第384回:新型インサイト試乗!
びっくり! 意外と安っぽくないじゃん
2009.03.04
小沢コージの勢いまかせ!
第384回:新型インサイト試乗!びっくり! 意外と安っぽくないじゃん
予想以上に良くできてる
ってなわけで、ホンダ期待の新型ハイブリッドカー「インサイト」。先日発売されて、ちょいびっくりの1ヶ月で1万5000台超の受注! 正直、肝心のハイブリッドシステムは、既存「シビック」用のリファインだし、個人的にはあまり期待してなかったんだけど、この時代、“安さ”ってつくづく大きいのだねぇ。ユニクロが優良企業に返り咲いただけあるわ。
でも実際乗ってみると、意外なほど印象が良かったのも事実。先日行われた横浜試乗会で乗ってきたわけだけど、まず気になるのは見た目よね。「プリウス」そっくりって言われるけど、特別そんなことは感じなくて、それよりコンパクトでクレバー。実際、全長約4.4×全幅1.7m弱は「カローラアクシオ」より小さく、いまどきの新車としては5ナンバーサイズ自体が珍しいし使いやすい。
さらに驚いたのは質感。実は先日デトロイトショーで見てきて、乗った瞬間「安っぽ〜」って思ったんだけど、日本の外の光で見るとそれほどでもない。たしかにドア内張りといい、インパネ表皮といい、全面ハード素材でソフトパッドは皆無。シート表皮も当然、ソフトで毛羽だった豪華素材は使えずに、編み編みの合成素材が使われている。正直フィットの延長だ。
ところが意外とみすぼらしくない。と思ってたら、インテリア担当デザイナーが面白いことを教えてくれた。
「インテリアは素材ではウソはつけませんが、文法とシボで多少なんとかできます(笑)」
キモはまず造形で、インサイトのメーターまわりは特殊な二重構造になっている。ドライバー前にまずメインメーターがあり、その外側に覆うようなカタチで上にデジタルスピードメーターが備わっているのだが、これは実は燃料電池車「FCXクラリティ」や現行「シビック」同様の、かなり奢った構造。普通にやると「メーターパネルを2つ使う必要があるから高くつく」んだそうな。
ところがびっくり、インサイトはメインメーターとデジタルメーターがウラで繋がってワンユニットになっており、意外と安く済む。さらによく見ると、メーターまわりのパネルだけ他のパネルとはシボのデザインを変えていて、幾何学模様を配してある。このへんも安っぽく見せないポイントなのよ。
それからこれはフィットもそうだけど、ATシフトまわりなど、微妙にシルバーっぽい塗装を施してて、これも結構効いてる。ま、安い牛丼でも、味噌汁&お新香とセットになるとお買い得に見えるようなもんか。違う?
ただ、プリウスほどの新しさはない……
肝心の走り味だけど当初聞いていたほどにはフィットっぽくない。ステアリングフィールの固さはそれっぽいのだが、全体の乗り心地には余裕があるのだ。
それも当然で、エンジニアに聞いてみるとシャシーの前部分はフィットと共有なのだが、リアシート以降は新設計。オリジナル度は結構高い。
次にパワー特性だけど、新型インサイトはご存じのとおり、とにかく安く、最低グレード189万円という価格で提供するために、核となるハイブリッドシステムのかなりの部分を「シビック・ハイブリッド」と共有している。
それどころか安くするために省略している部分すらある。1.3リッター直4は3ステージVTECだったものを、高速カムを省略することで2ステージ仕様にし、モーターも2割薄型に、バッテリー電圧も144Vから100Vに下げている。これでエンジン、モーターともにそれぞれ6psづつ出力ダウンして、総合で110psから98psに落ちている。
それを知っていたから期待してなかったんだけど、乗ってみるとけっこう速い! それも街中ではあまりトルクを感じないんだけど、高速で多めにアクセルを吹かすと、エンジンに対して、モーターが意外と大きくアシストしてくれてるのを感じる。
オオゲサにいうと1.8リッター車ぐらいのフィーリングだろうか。プリウスほどの、後ろから波に押されるような“第2ロケット点火!”って感じの追加加速感はないんだけど、それでもけっこう速い。軽量化により、1190kgに抑えられた車重も効いてるんでしょう。
ついでにラゲッジルームは400リッターと、床下にバッテリーが入ってるとは思えないほど広いし、音もわりと静か。
唯一気になったのは、低速でややゴツゴツ感を感じる乗り心地ぐらいのもので、ハンドリングはホンダらしくシャープだし、これで189万円だったらいいかも? 話題のハイブリッドだし……と思ったのも事実。189万円の「G」グレードでフルオートエアコンに前述マルチインフォメーションディスプレー、電動格納ドアミラーほかも付いてるしね。
ただ、プリウスほどの新しさを感じなかったのもホントだし、今後、どういう発展が見込めるのかなぁ……。システムをリファイン&小型軽量化して、フィットクラスに載せることぐらいかなぁって思ったのも事実。あまりマンガっぽい未来は描けませんでした。
でもまあこの不況時代、このインサイトをきっかけに、ホンダらしさをビシバシ発揮してほしいとこですよ。社長も交代することだしね。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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