クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック
【スペック】全長×全幅×全高=4885×1915×1355mm/ホイールベース=2940mm/車重=1950kg/駆動方式=FR/4.7リッターV8DOHC32バルブ(440ps/7000rpm、50.0kgm/4750rpm)/価格=1665万円(テスト車=1784万3000円/アルカンタラ・ルーフライニング=18万3000円/パンチングレザーシート=10万円/ウッドステアリング&レザーカラー=11万6000円/ベンゲ・インテリア・トリム=31万5000円/メタリックカラー=15万2000円/ブルー・キャリパー=5万4000円/BOSEサウンドシステム=21万円/自動防眩サイドミラー=6万3000円)

マセラティ・グラントゥーリズモSオートマチック(FR/6AT)【試乗記】

セクシーの奥に秘めたもの 2009.09.11 試乗記 島下 泰久 マセラティ・グラントゥーリズモSオートマチック(FR/6AT)
……1784万3000円


イタリアンスポーツクーペ「マセラティ・グラントゥーリズモ」に、4.7リッターエンジンとトルコンATを組み合わせた「Sオートマチック」が加わった。ムード重視のクルマと思って走り出してみたが……。
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

日常で真価を発揮

試乗した印象について伝える前に、簡単にラインナップを整理しておこう。基本形であるマセラティ・グラントゥーリズモは最高出力400psを発生するV型8気筒4.3リッターに6段ATを組み合わせたスポーツクーペ。続いて導入されたグラントゥーリズモSは、パワートレインを440psを発生するV型8気筒4.7リッターとトランスアクスルレイアウトの6段シーケンシャルMTの組み合わせに置き換え、よりファームなサスペンションや1インチアップの20インチタイヤでシャシーを強化したという、徹底的に走りに振った仕様である。

では新たに登場したグラントゥーリズモSオートマチックはといえば、エンジンは「S」用の4.7リッター440psユニットを使いながら、これに6段ATを組み合わせて、より日常性を高めたモデルと言える。この手のクルマが欲しい人は、大抵は一番良いグレードを求めるはず。しかし、それが必ずしも硬派な方向でなくてもいい。そのあたりをうまく突いたモデルと言えそうだ。

実際、その走りのキャラクターは「S」よりは素のグラントゥーリズモの延長線上にあると言えそうだ。つまり、それほど硬派には振られておらず、日常的なシーンでこそ真価を発揮する躾けである。
排気量4.7リッターのパワーユニットは7000rpmで最高出力を発生するというスペックどおりの圧倒的な高回転型。低速域ではやや線の細さを感じるが、実際には排気量があるだけに、トルク自体は決して不足していない。要は中〜高回転域の活発さが、そんな風に感じさせるのだ。

マセラティ グラントゥーリズモ の中古車webCG中古車検索

硬派どころか軟派

それにしても艶っぽい吹け上がりである。そのキメの細かなタッチは排気量と気筒数からすると驚異的なほど。しかもセンターコンソールにあるSPORTボタンを押せば排気音がさらに刺激を増す。グラントゥーリズモSのような炸裂ぶりではなく、住宅街で気を使うようなことは無いが、それでも十分陶酔できること請け合いである。アクセルオフ時の軽いバックファイア的なバラバラとした音も、ヤル気をそそる。

惜しいのはパドルを引いて手動で選んだギアでも7000rpmあたりで自動シフトアップしてしまうATの設定だ。自動シフトアップ自体はクルマの性格からすればいいとして、せっかく伸びを楽しもうと思ってパドルに指を伸ばしているのだから、あと200〜300rpmでも伸びてくれれば快感度はさらに高まるはず。現状は絶頂に向かう途中で、ブツッと強制終了させられてしまう感じなのだ。

シャシーの味付けは、硬派どころかほとんど軟派といっていいほどである。ステアリングは拍子抜けするほど軽く、乗り心地も芯の硬さは感じるものの、あたりは20インチタイヤを履くとは思えないほどふんわり柔らか。あまりの手応えのなさに不安に感じてしまうほどだ。SPORTボタンを押せばダンパー減衰力が高まるが、それでももう少し確かな接地感があっても……と感じさせる。サスペンションにはグラントゥーリズモにもオプションで用意されているスカイフック制御が採用されているが、 これが何と言うか、上から引っぱり過ぎ? と言いたくなるような印象なのだ。

もっとも実際の接地性が低いわけではない。手応えの無さにこわごわステアリングを切り込むと、反応は想像以上にダイレクトでノーズがグイッとイン側に引き込まれる。2940mmというロングホイールベースが信じられないほどだが、前後49:51という前後重量配分を聞けば、それも納得だ。

攻め込むと、変わる

その感覚に慣れるに従って、徐々に軽い身のこなしを楽しめるようになってくる。初期制動が甘く、奥に入りがちのブレーキにさえ気を使えば、ステアリングに添えた手にそっと力を入れるだけでビビッドな回頭性を満喫できる。むしろ力を入れたほうが、かえってギクシャクする感じである。

きっとグラントゥーリズモSオートマチックとは、名前どおりのそんなグランドツーリングカーなのだろう。真剣に走りと対峙するというよりは、流すような走りでこそ光る、あくまでムード重視の……。そう結論づけようと思っていたのだが、最後にもういっぺんだけ真剣にコーナーに挑んでみたら、別の一面が垣間見えた。タイヤがムズムズするくらいまで攻め込むと、4輪の接地感がありありと伝わってきて、クルマとの意思疎通がグッとダイレクトになる。硬派なスポーツカーとしての表情をむき出しにし始めるのだ。

さすがマセラティである。普段は内外装から走りに至るまで徹底的にラクシャリーでセクシー。しかし本気で走りに挑めば、それに真剣に応える硬派な部分も、奥にしっかり秘めているのである。

そのキャラクターはグラントゥーリズモとグラントゥーリズモSの良いとこどりと言ってもいいかもしれない。今後、グラントゥーリズモのセールスの主力は、まさにこのモデルが担うことになるのではないだろうか。

(文=島下泰久/写真=荒川正幸)

島下 泰久

島下 泰久

モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。

試乗記の新着記事
  • 日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
  • アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
  • ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
  • ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
  • アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
試乗記の記事をもっとみる
マセラティ グラントゥーリズモ の中古車webCG中古車検索
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。