トヨタ・プリウスZ(FF/CVT)/ホンダ・シビックe:HEV(FF)
がっぷり四つ! 2024.02.05 試乗記 ここにある「トヨタ・プリウス」は総額404万4300円、一方の「ホンダ・シビックe:HEV」は408万8700円。つまりプリウスとシビックは日本のハイブリッド車の両雄であるとともに、価格的にもまともに競合するライバルなのだ。直接対決で白黒つけさせてもらいます!固定観念を破壊するハイブリッドカー
内燃エンジンにこだわるカーマニアでも、足グルマとしてハイブリッドカーを使い倒す者は少なくない。いや、現在ハイブリッドカーは多様化し、趣味車として十分通用するモデルも登場している。実用性と趣味性の両立だ。スバラシイじゃないか!
かくいう私は、かつて2台のハイブリッドカーを乗り継ぎ、その奥深さを味わった。当時はまだハイブリッドカーは「節約のためのつまんないクルマ」という認識が根強かったが、あのころすでにハイブリッドカーには、内燃エンジン車を「単細胞」と言い放てるくらいの趣味性があったと考えている。
ただし、ハイブリッドカーにも弱点がある。ほとんどの場合、エンジンが眠いのである。なにしろ燃費が第一義なだけに、高回転までブチ回して気持ちイ~! なんてセッティングがあるわけなく、仕様のない仕儀であった。
ところが、その固定観念をブッ壊すクルマが現れた。シビックe:HEVだ。
このクルマ、基本的にモーター駆動で走る。つまり新開発の2リッター直噴4気筒エンジンは発電機であるにもかかわらず、スポーツモードでアクセルを床まで踏みつけると、「クワアアアアアアアア~~~ン」というホンダVTECサウンドが鳴り響く(スピーカーによる増幅ですが)。しかもステップ変速までやってくれるので(疑似ですが)、回転の上昇(=絶頂)が何度も味わえる。こんなハイブリッドカーが出るなんて信じられん! これぞ燃費とフェラーリ的快楽の両立! プラス、EV的な出足のよさも兼ね備えている! 最高だぜ!
私はシビックe:HEVの大ファンとなり、応援団となった。このクルマには、カーマニアなら誰もがうなる趣味性がある。「シビック タイプR」に群がる単細胞たちに教えてやりたいゼ!
ひと目で雷に打たれた新型プリウス
そこにライバルが現れた。新型プリウスだ。
プリウスはいったんその使命を終えたことによって、大胆にリボーンすることができた。信じ難いことに、スーパーカールックに生まれ変わったのである。ハイブリッドシステムも、ある程度燃費を捨てて走りを優先したセッティングとなった。もう燃費バカじゃない(バカは偉大ナリ)。
とにかくスタイリングがスゴい。フロントウィンドウの傾斜角は「ランボルギーニ・カウンタック」とほぼ同じ。わが「フェラーリ328GTS」よりはるかに寝ている。文字どおりスーパーカーも真っ青だ。トヨタはここまでやるのか! お見それしました! 私はひと目見て雷に打たれ、新型プリウスが大好きになった。
今回は、ハイブリッド界の龍虎、シビックe:HEVとプリウスを、カーマニア視点でガチ比較させていただく所存である。
この2台、前述のようにカーマニア的にはハイブリッド界の龍虎であり、星飛雄馬対花形 満の如き宿命のライバルだが、売れ行きにはすさまじい差がある。2023年1月~11月の販売台数は、シビックが1万2596台に対してプリウスが8万4229台。しかもシビックは1.5ターボとタイプRを含めての数字なので、e:HEVはこの半分以下。プリウスとは10倍以上の差になる。新型プリウスオーナーの多くは、シビックe:HEVの存在すら知らないかもしれない。大メジャー対どマイナーだ。そもそもシビックで一番売れているのがタイプRだなんて狂ってる! おそるべしタイプR人気。
シビックに漂うエリートの香り
狂っているが、真性のカーマニアには人気など関係ない。重要なのはどっちがカッコいいか、どっちが楽しいか、そしてどっちが燃費がいいかだ。個人的には、低燃費の快楽は大パワーエンジンの快楽と同レベルと考えている。だから私は、フェラーリやランボルギーニとハイブリッドカーの組み合わせを愛してきた。
前置きが長くなりましたが、ようやく本題です。ハイブリッド界の龍虎対決開始! まずはスタイリングから。クルマはカッコが命だから!
