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【スペック】全長×全幅×全高=4460×1745×1490mm/ホイールベース=2700mm/車重=1400kg/駆動方式=FF/1.8リッター直4DOHC16バルブ(99ps/5200rpm、14.5kgm/4000rpm)+交流同期電動機(82ps、21.1kgm)/価格=220万円(テスト車=276万700円)

トヨタ・プリウスS(FF/CVT)【試乗記】

長く乗るべきクルマ 2009.07.24 試乗記 下野 康史 トヨタ・プリウスS(FF/CVT)
……276万700円

旧型「プリウス」のユーザーは、すぐにでも新型に乗り替えるべきか? 両者を見比べながら、エコカーの買い替え時(手放し時?)を考えてみた。
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言い訳はいらない

「ハイブリッドだから、という言い訳をいっさいさせないクルマにしたかった」。新型「プリウス」の開発テーマはなんだったのか、エンジニアのひとりに聞いたら、そんな答えが返ってきた。動力性能でも、操縦性でも、居住性でも、快適性でも、エコカーなんだから仕方ないよね、というエクスキューズを与えないクルマにする。結論を先に言うと、3代目のプリウスはたしかにそのとおりのクルマである。

振り返れば、初代モデルはパワーが十分とはいえなかった。そのため、ガンガン飛ばすヨーロッパでは、まったくウケなかった。減速時の回生ブレーキの食いつきもややきつかった。2代目でパワー不足は解消されたが、“走るハイブリッド”を強調するあまり、モデルチェンジ直後のクルマは足まわりにちょっと突っ張ったような硬さがあった。

だが、6年ぶりにフルチェンジした新型プリウスで、欠点を指摘するのはむずかしい。しいて挙げれば、ダッシュボード中央に追いやられたエネルギーモニター類のディスプレイが小さすぎることくらいだろうか。しかしそれも、特殊なパワーユニットであることをもはや乗り手に意識させないというニュープリウスの“方針”なのかもしれない。

アーチ型のセンターコンソールがドライバーを取り囲む。コクピットの雰囲気はまるでスポーツカー。
アーチ型のセンターコンソールがドライバーを取り囲む。コクピットの雰囲気はまるでスポーツカー。 拡大
ステアリングから手を下ろしたあたりにシフトレバーが位置するため、操作しやすい。
ステアリングから手を下ろしたあたりにシフトレバーが位置するため、操作しやすい。 拡大
【試乗車のオプション装備】 フロントアンダーカバー+リアバンパースポイラー=1万5750円/ソーラーパネル付きムーンルーフ+ソーラーベンチレーションシステム&リモートエアコンシステム+スマートエントリー+イルミネーテッドエントリーシステム=22万5750円/タッチトレーサーディスプレイ+インテリジェントパーキングアシスト+HDDナビゲーションシステム=30万8700円/ETCユニット=1万500円
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完成度は5つ星

新型プリウスのステアリングを初めて握ったときに驚いたのは“車格感”の向上である。普通のクルマでいえば、モデルチェンジで排気量が大きくなった感じ。実際、エンジンは1.5リッターから1.8リッターになった。単体のパワーでいうと76psから99psへの大躍進だ。小型軽量化されたモーターも、出力は50kWから60kWに上がっている。駆動用バッテリーはこれまでどおりニッケル水素式だが、システム電圧は500Vか600Vから650Vにグレードアップしている。車格が上がったと感じるのも当然なのだが、向上したのはパワーにとどまらない。サスペンションストローク感の増した足まわりも、旧型よりひとクラス上になった実感がある。

5ドアボディはかなり大きくなったように見えるが、外寸は全長で15mm、全幅で20mmプラスされただけである。全高やホイールベースは変わっていない。しかし、駆動用バッテリーの小型化などが奏功して、後席は旧型よりひとまわり広くなった。シートそのものも、よりたっぷり大きいものになった。リアドアより後ろまで伸びたサイドウィンドウのおかげで、採光もいい。「レクサスLS」と比べても広々感ではそれほど遜色ないリアシートである。

遊星ギアを使った精緻な動力分割機構が、エンジンと2個のモーターをとりもつハイブリッドシステムの基本に変わりはないが、新型はますますモーターの活動領域が広がった。シングルモーターの「ホンダ・インサイト」に対して、充電用のモーターを別に持つプリウスは、エンジン付きEVと言ってもいい。エネルギーモニターを見ていると、フラットな高速道路を巡航していても、アクセルをちょっとゆるめればエンジンがしばらく止まることがある。モーターの力を借りて、あわよくばガソリンをケチろうとするこの躾のおかげで、実用燃費は旧型よりさらによくなった。

東京〜新潟をホンダ・インサイトと共に往復したところ、プリウスのほうが約1割、好燃費だった。1.3リッターエンジンより1.8リッターエンジンのほうを少ないガソリンで運転させるのがトヨタ式ハイブリッドの凄さである。しかも、車重はプリウスのほうが120kgほど重いのに、だ。新型プリウスは文句なしの5つ星である。

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2代目(写真下)と比べると、新型プリウスはリアシートのクッションが分厚い。スペースにゆとりが増したこともあって、快適性に不満はない。
2代目(写真下)と比べると、新型プリウスはリアシートのクッションが分厚い。スペースにゆとりが増したこともあって、快適性に不満はない。 拡大
2代目プリウスのリアシート。新型と比べるとクッションのボリュームの違いは一目瞭然。
2代目プリウスのリアシート。新型と比べるとクッションのボリュームの違いは一目瞭然。 拡大

プリウスの正しい乗り方は?

新型が出たあとも、2代目の旧型が「プリウスEX」名で継続販売されている。だが、このモデルは装備を省いてコストダウンした主にビジネスユースの、しかし重要な戦略車種である。最廉価版インサイトと同じ189万円の価格が物語るとおり、EXはレンタカーや営業車などのフリート需要をさらわれないための必殺インサイト対抗馬なのだ。

だから、たとえいくら旧型のカタチが好きでも、一般の人がEXを求めるのは現実的ではない。あと16万円出せば、新型の標準モデル「L」が手に入る。ベーシックグレードとはいえ、ハイブリッドシステムは上位モデルと変わらない。個人的にはLで十分だと思った。

だが、いま2代目の旧型に乗っている人がアセってバックオーダーの行列に並ぶ必要はない。3代目ほどパワーに余裕はないが、そのかわり旧型は、ライトウェイトスポーツのような軽快な走りが身上だ。新型より小さなパワーユニットが活躍するハイブリッドカーとしての“一生懸命感”も旧型のほうがある。ダッシュボードがデンと大きくなった新型と比べると、運転席からの広い前方視界も好感が持てる。「もうそろそろエコカーに買い替えたほうがいいですよ」と言われるくらい長く乗り続けるのが、プリウスの正しい乗り方だと思う。

(文=下野康史/写真=荒川正幸)

新型プリウス(手前)と2代目プリウス(奥)。
新型プリウス(手前)と2代目プリウス(奥)。 拡大
新型では、ルーフラインの頂点が後ろ側に移動し、これにより後席の頭上スペースが増した。
新型では、ルーフラインの頂点が後ろ側に移動し、これにより後席の頭上スペースが増した。 拡大
トランクルームは、高さ、奥行き、形状ともに大きな違いはなし。
トランクルームは、高さ、奥行き、形状ともに大きな違いはなし。 拡大
下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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