スバル・インプレッサ アネシス2.0i(FF/4AT)【ブリーフテスト】
スバル・インプレッサ アネシス2.0i(FF/4AT) 2008.12.10 試乗記 ……192万1500円総合評価……★★★★
ひっそりと追加された「インプレッサ アネシス」は、「トヨタ・カローラアクシオ」「日産ブルーバードシルフィ」などと競合する、オーソドックスなセダン。目立たない存在ではあるが、好感が持てる一台だったという。
スバルの後席王
見た目は地味。でも乗ると快適で、走りは個性的。スバル・インプレッサに追加された4ドアセダンのアネシスは、「レオーネ」を思い出させるクルマだった。「レオーネってなに?」という読者のために説明しておくと、レガシィやインプレッサが出る前、スバルの小型車セグメントを、事実上1台で支えてきたモデルである。
ニューモデルなのに、数年前から存在していたようなたたずまい。最近登場した新型車では、もっとも注目されにくい1台かもしれない。旧型には存在していたWRXなどの硬派グレードがないことも、その印象に輪をかけている。
前後のオーバーハングがほぼ同じで、ホイールベースが長めのプロポーションはレオーネそっくり。運転席に収まり走り出せば、おなじみのフラット4サウンドが流れてくる。そして乗り心地がいい。とくに後席のそれは、はるかに格上のセダンにも負けないほど安楽。現行スバルでは文句なしの後席王である。
デビュー直後はその姿から、「どんな人が買うんだろ?」という疑問さえ抱いたアネシスだったけれど、乗ってみるとこのクラスのセダンでイチオシの1台だった。しかも熱狂的なスバリストから保守的なユーザーまで満足できるという懐の広さもある。見た目勝負の安直商品が目立つ昨今だからこそ、中身重視の成り立ちに好感が持てた。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2007年6月に3世代目へとフルモデルチェンジをし、ハッチバックモデルのみとなった「インプレッサ」。しかし当初北米市場のみのラインナップだったセダンを、2008年10月に急遽日本市場に導入。「インプレッサ・アネシス」として販売することになった。
エンジンは1.5と2リッターのNAのみで、いずれもFFと4WDを用意。4段ATが組み合わされるが、1.5のみ5段MTも選ぶことができる。
(グレード概要)
今回のテスト車「2.0i」は、2リッターのベーシックグレード。LEDサイドターンランプ付きのドアミラーや前後ディスクブレーキ、16インチタイヤなどの装備が与えられる。電子制御のアンチスピンデバイスやSRSサイド/カーテンエアバッグなどは用意されない。
【車内と荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
インパネはハッチバックと共通で、造形は大胆だが質感はいまひとつ。カラーも黒一色で、ちょっと味気ない。フロアをアイボリーとしてコントラストを出した最上級グレード「2.0i-S」を選びたくなる。装備ではシンプルなダイヤル式で扱いやすいオートエアコンに対し、モニターの両脇に小さなスイッチが並ぶ旧態依然としたカーナビの操作感が気になった。SIドライブのダイヤルのような、スマートな操作系を考えてほしい。
(前席)……★★★★
試乗した2.0iではセンターがファブリック、サイドが合成皮革で、カラーはインパネと同じ黒一色。ブラックのレザーとスウェードのコンビにアイボリーのステッチを入れた2.0i-Sのほうが、見栄えははるかに上だ。形状はハッチバックと共通で、見た目はおとなしいが、座面、背もたれともに硬さや角度などが理想に近い作りで、1時間程度のドライブではまったく不満を抱かせないほど座り心地はよかった。
(後席)……★★★★★
背もたれを倒してトランクスルーにできることを含めて、こちらも構造的にはハッチバックに近い作りだ。空間もほぼ同じで、スペースはこのクラスの平均レベル。ただし座面は厚み感こそないものの角度は適正で、背もたれの張りもある。しかもロードノイズはほとんど耳に届かず、ショックはじわっと吸収し、ダンピングはほどよく効いていて、前席との乗り心地の差はほとんどなかった。このクラスでは異例である。本来は当然のことなのだが、中央席に3点式ベルトとヘッドレストを用意したことも国産車としては評価できる。
(荷室)……★★★★★
ゴルフバッグが4個収納できるという記述がカタログにあるとおり、奥に段差がある以外はフロアは低く、左右の出っ張りは最小限で、オーバーハングが短めのわりに奥行きに余裕があり、かなりの容量を誇る。リッドも低い位置から幅広く開き、アクセスしやすい。トランクスルー機能もあるし、平均的な日本人の使い方なら不満を覚えることはないだろう。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
1290kgという車重はハッチバックの2.0iとまったく共通。ゆえに2リッターエンジンと4段ATのコンビがもたらす加速はほぼ同じだ。ATはたしかに4段だが、4段なりに練り込まれている印象で、不満はほとんど感じなかった。ギアの数だけで良し悪しを決めるべきではないことを思い知らされた。アクセルを踏み込むと水平対向エンジンの鼓動がそれなりにキャビンに届くけれど、インプレッサを選ぶユーザーでこのサウンドを嫌う人はいないだろうし、オーソドックスなセダンボディでこういう独特の雰囲気が味わえるのは貴重である。このミスマッチ感覚もアネシスの個性だと思った。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
現行インプレッサはハッチバックであってもロードノイズが気になるクルマではないが、リアにバルクヘッドを持つアネシスでははっきり静かになった。さらにボディの剛性感もハッチバックを上回る印象で、同じ車重でリアゲートがないぶん重心は低くなっているはずだから、ストローク感のあるしっとりした乗り心地にさらに磨きがかかり、ハンドリングは重心の低さがより体感できるようになった。FWDであってもトラクション能力に不満はないものの、リアのグリップが強まった結果、アンダーステアが強まったように感じられた。つまりファントゥドライブというわけではないのだが、乗り心地とハンドリングのレベルはこのクラスの国産車としてはかなり高いレベルにあるといえる。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:森口将之
テスト日:2008年11月12日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:2502km
タイヤ:(前)205/55R16 ヨコハマASPEC(後)同じ
オプション装備:HIDプロジェクターロービームランプ+アルミホイール=9万4500円
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(6)
テスト距離:178.7km
使用燃料:17.8リッター
参考燃費:10.03km/リッター

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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