マツダ・アクセラシリーズ【試乗記】
ハイブリッドではないけれど 2009.07.10 試乗記 マツダ・アクセラスポーツ15C(FF/CVT)/セダン20E(FF/5AT)/マツダスピードアクセラ(FF/6MT)……215万3500円/255万9250円/300万3500円
マツダの全販売台数の3分の1以上を占めるという基幹車種、新型「アクセラ」がフルモデルチェンジ。その実力やいかに?
「エコで楽しい」こそクルマ作りの王道
あたりまえだけど、一番好ましいのは「エコで楽しいクルマ」だろう。最悪なのは、「燃費が悪いうえにつまらないクルマ」だ。じゃあ、「エコだけどつまらないクルマ」と、「燃費は悪いけれど楽しいクルマ」はどっちがエライか?これは「性格のいいブ男」と「性格が悪いハンサム」のどっちがモテるかにも似た、奥の深い問題だ。
とはいえ、燃費がよくて楽しいクルマがエライというのは、今にはじまったことじゃない。10年前だって50年前だって、エコで楽しいクルマが好ましかった。ハイブリッド車が脚光を浴びているけれど、どこの自動車メーカーだって燃費がよくてカッコよくて、走って楽しいクルマを作ろうとしてきたはずだ。
2代目となるマツダの新型「アクセラ」もまた、そうしたクルマ作りの王道から外れていない。燃費のよさと走る楽しさを両立するために、1.5リッターモデルのトランスミッションを4ATからCVT(無段変速機)に変更、先代に比べて燃費は約5%向上した。
また、2リッター直列4気筒ガソリン直噴エンジンにはアイドリングストップ機構「i-stop」が備わり、先代の2リッターモデル比で約15%の燃費向上をはたしている。1.5リッターと2リッター、それぞれに4ドアセダンと5ドアハッチバックが設定され、後者が「アクセラスポーツ」と呼ばれるのは従来通り。「i-stop」が備わる2リッターのセダンをメインに試乗する。
強いデザインにした理由
ヌメッとしたラインと鋭い目つきがハ虫類を思わせるのは従来型と同じ。さらに、口の部分にあたるラジエターグリルがガバチョと開いたことで、獲物に飛びかかる瞬間のどう猛さが加わった。ボンネット中央のラインやボディサイドのくっきりとした陰影など、やり過ぎと思えるくらい強いデザインだ。
開発のまとめ役を務めた前田剛亨主査に、率直に「やり過ぎでは?」と尋ねたところ、その理由をわかりやすく説明してくださった。前田さんによれば、アクセラの主たる市場はアメリカ。全体を10とするとアメリカが4、欧州が3、残る3をアジア・オセアニアでわけるというのがざっくりとした割合だ。
アメリカでこのクラスを買う人は、大きく以下の3通りにカテゴライズされるという。「アメ車しか買わない人」「ヨーロッパ車を買う人」「日本車を買う人」。アクセラは当然ながら「日本車を買う人」にアピールする必要がある。したがってライバルの中に埋没しないような強いデザインが求められたということだ。
初代アクセラが世界100カ国以上で200万台を売り上げたヒット作になったけれど、マツダはその理由をダイナミックなデザインと、よく走る点にあると分析しているという。外観のアグレッシブさに比べるとおとなしく感じるインテリアに囲まれてエンジンを始動、横浜の道に走り出る。
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「アクセラ」のライバル車種とは?
2リッター直噴ユニットは、気持ちよく回転を上げるタイプ。決して静かなエンジンではないけれど、乾いた音質は耳障りではない。ツインクラッチ式の2ペダルMTが増えつつあるいま、トルコン式5段ATが“スペック負け”するのはいたしかたない。けれど、変速は十分以上に滑らかで、パドルを操作してのマニュアルシフトも素早い。
乗り心地は良好。市街地を20〜30km/hぐらいでトロトロ走るような場面ではややゴツゴツするけれど、それより上の速度域では非常にスムーズ。先代は正確なハンドリングが高く評価されたけれど、新型もその美点を継承している。しっかり確実な手応えのステアリングホイールを操作すると、ビシッと曲がる。
前出の前田主査は「操縦安定性と乗り心地に関しては新型『ゴルフ』がライバル」とおっしゃっていた。確かに、快適で安定性も抜群、しかも敏捷に動くあたり、「アクセラ」と「ゴルフ」は似ている。そうそう、がっちりしたボディも両者の共通点だ。ちなみに新型「アクセラ」の基本的なプラットフォームは先代と同じで、前後のサスペンション形式も踏襲している。で、信号待ちで停車すると、「スン」とエンジンが止まった。そして、ダッシュボード中央に据えられた「i-stop」モニターがアイドリングストップした時間を表示する。今回は新型車の試乗ということで特に空いた道を選んで走ったからそれほど数字は伸びなかった。けれど、都心部では時間帯によって走行時間の約半分が停止状態という統計もあるそうで、そこでは確実に省燃費効果が見込める。
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振動が気になる人もいた「i-stop」
信号が青に変わり、ブレーキを踏む力を緩めると、「プルン」という振動とともにエンジンが始動。シリンダー内に直接ガソリンを噴射する直噴システムによってエンジンの始動は素早い。個人的には気にならなかったけれど、同乗したカメラマン氏は「プルン」が気になったという。このあたりの感じ方には個人差があるものの、あとほんの少し振動が小さくなれば印象はまるで変わるだろう。
というわけで、新型「マツダ・アクセラ」は「トヨタ・プリウス」や「ホンダ・インサイト」といったハイブリッド車にこそ燃費で及ばないものの、操る楽しさを備えた「まずまずエコでかなり楽しいクルマ」に仕上がっている。だから「アクセラ」にもこのセグメントに割って入る可能性が――、「ある」かどうかは、正直言ってわからない。
「アクセラ」みたいなクルマを買う人がいるほうが、多様性があっていいとは思う。けれど、普通に考えればマニア以外の多くはプリウスやインサイトに流れるだろう。少なくとも日本では。iPod全盛のいま、誰もCDウォークマンに振り向かないのと一緒だ。
では、ハイブリッドを持たない「アクセラ」はどうすればいいのか?長い目で見て、そのファン・トゥ・ドライブと、個性的なデザインを磨きあげてほしいと思う。なぜって、ハイブリッドシステムは他社から買うことができるけれど、デザインの伝統や走る楽しさは、ヨソから買うわけにはいかないからだ。「楽しさ」を磨きあげておけば、いつの日か「エコで楽しい、理想のクルマ」を生み出す時が来るはずだ。
(文=サトータケシ/写真=郡大二郎)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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