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【スペック】全長×全幅×全高=4950×1970×1915mm/ホイールベース=2850mm/車重=2720kg/駆動方式=4WD/4.6リッターV8DOHC32バルブ(318ps/5600rpm、46.9kgm/3400rpm)/価格=690万円(テスト車=758万400円)

トヨタ・ランドクルーザー ZX(4WD/6AT)【試乗記】

日本代表 2009.08.26 試乗記 サトータケシ トヨタ・ランドクルーザーZX(4WD/6AT)
……758万400円

オプションを含めると、750万円オーバー! そんな「ランクル」の最上級仕様を、高いと感じなかった理由とは?
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もしも荒野に挑むなら――

フルモデルチェンジから約2年、ランクル200系のマイナーチェンジを機に追加設定された最上級グレード「トヨタ・ランドクルーザーZX」の価格は690万円。プリクラッシュセーフティシステムその他のオプション込みだと758万400円。結構いいお値段ですね。日本における同価格帯のライバルが、パパパッと頭に浮かぶ。

イギリス代表が「ディスカバリー3 4.4」(759万円)、ドイツ代表は「メルセデス・ベンツMクラス 3.5」(735万円)がいいかと思ったけれど、日本には3列シート仕様が入ってこないので「アウディQ7 3.6」(736万円)、アメリカ代表が「キャデラックSRX 3.6スポーツ」(705万円)か。

これはかなりすごいメンツだ。来年のサッカー南アフリカW杯のグループリーグが「日本・ドイツ・イギリス・アメリカ」という組み分けになったら大変だけど、それと同じくらいの強敵が揃った。でも、もしこの4台から1台を選んで、野生の肉食獣や盗賊が潜む荒野を何千kmも走らなければいけなくなったら……。自分だったら、間違いなく「ランドクルーザー ZX」を選ぶ。いざという時に信頼できるのは、アフリカでも中東でもロシアでも抜群の実績を誇るランクルだ。

1954年のデビュー以来、長年かけて築き上げた“ランクル神話”の威力は絶大。もしかすると、最もブランド力の高い日本車かもしれない。そして「荒野を何千km」ではなく、銀座にお買い物に行く時にも「ランクル ZX」を選ぶかもしれないと思うのは、キメの細かいエンジンの手触りがお上品だったからだ。

20インチの大径ホイールやチルト&スライド電動ムーンルーフ、18スピーカーのサウンドシステム付きHDDナビなどを標準装備する「ZX」は、本年4月のマイチェンを機に設定された「ランドクルーザー」シリーズの最上級仕様。
20インチの大径ホイールやチルト&スライド電動ムーンルーフ、18スピーカーのサウンドシステム付きHDDナビなどを標準装備する「ZX」は、本年4月のマイチェンを機に設定された「ランドクルーザー」シリーズの最上級仕様。 拡大
大人にはちょっと狭い、3列目シートの居住空間。なお、リポーターの身長は180cm。
大人にはちょっと狭い、3列目シートの居住空間。なお、リポーターの身長は180cm。 拡大
【試乗車のオプション装備】
ボディカラー(ホワイトパールクリスタルシャイン)=3万1500円/ヘッドランプクリーナー=1万500円/プリクラッシュセーフティシステム=24万1500円/パワーバックドア+セミパワー跳ね上げ機能付きサードシート=10万5000円/クールボックス=6万8250円/リアシートエンターテイメントシステム=14万3850円/リモートセキュリティシステム=6万3000円/寒冷地仕様+リアフォグランプ=1万6800円
【試乗車のオプション装備】
ボディカラー(ホワイトパールクリスタルシャイン)=3万1500円/ヘッドランプクリーナー=1万500円/プリクラッシュセーフティシステム=24万1500円/パワーバックドア+セミパワー跳ね上げ機能付きサードシート=10万5000円/クールボックス=6万8250円/リアシートエンターテイメントシステム=14万3850円/リモートセキュリティシステム=6万3000円/寒冷地仕様+リアフォグランプ=1万6800円 拡大
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エンジンの変更は吉

発進時にすくっとトルクが立ち上がって、2.7トン(!)の重量を感じさせずに軽やかに走り出す。そのままアクセルを踏み続けても特にノイズが高まることなく、滑らかにエンジンは回転を上げる。アクセル操作に対するレスポンスも上々で、微妙なアクセル操作で速度をコントロールできる。

本年4月のランクル200系マイチェンのキモは、エンジンの変更だった。同じ4.6リッターのV型8気筒ではあるけれど、北米市場向けピックアップトラック「タンドラ」などに積まれる2UZ-FE型から、レクサスLS460やクラウン・マジェスタに積まれる1UR-FE型に移行したのだ。

プレミアムサルーン用だったV8エンジンは、ランクル200系に積まれるにあたって手直しを受けた。具体的には最高出力が引き下げられ、代わりに最大トルクを3400rpmという低回転域から生むようにチューンされた。SUVを粛々と走らせるように改良されているけれど、回すとちょっとイイ音を聞かせてくれるあたりに出自がしのばれる。高速道路でもエンジンノイズが抑えられているのは、エンジン変更とともに、マイチェン前の5ATから6ATへとトランスミッションが1段増えていることも寄与している。

