メルセデス・ベンツE350アバンギャルド(FR/7AT)/E550アバンギャルド(FR/7AT)【試乗速報】
“エコ”だけじゃ足りない 2009.06.19 試乗記 メルセデス・ベンツE350アバンギャルド(FR/7AT)/E550アバンギャルド(FR/7AT)……902.5万円/1099.5万円
クルマには、環境と同じぐらい大切なことがある! メルセデス・ベンツの新型Eクラスに乗って、そんなことを考えた。
硬派の雰囲気、復活
熱しやすく冷めやすいというのは自分の数ある欠点のひとつで、環境が話題になると「エコだエコだ〜」と、頭の中が“エコだ祭り”になってしまう。けれどもメルセデス・ベンツの「新型Eクラス」に試乗して思い知ったのが、「クルマはエコのみで走るにあらず」ということだ。「新型Eクラス」に搭載された最新の安全装備にふれると、環境性能とともに安全性能もクルマの両輪だということがよ〜くわかる。
たとえCO2の排出量がゼロであっても、事故で大切な人を失ってしまったり、あるいはだれかを傷つけることになったら……。あたりまえと言えばあたりまえだけれど、「新型Eクラス」に乗っているとそんなことを考える。昔はベンツの説教臭いところがイヤだったけれど、齢を重ねるとともに叱ってくれる人も少なくなった。だから「新型Eクラス」の説教が、ちょっと嬉しい。
安全装備をはじめとするインプレッションの前に、7年振りにモデルチェンジを受けた「Eクラス」の概容をざっくりと。まず、ボディサイズはほんの少し拡大した。幅が3cm以上広くなったことは、とくに市街地での取り回しに影響しそうだ。数値だけ見ると全高が15mm低くなっているけれど、これはルーフアンテナの長さの問題で、実際の高さは従来型とほぼ一緒。クルマの基本となるプラットフォームは一新されている。
アグレッシブになったフロントマスクは好き嫌いがわかれるだろう。「V字」をモチーフにしたフロントグリル、ボディサイドを右肩上がりに駆け上がるキャラクターライン、シンプルなリアビューなど、ボディのいたるところがカクカクしている。直線基調の、はっきりと男っぽいデザインで、押し出しも強くなった。なんとなく、W124型の頃を思い出す。個人的には、過去2モデルにわたって採用された丸目の顔のほうがエバっていない感じで好みだ。
飛ばすほどになじむ足まわり
まずは5.5リッターV8エンジン搭載の「E550アバンギャルド」に乗り込む。ひとまわりサイズを拡大したゆったりとした掛け心地のシートに収まると、シートベルトが最適な位置にまできゅきゅっと巻き上がる。周囲を見まわすと、インテリアの眺めがすっきりしたことに気付く。理由は、シフトセレクターがステアリングホイール根元から生えるダイレクトセレクトに変更されたから。「Sクラス」ではすでにおなじみのこのインターフェイス、慣れればステアリングホイールから手を離さずに操作できてなかなか具合がいい。
インパネの意匠も変更された。先代「Eクラス」は、3つのメーターとLEDの棒グラフ2本というチャレンジングな構成だったけれど、新型は普通に5つのメーター。眼前の眺めがクラシカルになった。ステアリングコラム右側で銀色に輝くスターターボタンを押し込んでエンジン始動。市街地に足を踏み入れると、意外に乗り心地がごつごつする。
「E550アバンギャルド」には電子制御式のエアサス「AIRマティックサスペンション」と、前245/40R18、後265/35R18というスポーティなタイヤを履くAMGスポーツパッケージが標準装備される。この組み合わせは、かなり高い速度域を想定している模様。街中での印象は芳しくなかったものの、高速道路で速度を上げるほどに乗り心地はしなやかになり、安定感も増す。
しかもただのハイウェイクルーザーではない。切れ味の鋭いV8エンジン、敏感かつスムーズな7段AT「7Gトロニック」、そして爽やかな手応えのパワーステアリングによって、単調になりがちなハイウェイでのドライブも楽しい。このパワステは優秀で、状況に応じてアシスト量を調整するとともに、舵角によってギア比も変化する。小回りが利いたり、どしっと安定したり、かなりの芸達者だ。そして、この後で乗った「E350アバンギャルド」は、さらに好印象だった。
