トヨタ・プリウス Gツーリングセレクション レザーパッケージ(FF/CVT)【試乗記】
売れるからにはワケがある 2009.06.24 試乗記 トヨタ・プリウス Gツーリングセレクション レザーパッケージ(FF/CVT)……349万6800円
不景気を吹き飛ばすほどの大ヒットが伝えられる「トヨタ・プリウス」。最新型ハイブリッドカーのもつ“商品力”とはいかなるものなのか、最上級グレードで検証してみた。
ハイブリッドもパワーの時代
新しいプリウスに新設された「PWR MODE」ボタンを押してスロットルペダルを踏み込むと、ちょっと驚く勢いで前へ飛び出す。「プリウス→ハイブリッド→エコ→草食系」といった月並みな先入観をもって全力加速に臨むと、まったく意外の感にうたれる。
1.8リッターに拡大したエンジンと、出力が上がったモーターとの組み合わせをもって、トヨタは新型プリウスを「2.4リッター並みの動力性能」と喧伝する。実際、電気モーターの助力を得て、極低回転域から野太いトルクを発生させての加速は、さもありなん、と納得させるものがある。
初代プリウスが、北米輸出にあたってエンジンとモーターのアウトプットを大幅に上げたのと同じく、どうもアメリカ人ほどは感心しなかったらしいヨーロッパのユーザーを振り向かせるべく、3代目プリウスは動力系を大いに強化して登場した。
“ハイブリッドを言い訳にしない”2代目に代替わりしてもなお、ハイブリッドの利点を活かしにくく、得手とは言いかねた高速巡航も、ニュープリウスは十二分にこなす。しっかりした乗り心地と直進性。ドライバーの溜飲を下げさせる追い越し加速。生まれたばかりのプリウスが、ときに高速道路で「亀マーク」を点灯させて失速したのは、いまとなっては懐かしい笑い話だ。
サマになった未来感
3代目プリウスのボディサイズは、全長×全幅×全高=4460×1745×1490mm。旧型(商用車版「EX」として販売は継続されるが)よりわずかに大きくなった。2700mmのホイールベースは同寸ながら、プラットフォームは「カローラ」系(プレミオ/アリオン)から、ヨーロッパ市場を睨んだ「オーリス」のそれに変更された。トレッドが、前1525mm、後1520mmと、それぞれ20mmと40mm拡大された。前マクファーソン・ストラット、後パッシブステア機能をもつトーションビームというサスペンション形式は変わらない。
真横から見て、三角形の頂点が後方に移り、サイドパネルがややデコラティブになったプリウスのドアを開けて、運転席へ。以前の型を知る人は、一様に「立派になったなぁ」と感じるであろうインパネまわり。アクア内装といい、ミディアムグレー内装といい、どこか不思議な色合いのパネルを使うのは、プリウスの伝統といえば伝統か。オーリスゆずりにダッシュボードから斜めに下る、フライングバットレス調のセンターコンソールが前席を左右に分かつ。ミニバン流の左右ウォークスルーを廃して、欧州で受け入れられやすいドライバーズカーを志向したのだろう。
ダッシュボードの葉脈を模したシボや、ドア内張の有機的な細かい縦線などは、シトロエンあたりのインテリアデザイナーが嫉妬しそうだ。“エコの表現”がだいぶこなれて、さりげなく独自性を主張する。青く短いトランスルーセントなシフトノブは、やりすぎの感なきにしもあらず、だが。
インストゥルメントパネル右端からセンター寄りに移されたスターターボタンを押してドライブを始めれば、最初の角を曲がる前に、そのしっとりした乗り心地に、再び「立派になったなぁ」と感じることだろう。スムーズな加速には磨きがかかり、減速時には電車のような音を発して、未来感をいや増す。
グレード選びは悩みのタネ
モーターとエンジンからのアウトプットを動力分割機構で自在に按配し、発電機とタイヤに振り分ける「THSII」の基本は変わらない。
「バッテリーのセル以外はすべて新しい」といわれるハイブリッドシステムのキモは、モーターと動力分割装置の間に噛まされたリダクションギアである。モーター単体の最大トルクは、先代の40.8kgmから21.1kgmに細くなっているが、一方、最高出力は68psから82psに上がっている。小型化したモーターは、大きなトルクを発生するには不利だが、そのかわり高回転化できる。そして、その名のとおりリダクションギアで減速してトルクを増幅させているわけだ。大柄のSUV、ハリアーハイブリッド、クルーガーハイブリッドを過不足なく動かすために使われた仕組みを、新型プリウスではシステムの小型化のために活用した。今後は、より小さいモデルにもTHSIIが搭載されるはずだ。
そんなプリウスのグレード構成は、高いほうから「G」「S」「L」。205万の価格、0.25のCd値、38.0km/リッターの10・15モード燃費……は、いずれもベーシックグレード「L」の数値で、車重が40kg重くなる「G」と「S」は、カタログ燃費35.5km/リッターに悪化する。
では、ユーザーは「L」に殺到するかというと、しかし「L」の装備は貧弱にすぎる、と感じる人が多いだろう。フォグランプも後席肘かけも前席シートバックポケットも備わらず、それはまあ……と我慢しても、リアワイパーもリアバンパースポイラーも備わらず、それもまあ……と我慢しても、ドライバーズシートの上下調整も純正ナビゲーションシステムもアクア内装も用意されない。
