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第92回:本当のところ「イタリアで走ってるクルマ」は何? 大矢アキオ、捨て身の路上調査員!

2009.05.23 マッキナ あらモーダ! 大矢 アキオ
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第92回:本当のところ「イタリアで走ってるクルマ」は何? 大矢アキオ、捨て身の路上調査員!

お昼どきの街なかで

イタリアの新車登録台数ランキングトップ3は、1位が「フィアット・プント/グランデプント」、2位が同「パンダ」、そして3位が「フォード・フィエスタ」である(2009年3月イタリア自動車工業会統計)。

しかし、それだけでイタリアの路上風景をイメージしてはいけない。理由は、当然のことながら「古いクルマもたくさん走っている」からだ。

そこで今のイタリアの路上ムードを読者の皆さんに伝えるべく、今週は大矢アキオ自ら路肩に立ち、街を走るクルマの統計をとってみることにした。
考えてみれば、ボクが住むシエナは、イタリアに110ある県庁所在地のひとつである。巨大都市でも田舎でもない、サンプル採取にもってこいの都市なのだ。

まずは、ユネスコ世界遺産にも指定されている旧市街で調査開始である。お昼休みで、みんなが家に一旦帰る12時台後半を狙った。30分間の通過車両数は126台で、結果は以下のとおり。

1位:フィアット・プント(初代および2代目) 5台
2位:フィアット・パンダ(新型) 4台

このあたりを見ると、冒頭のデータにかなり近い。
ただし、この2位のパンダと同じ台数で、「フォード・フィエスタ」「フィアット・ドブロ」(ミニSUV。「ルノー・カングー」のライバル車)、「フォルクスワーゲン・ポロ」「プジョー206」もやってきた。

入ってきた車両全体でみると、いちばん多かったのは、実はスクーターとバイクの43台であった。まあこれにはわけがある。イタリアの多くの旧市街の例にならい、シエナ中心部も住民や納品車以外の4輪車は入れないからだ。(参考記事)ついでにいうと4輪車も、道の狭さや車庫の大きさから小さなクルマが多くなる。
日本でブレイク中のハイブリッドは? というと、2代目「トヨタ・プリウス」のタクシーが1台通過しただけ。

まずはお昼の旧市街に立って調査開始。
まずはお昼の旧市街に立って調査開始。 拡大
旧市街は道が狭く、車庫も小さいのでコンパクトなクルマが多い。
旧市街は道が狭く、車庫も小さいのでコンパクトなクルマが多い。 拡大

メーカー別ランキング

さらにイタリアの今を映し出すべく、より通過台数が多い近郊の道でも台数を数えることにした。時間帯は同じく、お昼どきを狙った。

こちらの通過台数は、旧市街と同じく30分間の計測で、2.7倍の350台に達した。車種別では、トップは旧市街と同様にフィアット旧型プント23台、2位は同グランデプントと新型パンダの各13台だった。

しかし、面白いのはメーカー別の結果だ。
1位フィアット89台、2位フォード25台、3位ルノー24台、という結果はともかく、4位はメルセデス(20台)だった。イタリアはドイツに次ぐメルセデス販売国であるという事実を匂わせる結果である。5位はアウディの18台、6位はオペルの17台だった。
なお、それらの数は、ランチア14台、アルファ・ロメオ10台よりも多い数字だ。イタリアでドイツ車は目立つ。国別でみても、ドイツ車(103台)は、イタリア車(127台)に次いで多かった。3位はフランス車で48台だ。

日本車はそれに次ぐ4位で32台。内訳はトヨタ11台、日産、スズキ各5台、マツダ4台、三菱3台、スバルとホンダ各2台である。ダイハツの名誉のためにいえば、「ハイゼット」をベースにしたイタリア・ピアジオ社の商用車「ポーター」が6台も通過した。

いっぽう、韓国車はもっと数を稼ぐかというボクの思い込みに反し、5位15台と少なかった。以下6位はチェコ(シュコダ:VW系)の8台、7位はスウェーデン7台、8位はスペイン(セアト:VW系)6台、9位はアメリカ(クライスラー/ジープ)3台だった。最下位は英国車で、「ランドローバー・ディスカバリー」と、ホンダの血を引く古い「ローバー400」の2台しか現れなかった。
なお、市街地と違い近郊では、2輪の数はグッと減って、たった5台を数えたのみ。日本で人気の「フィアット500」は、新型が2台、“元祖”が2台という結果だった。

