日産の先進技術を体験(前編)2010年発売の電気自動車(EV)実験車両にチョイ乗りした
2009.08.01 自動車ニュース日産の先進技術を体験(前編)2010年発売の電気自動車(EV)実験車両にチョイ乗りした
日産自動車は、2010年に北米と日本で発売する電気自動車(EV)の新しいプラットフォームと、同プラットフォームをベースにした実験車両を公開。プレス向けに実験車両の試乗会を行った。
■EV専用プラットフォーム+独自開発モーター
日産が2010年の発売を目指して開発を進めているEVは、EV専用に開発されたプラットフォームに、日産が独自に新開発したモーターと、コンパクトなラミネート構造のリチウムイオンバッテリーを搭載する。また、EVの利用をサポートするITシステムを備えるのも注目のひとつ。
専用プラットフォームの特徴は、薄型のラミネート型バッテリーを、フロア下にレイアウトできること。これによりバッテリー搭載量の最大化と室内の広さを両立。日常十分な航続距離と、コンパクトカー並みの居住スペースを確保するという。
また、“静かさ”にもこだわる。車体骨格にバッテリーを支えるフレームや、インバーター固定用フレームを追加し、高い車体剛性を実現。車外からの音や振動を抑制すると謳われる。
■1回の充電で160km走行できる
1992年からリチウムイオンバッテリーの研究開発を進めてきた日産は、2007年4月、NEC、NECトーキンと合同でオートモーティブエナジーサプライ(株)を設立。量産化に向けて取り組んできた。
発売予定のEVに搭載されるリチウムイオンバッテリーは、電極素材の改良や、円筒型からラミネート型への変更を実施。1998年から2000年に試験運用したEV「ハイパーミニ」と比べ約2倍のエネルギー量を実現したという。
4枚のラミネート型セルを1モジュールとして、48個のモジュールをシート床下に搭載。1回の充電で走行できる距離は、米国のLA4モードで160km。十分な航続距離を確保するために、減速時にはブレーキとモーターを制御し、減速エネルギーを有効活用する回生協調ブレーキを採用する。
充電時間は、家庭用の100Vで16時間、200Vで8時間。急速充電の場合は約30分程度で充電完了となる。
自社開発のモーターは、80kw/28.5kgmという出力とトルクを発生。6月に発表された「三菱i-MiEV」(47kW/18.4kgm)と比べると33kw/10.1kgm上まわる。高いレスポンスと低回転での十分なトルク、独自のモーター制御によりスムーズで力強い加速を実現したという。
■EV専用のITサポート機能
日産のEVで注目の装備は、専用のITサポート機能。これは、車載通信ユニットと日産のグローバルデータセンターを活用し、EVライフを24時間365日サポートするシステムだ。
たとえば、目的地までの距離を差し引いたうえで、さらに航続可能エリアを案内するなどの機能をもつ「航続可能エリアの表示」や、充電スタンドの最新情報を知らせる「充電スタンド自動更新」などがナビ画面で確認できる。また、クルマから離れたところにいても、充電やエアコンの設定を予約できる「タイマー機能」や、携帯電話などで充電残量が確認できたり、充電中であれば充電完了をメールで通知する「EVリモートコントロール・モニタリング機能」などがある。
EVで一番不安なのは、充電スタンドがまだまだ不足しているということ。実際に購入した人にとって、いろんな意味で安心できるサービスといえる。
■チョイ乗りしてみた
実験車両が公開された日、日産の追浜テストコースでほんの少し試乗することができた。
ティーダベースのEV乗り込む。すでにエンジン、ではなく電源はオンになっていたが全く音がしなかった。日々編集部の「プリウス」に乗ることが多いので、静かな室内に慣れてはいるけれど、純EVの静けさはそれでも新鮮な感覚。
あくまで実験車両だったので、室内のレイアウトは市販車と異なるとのことだが、操作はガソリン車と基本的に同じ。シフトをDレンジに入れて、サイドブレーキを解除する。
アクセルを踏み込むと、無音のままフワッと走り出す。EVならではの力強い加速で一気にコースへ。パワーの伸びにも物足りなさはなく、むしろ余裕な走りを感じた。市販モデルの登場が本当に楽しみだ。
2010年、もうまもなく発売されるであろう日産のEV。EV専用にデザイン・設計されるという全く新しいクルマの全貌は、この週末8月2日に公開される予定だ。
(文=webCG ワタナベ/写真=峰昌宏)
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