フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアントTSIトレンドライン/TSIコンフォートライン【試乗速報】
見た目が変わっただけじゃない 2009.11.17 試乗記 フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアントTSIトレンドライン(FF/7AT)/TSIコンフォートライン(FF/7AT)……272.0万円/322.0万円
新型「ゴルフ」のフロントフェイスを受け継ぎ、インテリアも共通デザインとなった新型「ゴルフヴァリアント」。その進化の度合いを確認した。
わずか2年のモデルチェンジ
「ゴルフ」のワゴンモデル「ゴルフヴァリアント」が、「ゴルフ5」のプラットフォームをベースに3代目に生まれ変わったのが2007年のこと。同年9月には日本でも発売になったが、TSIエンジン(過給器付き直噴ガソリンエンジン)とDSGがもたらす高性能と低燃費、ハッチバックに劣らぬハイレベルな走り、そしてハッチバックを上回る広くて使いやすいラゲッジスペースなどが評価されて、これまでに1万5130台が販売されている。フォルクスワーゲン・グループ・ジャパンにとっては、「ゴルフ」「ポロ」に次ぐ人気モデルなのだ。
そのゴルフヴァリアントが、デビューからわずか2年あまりで4代目にモデルチェンジし、早くも日本に上陸した。あまりに短いモデルサイクルに、「早すぎるんじゃないの?」と思う人は多いはずだ。3代目のオーナーならなおさらなわけで、複雑な気持ちで4代目の登場を見守っているに違いない。こういう私も実はそのひとりである。
フォルクスワーゲンとしては、3代目ゴルフヴァリアントや現行「ジェッタ」が採用するフロントマスク、いわゆる“ワッペングリル”から決別し、「シロッコ」や現行の「ゴルフ6」、そして、新型ポロを特徴づける水平基調のラジエターグリルを備えた新しいブランドフェイスに、一刻も早く移行したいのだろう。日本では販売が終了した「ゴルフプラス」も、ヨーロッパでは新しいマスクに変わっている。その流れをくみ、ゴルフヴァリアントにも新デザインのフロントマスクが与えられて、生まれ変わったのだ。
聞けばこのフロント部分はゴルフ6と同じもので、全長が4565mmから4545mmに短くなったのも、新しいフロントマスクを採用したからだという。一方、1785mmの全幅や1530mm(2.0TSIスポーツラインは1510mm)の全高は旧型と同じ数字。そればかりか、よく見るとAピラー以降のデザインは新旧にほとんど違いがなく、たとえばドアはどう見ても同じ形だし、テールゲートやテールライトも変わりがない。
インストゥルメントパネルも新デザイン
室内に目をやると、インストゥルメントパネルがゴルフ6と同じことに気づくはずだ。イルミネーションをブルーからホワイトに宗旨変えしてイメージチェンジしたメーターパネルも、ゴルフヴァリアントが生まれ変わったことをアピールしている。しかし、めざとい旧型オーナーなら、ドア内張のデザインや荷室の形状などは旧型のままということに気づくはずで、新型に施されたのはどうやらフルモデルチェンジではなく、ビッグマイナーチェンジだと考えられる。
それはそうと、日本でのラインナップは、従来どおり「TSIトレンドライン」「TSIコンフォートライン」そして「2.0TSIスポーツライン」の3タイプ。搭載されるエンジンもいままでと変わらず、TSIトレンドラインが1.4リッターの直噴ターボ(122ps、20.4kgm)、TSIコンフォートラインが1.4リッター直噴ターボ&スーパーチャージャー(160ps、24.5kgm)、2.0TSIスポーツラインが2リッター直噴ターボ(200ps、28.6kgm)で、1.4リッターに7段DSG、2リッターには6段DSGがそれぞれ組み合わされる。
燃費はそれぞれ16.8km/リッター、16.2km/リッター、12.2km/リッターと旧型に比べて3〜11%向上し、全車エコカー購入補助金対象になった。
価格はTSIトレンドラインが272万円、TSIコンフォートラインが322万円、2.0TSIスポーツラインが383万円と、旧型と比較してそれぞれ8万円、14万円、36万円アップしたが、そのぶん装備が充実している。
たとえば、TSIトレンドラインでは、私も含めて、ユーザーから要望が多かったステアリングホイール/ハンドブレーキレバー/シフトノブを革巻きにグレードアップし、また、TSIコンフォートラインではオプションでも選べなかったバイキセノンヘッドライト(新型ではダイナミック/スタティックコーナリングランプも搭載される)が標準装備になっている。2.0TSIスポーツラインには電動のレザーシートとクロームルーフレールがおごられる。
さらに、全車に、購入から3年間、指定のメインテナンス料金が無償になる(ただしパーツ代は有料)「フォルクスワーゲンプロフェッショナルケア」が付帯するから、今回の値上げ幅は十分にリーズナブルといえるだろう。
静かに、しなやかに
今回試乗できたのは、TSIトレンドラインとTSIコンフォートラインの2台。まずは、“TSIシングルチャージャー”、すなわち、1.4リッター直噴ターボを搭載するTSIトレンドラインを借り出した。旧型の同タイプを愛用する私としては、真っ先にチェックしたいグレードなのだ。
さっそく走り出すと、すぐに静粛性が高くなったことに気づく。日本のラクシャリーサルーンのような静けさではないが、これまで耳障りだった低回転時のこもり音や、加速時の排気音がうまく抑え込まれているのだ。これはゴルフ6に試乗したときにも感じたことで、実はゴルフ6同様、この新型ゴルフヴァリアントにも、遮音フィルムをラミネートしたフロントウィンドウが採用されているうえ、旧トレンドラインでは省かれていたボンネット裏の遮音材が新型には取り付けられるなど、静粛性向上に力が注がれているのだ。
エンジンは、低回転から余裕あるトルクを発生し、回せば高速や山道でも不満のない加速を見せるのは旧型と変わらない。しかし、新型は明らかに吹け上がりが軽く、DSGもスムーズ。足まわりも、一段としなやかな印象となっている。
一方、TSIコンフォートラインの“TSIツインチャージャー”は、TSIシングルチャージャーをさらに上回る力強いトルクを発生。エンジンのレスポンスやスムーズさに磨きがかかったのも見逃せない。TSIトレンドライン同様、こちらもキャビンに侵入する音がすっきりとした。
短時間の試乗でも、中身の進化が見て取れる新型ゴルフヴァリアント。デザインこそ“ゴルフ5.5”くらいだが、その仕上がりは限りなくゴルフ6だ。ゴルフヴァリアントの購入を検討している人にとってはうれしい新型である。
(文=生方聡/写真=荒川正幸)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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