「日産リーフ」仕様変更で基本性能向上
2012.11.20 自動車ニュース日産、電気自動車の「リーフ」を大幅改良
日産自動車は2012年11月20日、電気自動車(EV)「リーフ」のマイナーチェンジを発表。同時に販売を開始した。
「見えない部分」を大幅に改善
やがて訪れるEV時代に先駆けて、圧倒的に世界をリードする日産リーフ。販売台数は2010年12月の発売から2年足らずで、日本の1万9000台を筆頭に、北米や主なEU諸国など約20カ国で早くも合計4万台を突破した。昔からの常識を根底から覆す革命車なのに、予想を上回る快進撃だ。それを追って、先進国のメーカーたちも続々とEV開発に名乗りを上げている。それに対して先輩格のリーフは早くもマイナーチェンジで大幅に内容充実、後続を引き離しにかかっている。
今回発表されたマイナーチェンジの内容は大々的。見た目にはこれまでのリーフとほとんど変わらず、一部の車種に17インチアルミホイール、ブルーリフレクションLEDヘッドライト、フロントフォグライトなどが標準装備またはオプションとなり、ボディーカラーが3色増えただけだが、実質的にはフルモデルチェンジに等しい。
ほぼ全域にわたる改良点のすべては紹介しきれないので、取りあえず代表的なポイントだけ駆け足で見ておこう。
より速く、より遠くへ
最大のニュースは、一充電当たりの航続距離が228km(JC08モード)まで延びたこと。これまでは200km だったから14%の増加だが、実用上この差は無視できない。それをバッテリー(容量24kWhのリチウムイオン)増設なしで実現したのは大きい。バッテリーを増やせば長く走れるのは当たり前だが、そのぶん充電時間が延びるし値段も上がるからだ。
それよりモーターの新設計(従来のEM61型から、性能の数値は同じでもレスポンスが鋭いEM57型)や、主な部品の統合を中心とした80kgもの軽量化が注目ポイント。愛嬌(あいきょう)あふれる姿形に似合わない俊足の持ち主リーフに、一段も二段も磨きがかかったわけだ。
外部資料によると、0-100km/hの加速タイムは11.9秒から11.5秒に短縮されたにすぎないが、最も多く使う実用域でグッと来る感じは格段に強くなるだろう。
その裏には、さらに強くモーターブレーキ(?)が効くBレンジの新設や新方式ヒーターの採用、回生ブレーキ有効範囲の拡大(従来は停止前の7km/hまで下がった時点で切れたが、今度は3km/h)など、重箱の隅をつつくように電力をかき集める努力も潜んでいる。Bレンジは、コンソール上のシフトノブをDの位置から右手前に引いてセレクトする。ここは従来ECOレンジだったが、新型のECOはステアリング上のボタンで操作する。
使い勝手もさらに向上
その他ドライバーの立場からは、充電ポートの改良(照明の追加、オープナーの電磁化、使い方に応じたロックの多様化など)、タイマー充電やスマホによるリモート充電のどれでも、ロングライフモード(バッテリーに優しい80%で自動カット)を選べること、モニター画面内にバッテリー残量が数字によってパーセンテージ表示されることなど、EVとしての使いやすさが実感できる項目も多い(計器盤上には四角いドットが12コマの残量計も残される)。
EVであることと直接の関係はないが、アラウンドビューモニター、ヒルスタートアシスト、プラズマクラスターエアコンなど、最新の装備も抜かりなく採用されている。
もともと豊富だったナビの機能もさらに充実、バッテリー残量から算出した到達可能範囲を地図上に表示できるのに加え、到着時の残量を予測したり、充電器設置の日産系ディーラーの営業時間帯や、目的地の充電設備の満空状況を知らせてくれたりするようにもなった。EVが増えはじめた昨今、目当ての充電器に先客がいることも珍しくないから、これは朗報だ。ただし、どこでもスパッと表示できるようになるまでには、しばらく時間が必要かもしれない。
それにしても、セットされた目的地まで複数の候補がある場合、最も電力消費の少ないルートを優先的に推奨するなど、芸の細かさには驚かされる。
ラゲッジルームの形状を大幅に改善
室内ではシートが改良され、高さ調節が可能になったほか後席中央にもヘッドレストが備わり、本皮仕様(オプション)も選べるようになったが、もっと根本的に新しいのはラゲッジルーム。前述のように高電圧系のコントローラー類がモーターと一体化されてフロントに移った結果、これまで後席のすぐ後ろのフロアに頑張っていた大きな段差が消えた。後席を畳めば奥まで床はフラットで、VDA計測方式による容量も330リッターから370リッター(Bose Energy Efficiency装着仕様は355リッター)に増えている。これまでは、大きな段ボール箱で試すと軽トールワゴンより積めないこともあったが、これからは勝てる。
また、モーター、インバーター、コンバーターなどをひとまとめにできたということは、全面専用開発のリーフだけでなく、ほかの車体も比較的容易にEV化できるようになったことを意味する。日産のEV展開が急速に進むきっかけになるのは間違いなさそうだ。
この一体化された機器類を覆うアルミ鋳造のケースには空気伝播音を減らすハニカムリブが付け加えられ、もともと静かなリーフがもっと静かになった。普通のガソリンやディーゼルでは、いろいろな雑音をエンジン音が覆い隠してしまうが、そんな音源のないEVでは、意外なノイズが気になることもあり、こういう対策は効果が大きい。
ラインナップに廉価グレードを追加
……と、現状で世界の市販型EVの半分以上を占めるトップランナーとして、ユーザーからの反響もたくさん集まったからこそ思いきり第2世代に生まれ変わることができたリーフ、これを機にグレードも一つ増え、全部で3タイプがそろうことになった。
基本形というべき「X」は375万7950円、上級の「G」は413 万3850円で、これまでより少し高いが、機能の増強や装備の充実度を考えれば、むしろ値下げというべきだろう。これらに加わったのが、リーフ入門用として買いやすさを考えた「S」で334万9500円(いずれも消費税10%込み)。走行するための基本的なメカニズムはほとんど共通だが、「S」だけは新設のBモードなどは付かない。
購入に際しての国の補助金は、同水準、同サイズのエンジン車との価格差の半額あたりが基準で、リーフの場合おおよそ78万円が目安になる。それでも決して安価ではないが、普通に使ってレギュラーガソリンの10%以下というエネルギー費も計算に入れると、いろいろ使い方を工夫しながら、家族に迎え入れたくなるのではないだろうか。
(文=熊倉重春)
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