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フィギュアの選手のようなコーナリング
「E350アバンギャルド」に乗り換えた瞬間、クルマが一気に軽くなったような錯覚に陥る。実際の車重は160kgほど軽くなったに過ぎないけれど、乗り心地がふわっと軽く、しかも角が取れている。これはいい。少なくともタウンスピードでの乗り心地は、明らかに「E550アバンギャルド」より上質。超高速域では話は別かもしれないけれど、日本で乗るなら「E350」だ。
3.5リッターV6が生み出す、272psの最高出力と35.7kgmの最大トルクも十分以上。5.5リッターV8のワイルドさはない代わりに、静かで滑らかな品のよさがある。効率のいい7段ATとの組み合わせでするすると速度を上げるあたり、知的な雰囲気さえ漂う。
ワインディングロードに持ち込むと、「E350アバンギャルド」は大人のふるまいを見せた。きゃんきゃん曲がるわけではないけれど、適度なロールを伴いながらエレガントなコーナリングを見せる。ミドシップやFRのライトウェイトスポーツがショートトラックのスケート選手だとすれば、「E350」はフィギュアスケートの選手だ。
ガンガン踏んでも弱音を吐かないブレーキ、自在に伸び縮みすることで悪路もいとわないサスペンション、がっちりしたボディ。そういったたくましさは、従来のメルセデスの文法通り。そこに質の高いファン・トゥ・ドライブが加わった。メルセデス・ベンツ日本は、新型「Eクラス」の顧客の40%を従来型からの乗り換えと想定しているが、乗り換えた方の多くはきっと納得すると思う。また、従来型の顧客平均年齢は56歳だったというけれど、アグレッシブなルックス、軽やかなフィーリングから、ユーザー層はもう少し若くなってもいいかもしれない。
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高級車の矜持
最後になってしまったけれど、新型「Eクラス」の安全装備にふれたい。試乗した「E350アバンギャルド」にはオプションの「レーンキーピングアシスト」が装備されていた。これは、フロントウィンドウに備わるカメラが車線の逸脱を検知すると、ステアリングホイールに「コンコン」という振動が伝わる仕組みだ。他メーカーも採用しているけれど、特筆すべきは介入が自然な点だ。意図したレーンチェンジには反応せず、「コンコン」というショックの大きさやタイミングも完璧。
標準装備される「アテンションアシスト」とは、簡単に言えば「居眠り防止装置」。80km/h以上での走行時に、注意力低下の兆候が見られるとドライバーに注意を促す仕組みだ。特に居眠りの兆候が顕著に表れるステアリングホイールをはじめ、70項目以上のパラメーターで判断する。試しにステアリングホイールを小刻みに左右に振ってみると、「なるほど」と思えるタイミングで警告を受けた。
上記ふたつの安全装置が違和感なく作動するのは、膨大なテストのたまものだろう。これ以外にも、ヘッドライトのロービームとハイビームを連続的に切り替える「アダプティブハイビームアシスト」や、ボンネット後部を持ち上げることで変形ゾーンを確保して歩行者を保護する「アクティブボンネット」など、安全に対する取り組みは常に進化を続けている。
「こんなご時世に高級車なんて」と、考える人がいることはしょうがない。けれども、プレミアムブランドだからこそ、コストをかけた安全技術を搭載できるという側面もあるはず。新型「Eクラス」は、クルマとしての完成度も高い。同時に、自動車全体の安全技術を底上げしている点でも大したものだと思う。
(文=サトータケシ/写真=郡大二郎)
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サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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