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第95回:祝! 「アルト」30周年&1000万台達成 スズキのものづくりを学びに「スズキ歴史館」へ(後編)

2009.06.11 エディターから一言 田沼 哲
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第95回:祝! 「アルト」30周年&1000万台達成スズキのものづくりを学びに「スズキ歴史館」へ(後編)

「アルト」47万円!

ワ:さて、今日のいっぽうの主役でもある初代「アルト」です。(編集部注=取材当日はアルト誕生30年および世界累計販売台数1000万台達成を記念したセレモニーも行われた)
た:これは鈴木修会長兼社長が社長就任後の1979年に発売され、爆発的にヒットしたんだ。
ワ:47万円という価格が衝撃的だったそうですが、そんなに安かったんですか?
た:安かった。45万円を目標にギリギリまでコストダウンしたそうだけど、物品税のかからない商用車登録、いわゆるボンバン(ボンネット・バン)にしたことも大きかった。基本構造を共有する乗用車登録のフロンテだと、最廉価グレードでも約10万円高かったから。
ワ:なるほど。

た:低価格に加えて全国統一価格というのも画期的だったんだ。それまでは工場から離れるに従って価格が高くなっていたから、全国ネットのCMでは価格を正面切って訴求できなかったんだよ。そこいくと、アルトのデビュー時のキャッチフレーズは「アルト47万円」だから。

ワ:そのものズバリですね。
た:アルトのヒットを見て、他社も続々と商用車登録の低価格モデルを出してきた。おかげで70年代初頭をピークにどんどん冷え込んでいた軽市場が、再び上昇に転じた。アルトは単なるヒット作には留まらず、軽自動車全体の復権に貢献したんだ。
ワ:えらいぞ、アルト! 

た:こっちには2代目アルトがある。言っとくけど、ダジャレのつもりじゃないからね。
ワ:はいはい、わかってますから。え〜と、これは「麻美スペシャル」だって。
た:残念! 「麻美フェミナ」が見たかった。
ワ:どう違うんですか?
た:どっちも特別仕様車なんだけど、「麻美フェミナ」は白とピンクのツートーンなんだよ。ちょっぴりクレージュ風の(笑)。しかし、軽自動車のイメージキャラクターに「アンニュイないい女」という雰囲気で売ってた小林麻美を起用するなんて、ありえないと思ったけどなあ。
ワ:3代目アルトの浅香唯とか井森美幸、5代目のキョンキョン(小泉今日子)あたりなら、なんとなくわかりますけどね。
た:だよなあ。でも、小林麻美は死んでも軽には乗りそうにないじゃない? とはいえ世間ではウケたんだろうなあ。

ワ:それはともかくとして、3代目アルトにはこんなのがあったんですね。知らなかった。
た:左右ドアをスライド式にした「スライドスリムIb」か。2代目アルトから採用された回転式ドライバーシートと併せて乗降性を高めていたのだが、傾斜地での開閉に難があるとされて販売は奮わず、一代限りで消滅してしまったんだ。
ワ:そうか、電動ドアじゃなかったんですね。アイディアはよかったのに、なんだかかわいそう。

徹底的にコストダウンして47万円という低価格を実現した「アルト」(1979年)。メカニズムも一新され、12年ぶりにRRからFFに戻り、539cc水冷2ストローク3気筒(28ps)エンジンで前輪を駆動する。朱色のボディカラーは、鮮やかな赤より塗料のコストが安かったため採用されたと言われている。
徹底的にコストダウンして47万円という低価格を実現した「アルト」(1979年)。メカニズムも一新され、12年ぶりにRRからFFに戻り、539cc水冷2ストローク3気筒(28ps)エンジンで前輪を駆動する。朱色のボディカラーは、鮮やかな赤より塗料のコストが安かったため採用されたと言われている。 拡大
背景には当時の家電など、価格比較の対象となるモノがあれこれ展示されている。
背景には当時の家電など、価格比較の対象となるモノがあれこれ展示されている。 拡大
2代目「アルト」の特別仕様車「麻美スペシャル」(1985)。「アルトAタイプ」をベースに、エアコンや熱線入りリアウィンドウなどを標準装備。エンジンは543cc水冷4ストローク3気筒SOHC(31ps)。
2代目「アルト」の特別仕様車「麻美スペシャル」(1985)。「アルトAタイプ」をベースに、エアコンや熱線入りリアウィンドウなどを標準装備。エンジンは543cc水冷4ストローク3気筒SOHC(31ps)。 拡大
3代目「アルト」にラインナップされた「スライドスリムlb」(1988年)。先代以来の回転式ドライバーズシートも装備されている。
3代目「アルト」にラインナップされた「スライドスリムlb」(1988年)。先代以来の回転式ドライバーズシートも装備されている。 拡大