カバーできる装備は社外品で……と検討して車両価格に加算していくと、結局は最初から装備される「S」(220万円から)を買ったほうがお得ということになる。「いまなら自動車重量税も自動車所得税も減税ならぬ免税、つまり0円ですから……」というセールスパースンのささやきも「L」から「S」へのアップグレードを後押しすることでしょう。
上級版「G」と中堅「S」には、インチアップならぬ2インチアップの17インチを履く「ツーリング」も用意される。コチラには、停車時に車内の空気を換気する機能をもつ「ソーラーパネル付きムーンルーフ」は装着できない。“走り”系のモデルなので、重量物を高い位置に置きたくないからだ。クラウン、マークXなどからのダウンサイジング組みには、革シートが奢られた「Gツーリング・セレクション・レザーパッケージ」もある。
受注殺到ゆえ、2009年6月の時点で納車は7から8カ月待ちだそう。気になるお値引きは、「車両本体もしくは付属品のいずれかから3万円引き」というのが標準的なところらしい。
(文=『NAVI』青木禎之/写真=峰昌宏)
拡大
|
拡大
|
|

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】 2026.7.18 ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。
-
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】 2026.7.17 「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。
-
フェラーリ849テスタロッサ スパイダー(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.7.15 歴史ある車名が与えられた「フェラーリ849テスタロッサ」は、従来型から大幅な進化をとげた高性能スポーツカーだ。では、そのオープントップバージョンの走りはどうか? 日本での発売を前に、フェラーリ通として知られる西川 淳が試乗した。
-
ポルシェ・カイエン ターボ エレクトリック(4WD)【試乗記】 2026.7.15 ポルシェ最新の電動ハイパフォーマンスSUV「カイエン エレクトリック」。そのラインナップのなかでも、最高峰に位置するのが「カイエン ターボ エレクトリック」だ。最高出力1156PS、最大トルク1500N・mという、とてつもないパフォーマンスの一端に触れた。
-
プジョー308 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.7.14 マイナーチェンジで内外装がブラッシュアップされた「プジョー308 GTハイブリッド」に試乗。大胆なデザインのフロントフェイスに目を奪われるが、ステランティス自慢の1.2リッター直3マイルドハイブリッドを搭載する最新モデルの仕上がりと走りやいかに。
-
NEW
第340回:一にエンジン、二にカッコ
2026.7.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。マツダ渾身(こんしん)のラージ商品群を応援するカーマニアのひとりとして、「CX-60」と「CX-80」の動向は常に気になっている。3列シートSUV、CX-80の最新モデルにあらためて試乗して感じたこととは? -
NEW
日産は“再挑戦”でホンダは“終了” 新型「エルグランド」発売に見る、プレミアムミニバンの今
2026.7.20デイリーコラムトヨタが圧倒的なシェアを占める上級ミニバンの世界において、新型「エルグランド」で復権をねらう日産。しかし、なぜフルモデルチェンジは16年ぶりになったのか? ホンダはどうするのか? この市場の今を考察する。 -
NEW
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】
2026.7.20試乗記3000台の限定で販売される新型「インサイト」は、クロスオーバー風のフォルムと、これまでのホンダ車にはなかった内外装のデザインテイストが新鮮だ。中国で生産され、日本独自の名前が与えられた新型電気自動車の走りと仕上がりを、ロングドライブで確かめた。 -
ポルシェ911カレラT(後編)
2026.7.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルとSTIでクルマの走りを鍛え、モータースポーツにも積極的に取り組んできた辰己英治さん。彼の目に、“スポーツカーの水準器”こと「ポルシェ911」はどのように映ったのだろう? 走りの楽しさを追求した「カレラT」グレードに乗っての印象を聞いた。 -
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。





























