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【スペック】全長×全幅×全高=4460×1808×1280mm/ホイールベース=2355mm/車重=1395kg/駆動方式=RR/3.8リッター水平対向6DOHC24バルブ(435ps/7600rpm、43.8kgm/6250rpm)(欧州仕様車)

ポルシェ911 GT3(RR/6MT)【海外試乗記】

ぐっとフレンドリー 2009.07.02 試乗記 島下 泰久 ポルシェ911 GT3(RR/6MT)
911シリーズのNA最強モデル「GT3」がバージョンアップ。公道はもちろん、サーキットもステージとするスポーツカーは、どう進化したのか? 生まれ故郷のドイツで試乗した。
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直噴もPDKもないけれど……

ポルシェ911が、水冷の996型へと移行して約2年後。空冷時代のようなストイックでスパルタンな911への郷愁の声の高まりに応えるが如く世に出たのが、ポルシェ911 GT3である。あれから早10年。数度の進化を重ね、GT3としては4世代目のモデルがいよいよ登場した。

昨年のカレラシリーズの大幅な進化ぶりからすれば、新しいGT3にも同様の進化が期待されるのは無理もないだろう。しかしシュトゥットガルト近郊の街で対面した新型GT3には、新世代の直噴エンジンやPDKと呼ばれる7段デュアルクラッチギアボックスは搭載されていなかった。つまり単なるスキンチェンジ? いやいや、ポルシェがそんなことをするわけが無い。新型GT3は、パフォーマンスと日常性をともに引き上げた、期待に応えるモデルに仕上がっていた。

最大の目玉はエンジンだ。その排気量は先代の3.6から3.8リッターに拡大され、無段階バルブタイミング可変機構のバリオカムが、吸気側に加えて排気側にも搭載されている。結果として最高出力は20psプラスの435ps、最大トルクも2.5kgmプラスの43.8kgmにまで高められた。ちなみにエンジンブロックは新型ではなく、これまで同様の911 GT1用をルーツにもつM64型である。

トランスミッションは6段MTのみ。PDKは重量が嵩むからという説明もあったが、実際のところは、まだどれだけ需要があるか掴み切れていないということだろう。M64ユニットは寸法からなにから新世代ユニットとは違うため、カレラシリーズ用のPDKを持ってくれば簡単に付くというわけではないのだ。とはいえ、フェラーリもランボルギーニも、今やエボリューションモデルは2ペダルである。ニーズは必ずあるはずだ。あるいは客層は微妙に変化するかもしれないけれど。


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写真は無償オプションとなる「クラブスポーツパッケージ」装着車。シート表皮が難燃性素材となり、運転席シートベルトが6点式になるなど、サーキット走行を意識した装備が与えられる。なお、標準はレザーシート。
写真は無償オプションとなる「クラブスポーツパッケージ」装着車。シート表皮が難燃性素材となり、運転席シートベルトが6点式になるなど、サーキット走行を意識した装備が与えられる。なお、標準はレザーシート。 拡大
標準で2人乗りであるが、クラブスポーツパッケージを選ぶことで、運転席後方にボルト固定式のロールケージが張り巡らされる。
標準で2人乗りであるが、クラブスポーツパッケージを選ぶことで、運転席後方にボルト固定式のロールケージが張り巡らされる。 拡大
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振動を感じない

サスペンションの形式は変わらないが、当然、ファインチューニングの手は入れられている。目をひくのはセンターロックホイールの採用。これは4本で約3kgの軽量化に繋がるという。軽量化という意味では、ブレーキにも手が入れられ、またサスペンションも、やはり軽量な荒巻き形状とされている。

パワーが向上し、ロードホールディングも良くなった。ここまで見ただけでも、それは容易に想像できるところだが、実際に乗ってみるとそれだけには終わらなかった。一番の驚きは、実は快適性である。

エンジンをかけると、背後のフラット6は相変わらず迫力の咆哮を炸裂させる。しかし不思議なことに、今までは付き物だった振動がほとんど感じられない。そう思ったら、試乗車はオプションのPADM(ポルシェアクティブドライブトレインマウント)付きだった。電子制御の硬度可変エンジンマウントが、いざという時にはエンジンの動きをしっかり抑えつつも、普段は振動を逃がしてくれるのだ。

乗り心地も改善されている。バネ下が軽くなり、アシがスムーズに動くようになったことで、低速域でもゴツゴツとした感触が伝わってこないのである。

そうは言いつつも、もっとも力が入れられているのはやはり走りだ。動力性能は当然向上している。レブリミットが100rpm上の8500rpmに引き上げられたことにも感心させられるが、実際に恩恵が大きいのは中回転域のトルクアップだろう。4000rpmを境にスイッチが切り替わるように音が変わり、吹け上がりが一気にシャープになる、その感触は堪らない。

旧型オーナーが羨む装備

試乗日は週末で、アウトバーンの交通量は多く、速度無制限区間でも最高速は270km/hあたりまでしか試せなかった。この程度はGT3なら鼻唄まじり。追従性の増したサスペンション、そしてなんと、従来の2倍のダウンフォースを発生するという、空力パーツのおかげだ。

一方ワインディングロードでは、筆者の腕ぐらいでは限界を垣間見ることすら出来なかったというのが正直なところ。それでも、ようやくPSMが標準装備されたことで、攻めるのが心理的にだいぶ楽になったとは言える。公道では雨だって降る。まるでセミスリックのようなタイヤが標準のGT3だけに、この恩恵は計り知れないものがある。

公道といえば新型GT3には、これまたついにフロントの車高調整システムがオプションに加わった。世界のオーナーの約7割が、なんらかのかたちでサーキット走行を楽しんでいるというGT3だが、同時にほとんどのオーナーが普段は公道で乗っているだけに、すぐ擦ってしまうフロントスポイラーはずっと悩みの種だったのだ。ただし、前述のとおり空力をさらに追求した新型は、リップスポイラーがより前に突き出た感もあるから、どれほどの効果があるかは要検証だ。

この新しいGT3、日本での価格は1712万円と発表されている。快適性や使い勝手の面では10年でぐっとフレンドリーになった反面、10年前はカレラの300万円増しとなる1290万円だった価格は、さらに遠い存在になってしまった。ちょっと複雑な、しかしやっぱり惹かれてしまう、ポルシェのニューモデルである。

(文=島下泰久/写真=ポルシェ・ジャパン)


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センターロック式となったアルミホイール。オプションとなるPCCB(ポルシェ・セラミックコンポジット・ブレーキ)装着車は、ブレーキキャリパーが黄色く染められる。
センターロック式となったアルミホイール。オプションとなるPCCB(ポルシェ・セラミックコンポジット・ブレーキ)装着車は、ブレーキキャリパーが黄色く染められる。 拡大

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島下 泰久

島下 泰久

モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。

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