スズキ・スプラッシュ(FF/CVT)【ブリーフテスト】
スズキ・スプラッシュ(FF/CVT) 2009.01.08 試乗記 ……123万9000円総合評価……★★★★★
各所からヨーロッパの香りただよう新型コンパクトカー「スプラッシュ」。ハンガリー製のスズキはどんな走りをみせるのか。
欧州車の走りを日本車価格で
試乗した感想は? と聞かれたら「ビックリした」というのが正直な気持ちだ。ハンガリーで生産される「スズキ・スプラッシュ」の走り味は、日本車というよりドイツ車に近く、しかもかなりレベルが高い。「フォルクスワーゲン・ゴルフ」に匹敵するんじゃないかと思うほど。それが(ゴルフの)半値で手に入るのだから、ハンガリー製をあなどってはいけない。
でも考えてみれば、「フィアット500」や「ルノー・トゥインゴ」も東欧産だが、走りは西欧産に劣っていない。並行輸入の「ダチア・ロガン」も同じ。どれも完全にヨーロッパ車のレベルにある。
スプラッシュは仕上げの面ではたしかにドイツ製や日本製には及ばない。でもユーザーは、それらの最新型がアピールする質感の高さより、価格の安さのほうがウレシイのではないか。ダチア・ロガンが西ヨーロッパでも売れているのはその証拠だし、わが国でも若いユーザーはそう思っているような気がしてならない。
現に衣料や家電製品など、現在身のまわりにある工業製品のほとんどはジャパン・ブランドであっても国産ではない。クルマだけどうして日本製にこだわるのか。不思議に感じる人がいてもおかしくない。
派遣切り騒動まっただなかの日本で、安く作れる国で作るという手法はアピールしにくいかもしれないけれど、そういう国で正規雇用をおこなって生産できるなら、地球全体で見れば幸せじゃないだろうか。そもそも安くてよく走るクルマを生み出すことが、コンパクトカーにおける理想であるはず。スプラッシュはその理想にかなり近い位置にいるのではないだろうか。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2007年9月のフランクフルトショーでコンセプトカーが発表され、翌月の東京モーターショーに出展された、5ドアハッチの世界戦略車。ハンガリーのマジャールスズキで生産され、欧州では2008年3月から販売をスタート、日本では2008年10月21日に発売された。
ボディサイズは、全長×全幅×全高=3715×1680×1590mm。ホイールベースは2360mm。全長や全幅、ホイールベースは、ベースとなった「スイフト」より若干小さく、全高のみ80mm高い背高スタイルが特徴。
パワーユニットは、スイフトのマイナーチェンジ時に追加設定された「低燃費ユニット」ことK12Bエンジン+CVTの組み合わせ。駆動方式はFFのみ。
ボディカラーは6色用意され、カラーによって3つのインテリアカラー(ターコイズ、ブラック、ブルー)が組み合わされる。
(グレード概要)
スプラッシュは、1.2リッターモデル搭載の1グレード構成。装備は、エアフィルター付きマニュアルエアコンや、電動格納式リモコンドアミラー、パワードアロックなどが備わる。また、フロント&サイドエアバッグに加え、カーテンエアバッグや後席3名分の3点式シートベルト&ヘッドレスト、歩行者保護ボディなどの安全装備も標準設定される。
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【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
インパネ表面の仕上げは最新の国産コンパクトカーと比べれば安っぽく、継ぎ目の数や、すき間の大きさも目立つ。でも単眼メーターは、多くの機能を見やすくまとめてありグッドデザインだ。ダイヤル式スイッチは直感的で使いやすい。カップホルダーはシフトレバーを避けるようにドッグレッグして出てくるので、シフト操作を邪魔しないという、わかったデザインだ。
「ピコピコ」という、かわいらしい音色のウインカー音は好き嫌いがわかれそうだが、自分はこういう部分もヨーロッパ車ならではの味と肯定的に考えている。
(前席)……★★★★★
まずは乗り降りのしやすさに感動する。敷居が低くルーフが高いので上体を折り曲げなくてもキャビンに入れるし、シートの高さも絶妙だ。サイドの絞り込みの少なさも狭い場所の乗り降りではありがたい。高めのシートと低めのインパネのおかげで視界はいい。
シートはかなり固めで張りが強く、ひと昔前のドイツ車を思わせる。背もたれは上体をピシッと保持してくれる一方、座面のクッション性能はしっかり確保されていて、大入力では衝撃をやわらげてくれる。座面サイズはドイツ的で、人によっては長すぎると感じるかもしれない。
(後席)……★★★★★
前席以上に着座位置が高めで、足を下におろした自然な姿勢がとれる。座面は前席よりしんなりしていて心地いい。背もたれはこちらもピシッと張っていて、しかもコンパクトカーなのに長さに不足はない。
乗り心地も前席との差はなく、クラスを考えればすばらしいレベルにある。身長170cmの人間が前後に座るとひざの前には10cmぐらいの空間が残る。
横方向はおとな3人掛けには狭いけれど、それでも中央席にヘッドレストと3点式ベルトがつくのはさすがヨーロッパ車だ。開口部の大きなドアのおかげで乗り降りもラク。
(荷室)……★★★★★
クルマのサイズを考えれば満足できるスペースが確保される。しかもリアシートの格納は、背もたれを前に倒すと座面が沈み込んでフラットに折り畳める。「ワゴンR」などと同じ方式で扱いやすい。フロアはこの高さに合わせてあって、床下にも広い収納スペースがあり、トノカバーを使わないときはここに収めることもできる。欧州産ならではの合理主義と日本車らしいきめ細やかさがうまく融合した空間だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
1.2リッターエンジンは、「スイフト」に比べパワー、トルクともに低い数値で、車重は50kg重くなるものの、ギア比が同じCVTによる加速に不満はない。全域でなめらかな走りはスイフトと同じで、流しても飛ばしても心地いい。スロットルペダルは日本製コンパクトカーと比べれば重めだが、おかげでスイフトでは気になった発進直後の飛び出しが抑えられるし、無駄なスロットルワークを抑制してくれるので燃費向上にも寄与するのではないだろうか。
CVTの印象はスイフトと同じで、右足を床まで踏み込んだときは高回転まで跳ね上がるものの、それ以外はスピードに合わせリニアに回転を上げていくので違和感はない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
乗り心地をひとことでいえば、少し前のドイツ車風だ。つまり硬めだがストロークはたっぷり確保してあり、鋭い衝撃はうまくいなし、その後はしっとり動いてくれる。おかげで細かく揺すられることはなく、基本はフラットでショックをスッと吸収する。ソフトな乗り味が好きな人間でも心地いいと思わせるフィーリングだ。
背が高いので横風には多少影響されるものの、直進性や乗り心地は文句なし。硬めの足のおかげでハンドリングに腰高感はなく、スイフトほどクイックでもなく、素直な挙動は好感が持てる。しかもグリップレベルはかなり高い。スプラッシュは、正真正銘のヨーロッパ車だ。
(写真=荒川正幸)
【テストデータ】
報告者:森口将之
テスト日:2008年12月12日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:2462km
タイヤ:(前)185/60R15(後)同じ(いずれも、コンチネンタル ContiPremiumContact2)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(6)
テスト距離:262.7km
使用燃料:24.31リッター
参考燃費:10.8km/リッター

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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