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【スペック】全長×全幅×全高=4250×1845×1315mm/ホイールベース=2550mm/車重=1520kg/駆動方式=FR/3.7リッター V6DOHC24バルブ(336ps/7000rpm、37.2kgm/5200rpm)/価格=435万7500円(テスト車=481万6350円/カーウイングスナビゲーションシステム(HDD方式)+ETCユニット=32万2350円/特別塗装色=13万6500円)

日産フェアレディZ バージョンST(FR/6MT)【試乗記】

エッジが効いた日常へ 2009.05.28 試乗記 島下 泰久 日産フェアレディZ バージョンST(FR/6MT)
……481万6350円

2008年に登場した新型「フェアレディZ」。特徴のひとつは、MT車にシンクロレブコントロールがついたこと。これにより、操縦はさらに楽しめるものになったのか? そしてその走りは?
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クルマ好きをときめかせる

なにも難しい言葉を並べる必要などない。その姿を見ただけで心が動かされる。新型「フェアレディZ」は、そういうクルマではないだろうか。先代よりコンパクトになり、さらに緊張感が高まったフォルムにはじまり、伝統のロングノーズ、DNAを感じさせるサイドウィンドウのグラフィックス、そして大きく張り出したリアフェンダー、前後のレンズ類など、好き嫌いはあれど特徴的なディテールが並ぶ。古典的だという解釈もできるだろう。しかし、それがクルマ好きをときめかせる共通言語であることは間違いない。

インテリアもそう。細かな造形はオーバーデコレーション気味に映らないでもないが、クオリティは先代よりも格段に高く、どこか気持ちをかき立てる。そして嬉しいことに、ドライバーズシートに身体を滑り込ませると、煩雑に見えた要素が、実は視界を一切邪魔しないということに気付くのだ。

その走りにも、余計な説明は要らないだろう。乗れば、歓びはダイレクト。まずその源泉となるのがエンジンだ。新たに可変バルブタイミング&リフト機構のVVELを得た3.7リッターV型6気筒エンジンは、力強い轟音を響かせながら、しかしこれまた以前とは隔世の感のあるスムーズさで、7500rpmまで吸い込まれるように吹け上がっていく。

最高出力は336ps。しかも、安全装備の充実などで本来なら100kg増となってもおかしくなかった車重を、ボディのコンパクト化やアルミ素材の積極採用、さらには各部構造の見直しなどによって、先代と同レベルに抑えている。それゆえ、フィーリングだけでなく、実際の加速も迫力に満ちている。

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これでもMTを選ばない?

このエンジンを楽しむための嬉しい武器が、シフトダウン時に自動的に空吹かしをしてくれる「シンクロレブコントロール」だ。最初は小手先のギミックかな……と思ったのだがなんのなんの、MTの面倒を省いて美味しいところだけを味わうことができる、すばらしい機能だ。もちろん不要なら解除も可能。これでもMTを選ばない手なんてある? というのが正直な気持ちだ。いや、たしかにパドルシフト付き7段ATも出来は良いのだが、MTにはMTでしか得られない、楽しみも価値もあるはずだということで。

残念なのは、そこまでやって坂道発進時などに車両のずり下がりを防ぐ、ヒルスタート機能がないことだ。これは、開発当初はシステムを組み込むVDCが全車装着の予定ではなかったため、入れられなかったのだという。今後に期待である。

そんなエンジン以上に惹き付けられるのがフットワークだ。ステアリングを切り込むと、間髪入れずに長いノーズがインに向き始める。100mm短縮されたホイールベース、そして軽量化の一方で確実に剛性を高めたボディの恩恵だ。そして、いざアクセルを踏み込むと、腰で感じられるトラクション。まさにFRらしい、Zらしいレスポンスは、街中だろうと思わず頬を緩ませる。

もっとも、そのポテンシャルをフルに引き出そうとすると不満も出てくる。荒れた路面では19インチの大径タイヤ&ホイールを持て余すようで、フロントの接地感は断続的に失われがちだし、リアもズッと一気に滑ったりと、ピーキーな挙動を示すようになる。いずれもすぐに落ち着きを取り戻すとはいえ、一瞬緊張するのはたしか。タイヤのインチダウンか電子制御のダンパーを奢るか、なんらかの対策を採りたくなる感は否めない。

走る、曲がる、止まるを慈しむ

しかし、それは普段は滅多に踏み入れることのない全開に近い領域での話だ。ポテンシャルの9割くらいまでなら、最初に書いたような一体感やリニアリティを存分に味わえるし、それ以前に新型Zは、そんなふうに全開にしたり速さを追いかけたりしなくても十分に楽しいし、味わい深い。それを忘れてはいけない。

もし、そうしたスポーツ性が欲しいならば、きっと遠からずニスモバージョンが出てくるだろうし、「GT-R」と違って自分で手を入れる楽しみだってある。あるいはGT-Rという速さを絶対価値とする存在があるからこそ、Zはそこを割り切ることができた、とも言えるかもしれない。

全開にする代わりに、走る、曲がる、止まるのそれぞれを慈しむように味わう。目的地までのルートを単に通過していくのではなく、その道自体を堪能し尽くす。あるいは助手席に大切な人が居るならば、不快にさせないように気遣いながらスムーズ、それでいて速く……。そうやって走らせてこそ新型Zは、もっとイキイキとしてくるはずだし、おそらくそのステアリングを握っていれば、自然とそんな走らせ方になっていくような気がする。

クルマとともにある日常を、より鮮やかでエッジの効いたものへと彩る。まさに“大人のスポーツカー”なのだ、新しいZは。

(文=島下泰久/写真=高橋信宏)

島下 泰久

島下 泰久

モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。

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