「スズキ・アルト」がフルモデルチェンジ−身近なエコカーを目指して
2009.12.16 自動車ニュース身近なエコカーを目指して−「スズキ・アルト」がフルモデルチェンジ
スズキは2009年12月16日、7代目となる軽自動車「アルト」を発表。同日発売した。
■全車エコカー減税の対象に
1979年の登場以来、軽自動車市場をリードしてきた「アルト」。2009年3月には世界累計販売台数1000万台を突破し、同年5月にはデビュー30周年を迎えた、まさにスズキの顔というべきアルトが、5年ぶりにフルモデルチェンジを実施し、7代目に生まれ変わった。
新型は「省資源・低燃費で気軽に使え、世代を超えて愛される軽自動車」をコンセプトに、軽自動車ならではの優れた環境性能と経済性を、親しみやすいスタイルに包み込んだのが特徴。パワートレインの改良により、乗用、商用のすべてのグレードで「平成22年度燃費基準+15%」以上を達成、全車エコカー減税の対象となった。
価格は、乗用タイプが73万2900円から115万7100円、商用タイプが67万7250円から88万4100円。月間7000台の販売を見込んでいる。なお、5段MT車は2010年2月からの販売となる。
■より親しみやすく
2009年の東京モーターショーに参考出品された「アルト・コンセプト」が、早くも市販モデルの新型アルトとしてショールームを飾ることになった。旧型がやや無機的なスタイリングを特徴としていたのに対し、新型は柔らかいラインが目立つ有機的なフォルムに一新、より親しみやすいデザインとなった。インテリアも、シンプルで心地よいデザインにまとめあげられている。
ボディサイズは、3395mmの全長、1475mmの全幅が旧型と変わらないのはいうまでもないが、全高は35mm拡大して1535mm(4WD車は1545mm)となり、また、「ワゴンR」と同じプラットフォームを採用したことにより、ホイールベースも40mm増の2400mmに拡大している。これにともない、前席のヒップポイントは10mm高められて運転席からの視認性が向上。また、後席の居住空間の拡大が図られたという。
ラインナップは、乗用タイプが「E」「F」「G」「X」の4グレード。Eがベーシックモデル、Xが最上級モデルとなる。駆動方式はFFと4WDが選べる。トランスミッションは、EとFが5MTまたは4AT、Gは4ATまたはCVT、XはCVTのみとなる。商用タイプの「アルトバンVP」は、FF車が5MTまたは4AT、4WD車には4ATのみが用意される。
■パワートレイン改良で燃費をアップ
新型アルトに搭載されるのは、K6A型と呼ばれる660cc直列3気筒DOHC12バルブエンジン。可変バルブタイミング機構を採用し、最高出力は旧型アルトと同じ54ps/6500rpmだが、最大トルクは0.2kgmアップの6.4kgmで、従来よりも500rpm低い3500rpmで最大トルクを発生する。
オートマチックは3段からロックアップ機構付きの4段に多段化、また、上級グレードでは副変速機付CVTが組み合わされる。また、旧型に比べて約10kgの軽量化や空力性能の改善が図られた。
この結果、10・15モード燃費は20.0km/リッター(4AT/4WD)〜24.5km/リッター(CVT/FF)を実現。乗用タイプの4AT仕様および4WDモデルの5MT仕様が平成22年度燃費基準+15%、残りすべてのモデルが+25%を達成し、平成17年排出ガス基準75%低減とあわせて、全車エコカー減税の対象になった。
■装備の充実はいいけれど
フルモデルチェンジということで、収納スペースの拡大や快適装備の充実にも意欲的だ。たとえば、助手席にインパネトレーを設定したり、前席のドリンクホルダーを2個から3個にしたのもその一例。また、最上級グレードのXには、プッシュスタートシステムや運転席シートリフター、チルトステアリング、シートベルトアジャスター、LEDサイドターンランプ付きドアミラーを装着している。
ハイブリッドに頼らず、持ち前のコンパクトボディと小さなパワートレインによって、低コストで低燃費を実現するアルト。エコカー減税対象車ではあっても、エコカーと呼ぶのに躊躇するクルマが多数存在するなか、このアルトは素直にエコカーと呼べそうだ。身近なエコカーとしてますます存在意義は高まるだろう。
ただ、ABSは多くのグレードでオプション(商用モデルには設定なし)であるし、リアヘッドレストは最上級グレードのXだけにしか装着されないなど、安全装備には不満が残る。「気軽に使え、世代を超えて愛される軽自動車」だからこそ、他の装備は削っても、安全装備はなおざりにしないでほしいと思う。
(文=生方聡)