スバル・インプレッサ WRX STI A-Line(4WD/5AT)【ブリーフテスト】
スバル・インプレッサ WRX STI A-Line(4WD/5AT) 2009.06.09 試乗記 ……382万2000円総合評価……★★★★
高性能をもっと気軽に――そんなファンの声に応えたという、AT版の「WRX STI」。走りや乗り心地の“実際”をリポートする。
親しみやすい「能ある鷹」
レース競技やスポーツ走行を楽しむために、絶対的な性能を求めるユーザーには邪道? かもしれないが、バリバリ硬派なクルマを片手片足でラクラク操作で乗るという商品企画は、アリだと思う。今回の「インプレッサ WRX STI A-Line」は、そんな目的のユーザーにとっては★5つのクルマだろう。
しかしそうであるならば余計に、ごく日常の運転状況における乗り心地を考えたいところ。すなわちフラット感や、G的な突き上げ緩和を求めたい。微小ストローク域だけでも、いっそうの快適化を望みたい。
逆に、そうした「荒さ」こそこのモデルに求めたいとする人もいるだろう。
つまり、自分ではそんな野蛮な運転はしないが「やればできるんだろうな……」という想像の世界を思い描く人には、ぴったりなモデルなのだ。細かい評価は後述するが、高性能車をお手軽にというコンセプトが達成されているのは間違いない。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「WRX STI A-Line」は、ハイパフォーマンスモデル「WRX STI 」をベースに、より大きな排気量の水平対向エンジンとオートマチックギアボックスを組み合わせたモデルである。
すなわち、エクステリアやシャシーはMTモデルと共通で、2006年と2008年の「エンジン・オブ・ザ・イヤー」を獲得した2.5リッターターボユニットを搭載。これにATを組み合わせることで、「もっと気軽に乗りたい」という市場の声に応えた。
肝心の5段ATは、A-Line用にチューニングを施したもので、スムーズな変速を実現する「ダウンシフトブリッピングコントロール」(回転数同期制御)を備える。パドルシフトや、走行シーンに合わせてボタン操作でエンジン特性を変えられる「SI-DRIVE」も標準装備。4WDシステムは、電子制御式の「VTD-AWD」を採用。0-100km/hの加速タイムは6MTモデルの「WRX STI」には及ばないものの、スバルのATモデル最速を謳う。
インテリアもより落ち着いた仕様となっており、運転席は8ウェイのパワーシート。表皮はファブリックと合成皮革のコンビのほか、フルレザーもメーカーオプションで用意される。クルーズコントロールが標準で備わるのもA-Lineならではのポイントだ。
(グレード概要)
オートマモデル「WRX STI A-Line」の価格は、MTの「WRX STI」より53万5500円安く設定されている(315万円)。
これにメーカーオプション「プレミアムパッケージ」を加えたのが今回の試乗車で、BBS製18インチアルミホイール、本革シート、シートヒーターなどがセットになっている。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★★
計器類は大きくて見やすいが、高性能車らしい特別な配慮には乏しい。せめて油圧油温計くらいは欲しい。オーディオ/ナビ関連と空調関連は完全に独立しており、スイッチは大きめで操作しやすい。ATのシフトパドルは定位置に固定式。レバーは長めで操作性は良好だ。操作系がいつも同じ場所にあるのは安心できる。インストゥルメントパネルそのものの材質や処理などに高級感はないが、その簡素なたたずまいはかえって高性能なクルマっぽくもある。
(前席)……★★★★★
シートはスッポリ納まるタイプでヤル気をそそる。乗降性に考慮してか、サイドの盛り上がり等はひかえめだ。シフトレバーによるシーケンシャルシフトも可能。+−のモードは、手前側(右側)にあるこのクルマのタイプが使いやすい。
走行モードを選べるご自慢の「SI-DRIVE」スイッチはこのクルマの象徴ともいえる機能。日常走行用の「I」モードがボタンをワンプッシュするだけで選べるのがいい。スポーティな「S」「S♯」モードは回すという特別な操作を要求することで、ドライバーの意識を分かつ。サイドブレーキはやはりレバー式が一番と思わせるもの。位置もいいし強力で使いやすい。
(後席)……★★★★
シートそのものは座面の前後長がやや短めながら、後席そのものの空間的な余裕はタップリしており、フォルクスワーゲン・ゴルフの後席より広々としている。ワゴンとハッチバックの中間的なボディ形体はスタイリッシュでもあり、実質的にも有効に使える。ただし乗り心地としてはやや上下動が気になり、G的にはスパルタンなスポーツカーや競技車両のレベルにある。前席は少しマシとはいえ、ファミリーユースには少々キツいかもしれない。
(荷室)……★★★★
車検証の分類上はステーションワゴンであり、荷室のフロア面積などもそれなりに確保されている。ルーフも高めで天地の寸法は大きい。積める荷物の絶対値は、リアウィンドウの傾斜との兼ね合い次第ということになる。特別にデリケートな精密機械を運ぶのでもなければビジネス用としての積載能力は十分にありそうだ。想定されるユーザー層の一部にはそんな使い方をする人がいても不思議ではない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
ホモロゲ用の2リッターユニットと異なり、2.5リッターへと排気量を増やしてオートマチックトランスミッションと組み合わせたこのクルマのチューンは、その目的に合った乗り味を享受することができる。タコメーターなど見なくても、ただ単純にスロットルを開けるだけで強烈なパフォーマンスが体感できる。挙動はスムーズで、外観を見ただけではAT車であることを悟られることもない。速度オーバーにはご注意を。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
唯一評価が分かれる項目だろう。オーバーフェンダーによる外観の凄味や排気音が少し大きめであることなどから、それなりの代価と考えればこのハードな乗り心地は承服できる。しかし対外的な見栄の部分はそのままで、快適性まで要求するのも当然と考える人にはちょっと物足りない。操縦安定性はこのままで、乗り心地をいくぶんマイルドにできれば、言うことはないのだが。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2009年4月21日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2009年型
テスト車の走行距離:6883km
タイヤ:(前)245/40R18(後)同じ(いずれも、ブリヂストン POTENZA RE050A)
オプション装備:プレミアムパッケージ(BBS製18インチ鍛造アルミホイール+本革シート+フロントシートヒーター)=21万円/HDDナビゲーションシステム+ブレンボブレーキ=46万2000円
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(6)
テスト距離:203km
使用燃料:25.5リッター
参考燃費:7.96km/リッター

笹目 二朗
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