「アルファMiTo」や「アバルト」は、この時間帯に姿を現さなかった。今後イタリアでどう推移するかはわからないが、目下のところ神田神保町の『webCG』編集部周辺で目撃するほうが確率は高いかもしれない。

オープンモデルもわずか2台しか来なかった。「マツダMX-5」と「サーブ9-3」で、それも後者はドイツナンバーだ。イタリアは意外にオープンが少ないことがあらためてわかる。サンルーフもイタリア人はオーダーする人は少ない。海好きな彼らだが、クルマに乗ってまで太陽を浴びようとは思わないのである。

ちなみに、この国でもディーラーが目標達成のために自社登録してしまう慣習がある。また一般ユーザーではない公用車や、企業用カンパニーカーの需要も多い。そうしたクルマたちは統計を狂わせる。したがって、ボクは“そこいらを走っているクルマ”を観察することこそ、イタリア人の好きなクルマを知るバロメーターだと信じている。

次は近郊の道でチェック。
次は近郊の道でチェック。 拡大
あまり売れなかった「ランチア・リブラ」はようやく1台。なお、この国ではかなりの確率でお役所のクルマ。
あまり売れなかった「ランチア・リブラ」はようやく1台。なお、この国ではかなりの確率でお役所のクルマ。 拡大
オープンモデルも稀。写真は「マツダMX-5」(日本名:ロードスター)。
オープンモデルも稀。写真は「マツダMX-5」(日本名:ロードスター)。 拡大
小型バスには、小さなカロッツェリアによるユニークなボディが多い。
小型バスには、小さなカロッツェリアによるユニークなボディが多い。 拡大

約8割が「ギン・クロ・シロ」!

そこまでやって思いついたのは、ついでにボディカラーも調べてみよう、ということ。
次の15分間に通過したクルマ217台をチェックしたところ、シルバー(ガンメタリック含む)が86台、黒が49台で、両者を合わせると62%にのぼることが判明した。3位の白(35台)を合わせると、78%である。つまり、走っているクルマの8割は「ギン・クロ・シロ」なのだ。10年くらい前から始まった傾向が、より鮮明に現れたかたちだ。ときおり日本でスーパーの駐車場を見渡すと「色が賑やかだなー」と直感するのは、イタリアのこの現象があったのである。

目も覚めるような水色メタリックのアウディは、案の定ドイツナンバーだった。このあたりをイタリア人に聞くと、「突飛な色は上品じゃない」「高級感がない」「中古で出したときの買取価格が安い」などと答える。
中古車屋さんでも、たしかにあるのは銀や黒ばかりだ。したがってボクが今乗っている中古車を探したときなどは、彼らのいう「ヘンな色」を求めて彷徨った挙句、気がつけば家から380km離れたミラノにいた。なんのことはないワインレッドなのだが。
イタリア人よ、もっとボディカラーでも冒険せよ、とボクは言いたい。

ところで今回の、いわば「クルマ判定しまショー」企画は、気温30度ちかい炎天下で、日頃のパソコン執筆作業で衰えた動体視力を突然酷使する、結構きつい作業であった。しまいには、めまいがして道端に寝込んでしまった。ヒヨコの雄雌を瞬時に見分ける仕事などは、到底ボクに向かない。
しかし、腕章をしてボードを持ち路肩に立っているというのは、たとえボクが東洋人であっても、イタリア人ドライバーには一瞬スピード計測かなにかに見えたようだ。平均速度が若干落ちたとすれば、交通安全にちょっぴり貢献したことになる。

(文と写真=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)

色のバリエーションに乏しいことよ……。
色のバリエーションに乏しいことよ……。 拡大
炎天下で脱水症状寸前の筆者。イタリア人よ、もっと色でも冒険せよ。
炎天下で脱水症状寸前の筆者。イタリア人よ、もっと色でも冒険せよ。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。

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