能まで備わっているから、完全無振動無音の境地にさえ達する。これなら鵜の目鷹の目で意地悪な観察をする我々ジャーナリストであっても、無関心をよそおっていられる。
6MTが引き出すうまみ
それよりもディーゼルエンジンゆえの特性を、積極的に謳歌(おうか)しようではないか。まず特徴的な高圧縮比による好レスポンス、これはふたつのターボチャージャーによる過給を受けるもので、圧縮比は16:1に留まるが、ガソリンエンジンに比べればまだまだ高い。
低回転域で効かせる小さなターボと、3000rpm以上の高回転域で効かせる大きなターボで構成された過給がとても自然で、一切のラグを感じさせない。もっともディーゼルエンジンにはガソリンエンジンのようなスロットルのバタフライがなく、常時ポートが開放されているので、アクセルペダルのオン/オフに起因する“給気の段差”はない。
その鋭い加速を味わうのに、6段MTは欠かせない。アルピナD3には2ペダルのスイッチトロニックもあるが、ふつうのオートマチックトランスミッションのようにトルコンスリップでブカブカとルーズに繋ぐタイプではないから、こちらもMTのダイレクト感はそのままだ。ただギアレシオに関しては、特別にクロースしたものではなく、どちらかといえばドイツ的でワイドなもの。たとえばボートを牽引するとか、低速では牽引力を重視しているから、早めに上のギアへ上げた方がいい。
燃料経済性は期待以上で、高速道路:峠道=7:3の割合で412.4kmを走った今回の平均燃費は12.96km/リッターであった。燃料タンク容量は60リッターであるから、通常の運転パターンでは満タンで700kmはもちそう。高速燃費だけを取り出すならばプリウスよりイイというのは、アルピナを扱うニコルオートモビルズの弁だが、その言葉にウソはなさそうだ。
走りもキッチリ、アルピナ流
アルピナと言えば、足回りのセッティングにも定評がある。このD3のアシもアルピナ・チューンに期待するすべてが実現されている。まず多くの日本車と違って、ブヨブヨする無駄な動きが少ない。曲がるにしてもスッキリ入ってスッキリ納まる。乗り越えるにしてもブワンとダルな動きをせずにスっと縮んでピタッと水平な姿勢に戻る。「アシがカタい」のではない。ドイツの“高速チューン”車にありがちな、ストロークの足りないガチガチに固められたモノと違い、今回は4人で乗るチャンスもあったが不当に不快な乗り心地ではなかった。
ステアリングも、ギア比だけクイックにしたものではなく、鼻先に収まるディーゼルエンジンの重さゆえか、ほんの少し前輪荷重の大きい(車検証上は前輪790kg+後輪760kg=1550kg)確かな手応えをしめすもので、気負うことなく安泰でいられる。
日本では大勢がATになってしまい、MT好きは選択を迫られる状況だ。たとえあってもスポーティなモデルであるとか2ドアであることが多く、普通の4ドアセダンのMT車を買うのは難しい。このアルピナD3はそうした顧客にとっても、願ってもない設定である。
同じ3シリーズセダンベースのアルピナでも、ガソリンエンジンモデルの「B3」は999万円とはるかに高額だから、「D3」の698万円は価格の面でも比較的お買い得な設定である。今夏からより厳しい法律が適用されるようになるなど、我が国におけるディーゼルの規制には期限があり、このD3のMTモデルも際限なく入ってくるわけではない、このモデルの在庫もあと少ししかないそうだから、興味ある方は、お早めに。
(文=笹目二朗/写真=高橋信宏)

笹目 二朗
-
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】 2026.6.2 かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
NEW
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
NEW
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。 -
NEW
第115回:メイク・アメリカ・グレート・アゲイン!(後編) ―デザインもサイズも規格外! 魅惑のアメリカ車はなぜ“主役”になれないのか?―
2026.6.3カーデザイン曼荼羅トヨタ&ホンダが発表した、米国生産車の日本導入計画。しかしアメリカには、規格外に面白いクルマがまだたくさんあるのだ! カーデザインの識者とともに魅惑の日本“未”導入車を探すとともに、魅力的なアメリカ車が、それでも主役になれない理由を考えた。 -
どうしてピアノブラックの内装材は多用されるのか?
2026.6.2あの多田哲哉のクルマQ&Aよく目にするピアノブラックの内装材は、「キズや脂汚れが目立つ」などネガティブな評価もしばしば。それでも多用されているのはなぜか? 車両開発者の多田哲哉さんに聞いてみた。 -
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】
2026.6.2試乗記かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。 -
レストモッドがイメージ 特別なオニツカタイガーの魅力に迫る
2026.6.1オニツカタイガーの新作ドライビングシューズを知る<AD>オニツカタイガーが、“レストモッド”と呼ばれるクルマのレストア&カスタム手法に着想を得たドライビングシューズを発表。4タイプ製作された、「MEXICO 66 DRIVING」のスペシャルバージョンの魅力に迫る。




















