ホンダ・アコードツアラー 24TL スポーツスタイル(FF/5AT)【ブリーフテスト】
ホンダ・アコードツアラー 24TL スポーツスタイル(FF/5AT) 2009.02.10 試乗記 ……389万4500円総合評価……★★★★★
フルモデルチェンジで8代目になった「ホンダ・アコード」シリーズ。ボディを大型化し、全方位的に上質にしたという新型の実力を、アコードワゴンあらため「ツアラー」で試す。
オトナのワゴン
「アコ−ド」というより、名前も「インスパイア・ワゴン」とした方がシックリくるほど、大きくて立派なボディサイズ。
最近のホンダは顔の表情こそキツくて戦闘的ながら、乗り味は落ちついてきており、昔のようにチョコマカした軽挙が無くなってきた。このアコードツアラーも、その例に漏れない。そのうえ従来どおりエンジンは滑らかに回り、かつパワフル。ドライビングコンピュータでみる限り燃費もよく、自動車として全体に洗練されてきているのは喜ばしい限りだ。
ATの設定も、変速パドルが固定されたものではないものの、ハンドル裏のスイッチは誇張されない存在で好ましい。操作方法よりもむしろ、設定がうまく、自然な変速フィーリングが得られる。しょせんATのマニュアルモードはエンジンブレーキを欲する時などで十分、加速については右足の踏み方ひとつで意思が伝えられる……そんな分別を感じさせるチューンもオトナの感覚といえる。
グラスエリアを薄めにとった結果、斜め後方などの視界がやや遮られているが、これも駐車モニターが備わっているおかげで、実際の見た目以上に情報を得ることができる。便利で親切なつくりのクルマである。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「アコード」シリーズは、1976年に初代が誕生。当時からアメリカに輸出され、現在では欧州を中心に販売される。今回のフルモデルチェンジで、8代目に。ボディは大型化され、すべての要素で上質になったと謳われる。ボディ形状は従来どおりセダンとワゴンの2種類。エクステリアデザインは欧州アコードと共通。ウェッジシェイプや、ワイドトレッドを強調するホイールアーチなどが特徴となる。
エンジンは2.4リッター4気筒のみで、全グレードでパドルシフト付きの5段ATが組み合わされる。従来型にあった4WDはラインナップから消え、FFのみとなった。
(グレード概要)
試乗車は、ワゴンボディの「アコードツアラー」。「スポーツスタイル」はスポーティな内外装をもつグレードで、専用のダーククロームメッキグリル、チンスポイラー、18インチアルミホイール、さらに本革コンビシートを含むブラックインテリアが備わる。
なお「ツアラー」の名称は、荷物の積載よりロングツーリングのイメージをを明確にすべく、「ワゴン」から改められたもの。プラットフォームも先代まではワゴンとセダンで異なっていたが、今回からは両モデル共通になっている。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★★
大きく傾斜したスクリーンは、現代の流行。必然的にダッシュボードの棚も広大にならざるを得ない。この部分の空間をもてあます例が多いなかで、ホンダ・デザインは一頭地を抜く。大きくえぐって階段状にした立体的な造形は見事。計器類も大きく見やすい。それらを遠目に置くのは老眼対策にもなるが、高齢者のみならず乗員全員からよく見える。
(前席)……★★★★★
シートの作りは良好。サイズもたっぷりしており、特にショルダー部のホールド感がいい。腰の支え以上に、横方向のGから身体全体を守ってくれる感覚。ランバーサポートも適切。スポーツカーでなくとも安楽に包まれるシートは歓迎できる。材質も部分革張りで見た目の高級感も上々。ヒーターの備えもあり至れり尽くせり。サイドブレーキのレバーもちゃんとドライバー側にあり、操作しやすい。
(後席)……★★★★
広々としていて、くつろげる空間。床は浅めだし背もたれが畳めるシートだから、クッションの厚さに限りはあるものの、足元の余裕は十分。背後の荷室を優先するようなシート形状ではなく、背面の丈もたっぷりとってある。頭上空間もあって、大型ワゴンなりのおおらかな雰囲気がいい。一方で、この位置に座ると、横置き4気筒特有の胴振るいのようなトルク反動は少し気になる。
(荷室)……★★★★
フロア面積は広いけれども、リアウィンドウはスタイリング優先で大きく寝ており、四角い箱などをたくさん高く積むには不適切だ。このクルマのキャラクターとしては、荷物運搬車ではないのだろう。ゲートは大きく開くが敷居は比較的高い。上部のブラインドは比較的高い位置にあり、これで仕切られるいわゆるトランク部分としての容量はかなり広い。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
パワフルにして静かで速い。燃費も良さそう。首都圏の一般道が主体で高速道路の走行率が少ないわりに、ドライビングコンピュータのデータで9.4km/リッターは立派。
フロアのシフトレバーはPRNDのみと簡潔にしておいて、ハンドルのスイッチでマニュアル式の変速を行う。スイッチ操作が優先された後でまた元のオートに戻る、この辺の呼吸がドライバーの意思を妨げない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
サスペンションは全体にやや硬めの設定。姿勢はフラットで上下に煽られることなく、バネ下の動きは正常にしてダンピングも適切。強いて言えば目地段差などの通過でハーシュネスはきつめで、スポーツワゴンとしての性格を見せる。コーナーでもロールは少なく安定しており、挙動はキビキビとして大型サイズのわりには軽快。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2009年1月23日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:3789km
タイヤ:(前)235/45R18(後)同じ(いずれも、ミシュラン PRIMACY HP)
オプション装備:Honda HDDインターナビシステム+プログレッシブコマンダー+6スピーカー+ETC(34万1250円)/パワーテールゲート(7万3500円)/Hondaスマートキーシステム(6万3000円)/プレミアムホワイトパール(3万6750円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(6):高速道路(4)
テスト距離:321.2km
使用燃料:34.61リッター
参考燃費:9.28km/リッター

笹目 二朗
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