第98回:夏だ! サングラスだ! イタリア人検眼士ブルーノさんに聞け
2009.07.04 マッキナ あらモーダ!第98回:夏だ! サングラスだ! イタリア人検眼士ブルーノさんに聞け
異常なほど(?)のサングラス好き
イタリア人はサングラス好きである。ビーチに水着で寝そべる男女だけでなく、バスの運転手さんも、街を歩く警官も、さらには、市長さん、学校の先生までサングラスをしていたりする。
近眼の人でも、いわゆる度付きサングラスか、なぎら健壱氏のような着色レンズを上から被せるメガネを持っている。その昔、イタリア人の語学教師も「イタリア人のサングラス好きは、ほとんど異常だ!」と自ら認めていたほどだ。
ただし、彼らは「ホントに眩しいから」という事実もある。
イタリア人は日本人に比べて太陽を眩しがる。ボクが「そんなに眩しいかあ?」と思うような場所でも、サングラスを外さない人は多い。
困るのは屋外の人物撮影のときだ。とにかく相手が眩しがる。だからレフ板(あの、きらきら光る反射板のことですね)を当てたりすると、かなりの確率で「早く撮り終わってくれ!」と悲鳴が上がる。
その証拠に撮影が終わると、即座にサングラスをかけるのだ。
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レッスン開始
ドライバーにとっても夏にサングラスは欠かせない。また、読者のなかにもイタリア旅行の際、サングラスがキマっている現地のオヤジを見て、自分も欲しくなる人は多いだろう。
そこで今回は、知り合いのオプトメトリスト(検眼士)であるブルーノおじさんに、ドライバー向けサングラス選びの極意を教えてもらうことにした。通勤にアプリリア製スクーター「アタランテ500」を愛用する57歳である。休憩時間に外でタバコをふかしていたところを直撃したのだが、親切なブルーノおじさんはさっそく店内に戻り、丁寧な解説を始めてくれた。
イタリア人はブランド物のサングラスを好む。それらは100ユーロ(約1万3000円)超がほとんどだ。やっぱり、ブランド物っていいの?
ブルーノおじさんは、ブランド名を提供しているデザイナーに商標使用料を払って満足を得る人のことを否定しなかった。しかしドライバー向けには、もっと大切なことがあるという。
「まず大事なのは“収差”だな」
簡単に説明すると、サングラスのレンズ表面には、顕微鏡レベルで見ると微妙な凸凹がある。これが大きいと、かけている人の目に光線が入る位置がずれてしまい、結果として見づらいサングラスになってしまう。とくにトンネルなど僅かな光しかないところで見えにくくなる。
「おしゃれ雑貨店で売っている激安サングラスの収差と、眼鏡屋さんで売っているものの収差には天地の差があるんだぞ」とブルーノさんは言う。
「あと、おすすめは偏光レンズだな」
反射光を抑えるレンズのことだ。ボクも偏光レンズのサングラスをかけて、外に停まっているクルマを見た。ギラギラしたボディ表面の、少女漫画の瞳のような反射光が劇的に抑制された。
それでいて値段は、ブランド物の半額で手に入るものがある。これはありがたい。惜しむらくはフレームのデザインにカッコいいものが少ない、というのがボクの感想である。
トンネルでも見えやすいのは?
それでもトンネルでサングラスをかけていると、やはり見にくくなってしまう。なにかいい解決法は? とのボクの質問に、ブルーノさんは、
「サングラスを外すことだな」と頭の上に載せてみせて笑った。つまり「ド根性ガエル」の主人公スタイルである。
しかしトンネルが連続するところでは面倒だ。
「便利なのは調光式レンズだよ」
明るいところで自然に色が濃くなる、あれである。ご存知の方も多いだろう。「ただし」と言って教えてくれたのは、
「紫外線を感じて反応するため、最近のUVカット加工された自動車ガラスを通すと、反応が鈍くなってしまうのも事実なんだ」とも指摘する。
なるほど。そこで「てっとり早いのは」とブルーノさんが薦めたのは、グラデーション付きである。レンズ上部が濃く、下に行くにしたがって薄くなっているものだ。最近リバイバルして人気のある元フィンガー5のアキラ氏が昔かけていたようなやつ、といえばおわかりいただけるだろうか。
「トンネルに入ったら、顎を少し上げて見下ろすようにするだけでいいからな」
なるほど、グラデーション付きはドライブにも有効だったのか。
リバイバルといえばここ数年はティアドロップ型、大矢アキオ流にいえばおむすび型のサングラスがイタリアでも流行している。
あれって、運転にはどうなんですか?
「大事なのはティアドロップ型に多いガラス製を避けることだな。ガラスはプラスチックに比べてキズがつきにくく、いつまでもきれいだ。でも衝突事故で割れた際に危険なんだ。とくに現在のクルマはエアバッグが作動する。圧迫されて割れることも考えないといかん」。
ブルーノさんによれば、国によってはガラス製レンズのメガネを着用して運転することは禁止されているという。
いやー、スタイルだけで選びがちなサングラスが、こんなに奥が深かったとは。
今回はサングラスのうんちくを、さまざまなキャラクターをまじえて紹介してきたが、史上最強の「おむすび型サングラス軍団」といえば、懐かしの刑事ドラマ「西部警察」の出演者たちであろう。なにかと危険な切迫シーンの多い皆さんだけに、「そのサングラスだいじょうぶですかぁ?」と声をかけてあげたくなった、お節介なワタシである。
(文と写真=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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