フォルクスワーゲン・ポロ1.4コンフォートライン(FF/7AT)【試乗速報】
期待どおりの進化 2009.11.10 試乗記 フォルクスワーゲン・ポロ1.4コンフォートライン(FF/7AT)……203万円
ガラリとイメージを一新、シャープでスポーティなスタイルとなった「フォルクスワーゲン・ポロ」。走行性能や燃費の面でも大きく進化したという新型に試乗した。
ゴルフ・ミニ!?
まわりの反応を見るかぎり、関心の高さでは新型「ゴルフ」を上回るのではないかと思われる、新型「ポロ」。3代目(先々代)の前期型と後期型、そして、4代目(先代)の前期型を愛用した私としても、最新の5代目ポロには興味津々だった。そんな注目のモデルをついに試乗、その出来映えが確認できた。
試乗会場で待ち受けていたのは、“フラッシュレッド”と呼ばれる鮮やかなレッドがまぶしい「ポロ1.4コンフォートライン」。遠目には、新型ポロなのか新型ゴルフなのか言い当てるのが難しいくらい、よく似ている。横長のラジエターグリルにキリっとしたヘッドライトが、すっきりシャープな表情をつくりあげているのだ。もはやポロに“かわいい”はあてはまらない。
ドアを開けると、インテリアにも“ゴルフ・ミニ”化の波が押し寄せている。旧型ポロでは、センタークラスターが強調されたインストゥルメントパネルが、ゴルフとはまた違う雰囲気をつくりあげていた。一方、新型ポロでは、センタークラスラーが主張しないかわりに、シンプルなデザインと、ゴルフに引けを取らない質感を手に入れている。メーターも、ふたつのアナログメーターのあいだにあるディスプレイが情報を鮮明に表示し、インテリアの上質さを押し上げている。
黒を基調とした室内は、ダッシュボードやドアトリムに加飾パネルのたぐいがないこともあり、地味な印象は否めないが、私は悪くないと思う。それよりも、200万円を超える価格で、革巻きステアリングじゃないことのほうが気になってしまった。
パワーに不足はないものの……
さしあたり日本で販売されるのは、今回試乗したポロ1.4コンフォートラインの1グレード。2010年以降には「スポーツライン」「GTI」「クロスポロ」といったバリエーションが追加されるという。
この1.4コンフォートラインは、ポロ、そしてフォルクスワーゲンのエントリーグレードにあたるモデルで、エンジンは1.4リッター直列4気筒DOHCを採用。このエンジン、フォルクスワーゲンお得意のFSIではなく、従来同様ポート噴射を採用するが、最高出力は5ps増えて85ps。組み合わされるギアボックスは、6段ATからデュアルクラッチトランスミッションの7段DSGに改められ、17.0km/リッターの低燃費(10・15モード)を達成する。
さっそくフィット感の高いシートに収まり、発進の準備にとりかかる。ドアの取っ手上部に置かれたドアミラーのリモコンスイッチが、横を向いていて使いにくい。ステアリングはチルトとテレスコピックの調節が可能で、さらにシートのリフト調節などを駆使すると、自然なドライビングポジションが得られるのはうれしい点だ。
準備が整ったところで、試乗会場を後にする。発進は力強いとまではいかないが、不満のないレベル。1.4リッターの自然吸気エンジンは、2000rpm以下ではさすがに頼りないが、そこを過ぎれば、必要十分な加速を見せてくれる。アクセルペダルを踏みつけ回転を上げてやれば、3500rpmから5000rpmのあたりで、さらに活発さを増す。余裕こそないが、高速の合流や追い越しなどのシーンにも十分ついていける性能だ。
ただ、エンジンそのものにはややザラついた印象があり、また、低回転からトルク豊かなTSI(=直噴ターボ)に慣れてしまった身としては、すこし物足りないというのが正直な感想だ。7段DSGは、その動きにぎこちなさなどはないが、ゴルフに比べて遮音性が低いのか、変速時の動作音が耳につくことがあった。
|
しっとり、どっしりした走り
走りのレベルは相変わらず高い。旧型に比べて、ボディ剛性は明らかに高く、電動油圧パワーステアリングやサスペンションも、よりしっとりとした印象に変わっている。コンパクトなサイズにもかかわらず、どっしり落ち着いた乗り味は、さすがフォルクスワーゲンという部分で、高速の安定感にもさらに磨きがかかった。それでいて、ハンドリングには軽快さがあり、実にバランスよくしつけられた足まわりだ。気になる点といえば、185/60R15タイヤがソリッドな印象をもたらす反面、荒れた路面では多少ショックを伝えてくること。また、路面によっては軽くボディが上下に揺すられる(バウンシング)こともあったが、とくに不快というわけではない。
|
今回の試乗会はいつもの箱根ではなく、横浜のみなとみらい地区で開催されたため、街なかを走るチャンスがあった。このポロ、路上駐車が多い場所をすり抜けたり、狭い場所に縦列駐車する場合に、コンパクトなボディが扱いやすく、あらためて魅力を認識した。ボディがコンパクトなぶん、大人が後席に陣取ると、あまり余裕が感じられないのだが、シングルや若いカップル、また、ファミリーでも子供が小さいうちなら、このサイズでも不満はないだろう。
注目の燃費については、試乗会というシチュエーションゆえ、きっちり計ることはできなかったが、トリップコンピューターを見るかぎり、高速道路中心の走行で17km/リッター前後、ストップ・アンド・ゴーが多い街なかでも11km/リッターくらい(いずれもエアコンはオン)を示していたから、実用燃費はなかなかのレベルである。
|
ということで、期待どおりの進化を遂げた新型ポロ。その一方で、期待を超えるサプライズが見あたらないのが、個人的には不満なところ。それは、2010年中頃にも日本に上陸するという1.2リッターTSIエンジンに見いだせるのかもしれないけれど、とにもかくにも、この新型が、歴代のポロと同じように、誰に勧めても恨まれない(!?)クルマに仕上がっているのは確実のようだ。
(文=生方聡/写真=峰昌宏)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。






























