売却先は中国メーカー 「ハマー」ブランド、これからどうなる?

2009.06.05 自動車ニュース 桃田 健史

売却先は中国メーカー 「ハマー」ブランド、これからどうなる?

ゼネラルモーターズの本格オフロード車ブランド「ハマー」が、中国の重機メーカーに売却されることになった。さて、今後の見通しは……?

■中国から「我愛你!」

2009年6月1日に連邦破産法11条を申請し、事実上倒産した、ゼネラルモーターズ(GM)。以降、60〜90日以内の、事業再生手続きからの脱却をめざしている。事業再生後は、「新GM」として、シボレー、キャデラック、ビュイック、GMCの4ブランドに集約されることが決まった。残った、サターン、ハマー、サーブは売却などの手段で整理される見通しだ。

翌6月2日には、GMは“不採算ブランド”に認定したハマーを、中国の「四川騰中重工機械」に売却することで暫定合意したと発表した。
「四川騰中重工機械」は、その名のとおり中国は四川省の重機メーカーで、各種建設機器のほかエネルギー産業機器などの分野にも進出している。とはいえ、自動車産業とは無縁。今回の買収に踏み切ったのは、同社のコメントによれば、「ハマーブランドとその研究開発能力に対して投資し、例えばアメリカにおける低燃費車両など、新商品に対する需要に対応したい」からだという。

■名前も住所も変わらない

とはいえ、本拠地と事業は相変わらず米国で展開され、その舵取りも既存の経営チームが担当する見通しだ。

ハマー各モデルの製造拠点は、「H2」が米ミシガン州内のAM General社(H1の企画製造メーカーで、GMの外注先)、「H3」がアメリカ南部ルイジアナ州にあるシュリーブポート工場だ。
「H2」はフルサイズSUVの「シボレー・タホ」や「キャデラック・エスカレード」と多くの部品を共用している。「H3」も、ミドルサイズピックアップトラックの「シボレー・コロラド」や「GMCキャニオン」との部品共用が多い。しかも、製造ラインまで同じ。そうした経緯から、「H2」と「H3」に関わる製造施設と部品の全てをGMが売却することは、事実上不可能なのだ。

ただ、「H2」の生産を、タホなどを受け持っているテキサス州アーリントン工場に移管するなど、いくつかの対策はありうるだろうと筆者は想像する。「H2」は現在、ロシアでもライセンス生産されているから、ノックダウン方式(主要部品を送って現地で組み立て)の生産が中国国内で行われる可能性も考えられる。

今後のハマー販売についてGMは、世界各国の販売網は保持するとしている。事実上“親が変わった”だけで、商品としてのハマーはいままで通りの予定。日本でも「H2」「H3」は相当数輸入されており、今後のサービス体制については心配無用と思われる。

それどころか新しい親は、ハマーの販売網を世界に拡大する考えで、とりわけ中国のような、サービスが充実していない新興市場において、セールス向上を狙っているという。頼もしい限りではないか。

(文=桃田健史(IPN)/写真=ゼネラルモーターズ)


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(写真上下とも)荒野をゆく本格オフローダー「ハマーH2」。
(写真上下とも)荒野をゆく本格オフローダー「ハマーH2」。 拡大
こちらは「H3」。ミドルサイズピックアップトラックのプラットフォームを使った、(H2よりは)コンパクトなモデルだ。
こちらは「H3」。ミドルサイズピックアップトラックのプラットフォームを使った、(H2よりは)コンパクトなモデルだ。 拡大

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