商店街の魚屋さんの前から高速道路まで、乗り心地はあらゆる場面でソフト。突っ張ったりザラついたり、気に障るところがない。だからハイウェイをのんびり流すような時にも、他のライバルを抑えて「ランクル ZX」を選ぶかも。
シフトセレクターそばにはショックアブソーバーの減衰力を変えるスイッチが付いていて、これを「COMFORT」にするとゆらりゆらりと大船に乗った気分。一方「SPORT」にセットすると、4本のタイヤが路面をかしっと噛みつく性格に変化する。ただししっかり感が増して好ましく思うことはあっても、乗り心地が硬くなって不快ということはない。このあたりのセッティングはうまい。

この日は、高速道路と一般道を8:2の割合で234.1km走行。満タン法で、6.07km/リッターの燃費を記録した。
この日は、高速道路と一般道を8:2の割合で234.1km走行。満タン法で、6.07km/リッターの燃費を記録した。 拡大
ランクルに新たに搭載されることになった4.6リッターのV型8気筒ユニット。最高出力は318psと、クラウンマジェスタ用の347psと比べると控え目になっている。
ランクルに新たに搭載されることになった4.6リッターのV型8気筒ユニット。最高出力は318psと、クラウンマジェスタ用の347psと比べると控え目になっている。 拡大
路面の状況や走行状態によって前後輪にトルクを配分するトルセンLSDを採用。ノーマル状態では前後40:60でトルク配分を行い、スリップを感知すると前後の配分を変化させる。また、ダイヤル式トランスファー切替スイッチにより、通常走行の「H4」と、悪路で威力を発揮する「L4」を簡単に切り替えることができる。
路面の状況や走行状態によって前後輪にトルクを配分するトルセンLSDを採用。ノーマル状態では前後40:60でトルク配分を行い、スリップを感知すると前後の配分を変化させる。また、ダイヤル式トランスファー切替スイッチにより、通常走行の「H4」と、悪路で威力を発揮する「L4」を簡単に切り替えることができる。 拡大
3列シートのフル乗員仕様から、2列目を倒して3列目を跳ね上げるフル荷室仕様まで、シートアレンジは豊富。また、一度操作すれば二度目以降は簡単にアレンジできる使い勝手のよさもウリ。
(写真をクリックすると、シートアレンジの様子が見られます)
3列シートのフル乗員仕様から、2列目を倒して3列目を跳ね上げるフル荷室仕様まで、シートアレンジは豊富。また、一度操作すれば二度目以降は簡単にアレンジできる使い勝手のよさもウリ。
(写真をクリックすると、シートアレンジの様子が見られます) 拡大

足りないのは色香とエキサイトメント

サスペンションには車高調整機構も備わり、高速で走ると自動的に車高が下がって安定性を高める。悪路を行く場合にはスイッチ操作ひとつでアシが伸びて背が高くなる。また、車高を低くすることで、パッセンジャーが乗ったり降りたりするのを助ける。といった具合に、「ランクルZX」は全方位的に気配りがなされ、洗練された印象を伝える。

ただひとつ残念なのが、ステアリングの手応えがいまいち曖昧で、タイヤがどっちを向いているのか、インフォメーションに乏しい点。特に高速コーナーが連続するような場面では、自分が操縦しているというダイレクト感に欠ける。したがって、自信を持ってステアリングホイールを握ることができず、心から運転を楽しむことができない。

最上級グレードである「ZX」には電子制御システムがテンコ盛りで備わり、その中にはVGRS(バリアブル・ギア・レシオ・ステアリング)も含まれる。これは車速に応じてステアリングのギア比を変える機構で、通常は軽快、ハイスピードでは落ち着いた特性にするというけれど、高速コーナーではどっちつかずになっている印象だ。

ただし、逆に言えば気になるのはブッ飛ばした時のエキサイトメントに欠けることと、色香が感じられない外観だけだ。外観に関しては、あの無骨さがいいという意見もありましょうから、あくまで好みの問題でしょうが。
もろもろ踏まえると、「ランドクルーザー ZX」は欧米の列強に混じっても互角に戦える日本代表車だ。そしてそのパフォーマンスとブランド力は一朝一夕に出来上がったのではなく、55年におよぶ長い長い精進の末に獲得したものなのだろう。試乗を終えたランクルを見ながら、レクサスもあと何十年かすれば押しも押されもせぬ名門になっているのかもしれないと考えた。

(文=サトータケシ/写真=峰昌宏)

ZXは、下位グレードのAX(18インチ)より2インチ大きな20インチホイールが標準。サイドステップも照明付きのエアロタイプとなる。
ZXは、下位グレードのAX(18インチ)より2インチ大きな20インチホイールが標準。サイドステップも照明付きのエアロタイプとなる。 拡大
乗り味と同様、ヘビーデューティというよりトヨタの高級セダンに通じる安楽さを提供するインテリア。ホッとする雰囲気に満ちている一方で、ハッとするようなスリルには欠ける。試乗車は、リアシートエンターテイメントシステム(14万3850円のオプション)付き。
乗り味と同様、ヘビーデューティというよりトヨタの高級セダンに通じる安楽さを提供するインテリア。ホッとする雰囲気に満ちている一方で、ハッとするようなスリルには欠ける。試乗車は、リアシートエンターテイメントシステム(14万3850円のオプション)付き。 拡大

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サトータケシ

サトータケシ

ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。

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