シビックは、端正でスポーティーなファストバックセダン。正確には5ドアハッチバックだが、ラゲッジの開き方はどうにでもなる世の中なので、「端正でスポーティーなファストバックセダン」ということにさせてください。
シビックの端正かつスポーティーなイメージは、まず水平基調のウエストラインから発せられる。そこに、比較的直立したフロントウィンドウと、なだらかに寝たスタイリッシュなリアピラーがハーモニーを奏で、ノーズとテールは比較的スパッと直線的に切られている。タイヤはフェンダーとツライチに近く、大地をしっかり踏みしめる。教科書のようなヨーロピアンスポーツセダンのルックスだ。このシルエットは「BMW 4シリーズ グランクーペ」に近い。ただし駆動方式が違うので前後オーバーハングの長さが逆。よって「アウディA5スポーツバック」といってもいい。まぁどっちとも違うけど、足して2で割るとシビックに近くなる気もする。つまりエリートが乗るクルマだ。シビックにはエリートの香りがある!
無理してないか?
対するプリウスは、前述のように、パッと見スーパーカーみたいだ。とにかくフロントウィンドウの傾斜角がスゴい。しかもカウンタックのように、ボンネットと一直線(に近い)。さすがに一直線じゃないけれど。とにかくそこに目を奪われる。
ただし、よく見るとこのシルエット、3代目プリウスの変化形だ。3代目プリウスのノーズを長くして、フロントウィンドウを寝かせて、全高を低くして全長を長くして全幅を拡大すると5代目になる。3代目に比べると全高は60mm低い1430mmなので、それだけでイメージ的には全然違って見えるが、実はシビックの全高(1415mm)のほうがわずかに低い! スーパーカールックのプリウスよりも、端正なスポーティーセダンのシビックのほうが全高が低いとはこれいかに?
プリウスのスーパーカールックは、ある意味「見せかけ」なのである。本物のスーパーカーはもっとぜんっぜん全高が低い。「カウンタックLP400」は1070mm。成人男性のベルトの位置より低い。それに比べるとプリウスはものすごく背が高い。ルーフ側のシルエットは確かにスーパーカーなんだけど、その下側がとってもぶ厚くなっている。
いやもちろん、プリウスの全高が1070mmしかなかったら、実用性はゼロになる。それはイカン。なので1430mmでいいのですが、目が慣れてくると、「やたらフロントウィンドウが寝た普通のクルマ」にも見える。ずいぶん無理してるなぁと感じはじめる。
その点シビックは、端正でスポーティーなファストバックセダンという伝統芸能のなかで生きているので、無理してる感はゼロ。素でカッコいい、生まれながらのエリートだ。無理してカッコ付けてるプリウスとどっちがいいか? と問われれば、それは人それぞれですが、私はシビックに軍配を上げる!
(バトルは後編に続きます)
(文=清水草一/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
トヨタ・プリウスZ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4600×1780×1430mm
ホイールベース:2750mm
車重:1440kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:152PS(112kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:188N・m(19.2kgf・m)/4400-5200rpm
モーター最高出力:113PS(83kW)
モーター最大トルク:206N・m(21.0kgf・m)
システム最高出力:196PS(144kW)
タイヤ:(前)195/50R19 88H/(後)195/50R19 88H(ヨコハマ・ブルーアースGT)
燃費:28.6km/リッター(WLTCモード)
価格:370万円/テスト車:404万4300円
オプション装備:パノラマルーフ<手動サンシェード付き>(13万2000円)/ITS Connect(2万7500円)/デジタルインナーミラー&デジタルインナーミラー用カメラ洗浄機能&周辺車両接近時サポート<録画機能>&ドライブレコーダー<前後>(8万9100円)/コネクティッドナビ対応ディスプレイオーディオPlus<車載ナビ、FM多重VICS、12.3インチHDディスプレイ、AM/FMチューナー、フルセグテレビ、USBタイプC、スマートフォン連携、マイカーサーチ、ヘルプネット、eケア、マイセッティング、BlueTooth対応>(6万1600円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ラグジュアリータイプ>(3万4100円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:6945km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:290.9km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:19.6km/リッター(車載燃費計計測値)
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ホンダ・シビックe:HEV
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4550×1800×1415mm
ホイールベース:2735mm
車重:1460kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:141PS(104kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:182N・m(18.6kgf・m)/4500pm
モーター最高出力:184PS(135kW)/5000-6000rpm
モーター最大トルク:315N・m(32.1kgf・m)/0-2000rpm
タイヤ:(前)235/40ZR18 95Y XL/(後)235/40ZR18 95Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツ4)
燃費:24.2km/リッター(WLTCモード)
価格:394万0200円/テスト車=408万8700円
オプション装備:ボディーカラー<プラチナホワイト・パール>(6万0500円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー<DRH-204WD>(3万9600円)/フロアカーペットマット<プレミアムタイプ[ブラック]フロント・リアセット e:HEV用>(4万8400円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1万2580km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:255.2km
使用燃料:15.9リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:16.0km/リッター(満タン法)/17.4km/リッター(車載燃費計計測値)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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