記憶に新しい80年代

た:おっ、3代目「セルボ」がある。これはかなりレアだよ。
ワ:「セルボ」はもちろん知ってるけど、こんなの見たことないなあ。
た:これは歴代セルボのなかで、いやおそらく史上唯一の商用車登録のスペシャルティカーなんだよ。
ワ:というと?
た:初代および2代目セルボはクーペだったんだけど、この3代目は初代アルトから始まった税金の安いボンバン、つまり商用車登録にしたんだ。
ワ:乗用車登録とはどう違うんですか?
た:荷室のスペースに加えて、テールゲートの開口部の面積も確保しなきゃいけないから、クーペスタイルにはできない。だからちょっと不思議なカッコをしてるんだ。

ワ:不思議といえば、これもちょっと変わってますね。
た:「マー坊」こと「マイティボーイ」だね。
ワ:マー坊?
た:デビュー時のテレビCMで「スズキのマー坊とでも呼んでくれ」って言ってたんだ。2代目セルボをベースに、センターピラーから後方のルーフを切り取って荷台にしたミニ・ピックアップ。
ワ:ふ〜ん、そうなんだ。こっちにある「カプチーノ」は今でもときどき見ますね。
た:根強いファンがいるから。「平成ABCトリオ」と呼ばれていた軽スポーツカー「マツダ・オートザムAZ-1」「ホンダ・ビート」、そして「スズキ・カプチーノ」。この中では、俺も「カプチーノ」がいちばん好きだな。
ワ:好き嫌いでいうなら、私は「ツイン」が今でも好き。復活しないかな。できればもっと値段を安くして。
た:無茶言うなよ。「ツイン」の最廉価グレードは49万円だったんだから!
ワ:それはガソリン車でしょ? 私が欲しいのは、ハイブリッドのほう。

た:ああ、そうか。さてと、まだまだ紹介したいクルマはあるけど、今日のところはそろそろお開きにしない?
ワ:そうですね。じゃあここからは、読者のみなさんへのお知らせ。
「スズキ歴史館」には、二輪が80台、四輪が45台、そしてスズキのルーツである自動織機や船外機なども展示されています。
た:そのほかスズキの現行モデルを展示したフロアや、開発から生産まで四輪車の製造工程を紹介した、主に小学生の社会科見学向けのフロアもあります。
ワ:入場は無料ですが、完全予約制となっています。問合せ、申込みは、別掲の連絡先まで。ということで、読者のみなさん、ご精読ありがとうございました!

(文と写真=田沼 哲、webCGワタナベ)

スズキ歴史館ホームページ
http://www.suzuki-rekishikan.jp/

グラスルーフを備えた世にも珍しい4ナンバーの商用車登録のスペシャルティカーである3代目「セルボ」(1988年)。エンジンは、547cc水冷4ストローク3気筒SOHC12バルブ(40ps)で、FFのほか4WDも設定されていた。
グラスルーフを備えた世にも珍しい4ナンバーの商用車登録のスペシャルティカーである3代目「セルボ」(1988年)。エンジンは、547cc水冷4ストローク3気筒SOHC12バルブ(40ps)で、FFのほか4WDも設定されていた。 拡大
2代目「セルボ」から派生したミニ・ピックアップの「マイティボーイ」(1983年)。ルーフのように見えるのは、サイド部分のみの「デッキカバー」と呼ばれるもの。45万円という低価格だった。
2代目「セルボ」から派生したミニ・ピックアップの「マイティボーイ」(1983年)。ルーフのように見えるのは、サイド部分のみの「デッキカバー」と呼ばれるもの。45万円という低価格だった。 拡大
1991年に発売された「カプチーノ」。ボンネットやトップにアルミパネルを採用、軽自動車初の4輪ダブルウィッシュボーンサスペンション、4輪ディスクブレーキという凝った設計で、フロントミドシップされたエンジンは、657cc水冷直3DOHC12バルブターボ(64ps)。価格は145万8000円と高価だった。
1991年に発売された「カプチーノ」。ボンネットやトップにアルミパネルを採用、軽自動車初の4輪ダブルウィッシュボーンサスペンション、4輪ディスクブレーキという凝った設計で、フロントミドシップされたエンジンは、657cc水冷直3DOHC12バルブターボ(64ps)。価格は145万8000円と高価だった。 拡大
ホイールベース1800mm、全長2735mmという超コンパクトな2座シティコミューターとして、2003年に発売された「ツイン」。リッターあたり34kmという低燃費を誇る、軽自動車初のハイブリッド仕様も設定されていたが、価格は廉価版で129万円とガソリン車の倍以上だった。
ホイールベース1800mm、全長2735mmという超コンパクトな2座シティコミューターとして、2003年に発売された「ツイン」。リッターあたり34kmという低燃費を誇る、軽自動車初のハイブリッド仕様も設定されていたが、価格は廉価版で129万円とガソリン車の倍以上だった。 拡大
田沼 哲

田沼 哲

NAVI(エンスー新聞)でもお馴染みの自動車風俗ライター(エッチな風俗ではない)。 クルマのみならず、昭和30~40年代の映画、音楽にも詳しい。

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