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【スペック】タルガ4S:全長×全幅×全高=4435×1852×1300mm/ホイールベース=2350mm/車重=1540kg/駆動方式=4WD/3.8リッター水平対向6DOHC24バルブ(385ps/6500rpm、42.84kgm/4400rpm)(欧州仕様車)/価格=1681.0万円

ポルシェ911タルガ4(4WD/7AT)/タルガ4S(4WD/7AT)【海外試乗記】

まずは快適性 2008.11.07 試乗記 河村 康彦 ポルシェ911タルガ4(4WD/7AT)/タルガ4S(4WD/7AT)
……1466.0万円/1681.0万円
燃費向上を狙い、直噴システム&ツインクラッチ化が進む911シリーズの最新モデル「タルガ4」に試乗。クーペとの走りの違いとは。
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997型「タルガ」も直噴化

「ポルシェ911タルガ」――1960年代に厳しさを増したアメリカの安全基準を満たすべく、「カブリオレに屈強な固定式ロールオーバー・バーをプラスする」という形態で誕生したのがこのボディ。
その後、技術の進歩によりフルオープンボディでも高い安全性を確保できるようになると、「タルガ」はクーペ、カブリオレに続く“第3のボディ”として911シリーズの一員に定着した。

さらに、「最後の空冷911」こと993型に1995年投入されたモデルからは、同じ「タルガ」の名称を用いつつ、それまでのデタッチャブルトップ方式から電動のスライディング機構を備えたオールガラスルーフを採用。新たなる魅力をアピールした。当初のタルガボディに比べるとオープンエアの感覚は薄れたが、一方でクーペと同等の耐候性の高さや、髪の乱れを気にせずに外気との触れ合いを味わえるモデルとして、実は女性ユーザーからの支持も高いというのが昨今のタルガである。

そんな911タルガの最新モデル=997型が、クーペ/カブリオレの後を追ってマイナーチェンジ。その内容はもちろん「完全新設計による直噴エンジンの搭載」と「トルコンAT式のティプトロニックに代わるデュアル・クラッチ・トランスミッション、“PDK”の設定」という例のメニューがメインになる。

これにより、997型の911シリーズは、ターボチャージャー付きの「911ターボ」や「GT2」、高回転・高出力型のスペシャルエンジンを搭載した「GT3」を除いた全てのモデルで、前出のパワーパックへの刷新が終了したことになる。

タルガの特徴となるスライド式のガラスルーフ。サンルーフのスライド量は50cm、開口部の面積は0.45平方メートルとなる。もちろん紫外線をカットするUVフィルター付き。
タルガの特徴となるスライド式のガラスルーフ。サンルーフのスライド量は50cm、開口部の面積は0.45平方メートルとなる。もちろん紫外線をカットするUVフィルター付き。 拡大
911シリーズのなかで唯一ハッチバック式リアウィンドウも持つタルガ。リアシートを倒すと約230リッターの荷室容量を確保できる。ちなみに、安全のため、テールゲートを開ける場合は、ガラスルーフを閉め、サンルーフを開ける時はテールゲートを閉めないといけない。
911シリーズのなかで唯一ハッチバック式リアウィンドウも持つタルガ。リアシートを倒すと約230リッターの荷室容量を確保できる。ちなみに、安全のため、テールゲートを開ける場合は、ガラスルーフを閉め、サンルーフを開ける時はテールゲートを閉めないといけない。 拡大

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相次ぐマイナーチェンジの理由

実はポルシェ社は現在、V型も含めた全エンジンの組み立て作業が行われる本社工場で“大革新”が進行中。空冷時代から長年にわたりエンジンの組み立てをおこなってきた旧ラインを閉鎖し、隣接地にある新たな建屋内に築いた新ラインで、V型8気筒と水平対向6気筒の両直噴エンジンの組み立てを行うという新プログラムがこの夏からスタートしたばかりなのだ。

すなわち、このところ矢継ぎ早に実施された911カレラ系のマイナーチェンジのカレンダーは、そんなエンジンの新しい組み立てのシステムと密接にリンクしたもの。早いハナシ、ポルシェは今このタイミングで直噴ヘッドを持たない“旧世代フラット6ユニット”の生産を早急に終了したいに違いないのだ……。

そんな新たなパワーパックを手に入れた最新タルガで、北イタリアの湖水地方を流してみる。実は今回の国際試乗会に設定されていたのは、ポルシェの試乗会としては稀に見る“低速ルート”。「タルガはギンギンに走るモデルではないんだよ」というメッセージなのか、あるいはたびたびルート上に現れるラウンドアバウト(ロータリー)でPDKの変速の巧みさをあらためて味わって貰おうという趣旨なのか。いずれにしても、高速道路区間が全く設定されていなかったのは、ポルシェとしては異例中の異例のことだ。

欧州モデルは、センターコンソールにある「ポルシェ・コミュニケーション・マネージメントシステム(PCM)」のモニターがタッチスクリーン方式に変更され、モニターまわりがスッキリした。残念ながら日本仕様には、PCMは採用されずクラリオン製のナビゲーションシステムが装備される。
欧州モデルは、センターコンソールにある「ポルシェ・コミュニケーション・マネージメントシステム(PCM)」のモニターがタッチスクリーン方式に変更され、モニターまわりがスッキリした。残念ながら日本仕様には、PCMは採用されずクラリオン製のナビゲーションシステムが装備される。 拡大
タルガ4Sのエンジン。
タルガ4Sのエンジン。 拡大

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違いはボディ形状だけじゃない

そんなシチュエーションで乗った最新タルガは、新たな電子制御式の4WDシステム「ポルシェ・トラクション・マネージメントシステム」(PTM)を採用する。その走りは、率直に言って同じシステムを備えつつ、先に刷新された「カレラ4」シリーズと「基本的に見分けの付かないもの」だった。
他のカレラシリーズと同様に3.6リッターと3.8リッターの双方をラインナップするタルガだが、911シリーズのなかで最もカジュアルな装いであると考えれば、個人的には前者で十分な魅力を味わえるかと思う。

肝心のトランスミッションは、欧米市場向けにはMT仕様も設定するものの、日本市場向けには“PDK”のみとなる。しかしこれも前述の理由によって、微低速域からあくまでも滑らかな変速動作を実現するPDK仕様に限っての導入という日本のインポーターの判断は、十分に納得できる事柄といえる。

最新のタルガシリーズの走りで唯一、今回明確に感じとれたクーペ/カブリオレとの違いは、3.8リッターモデルには標準、3.6リッターモデルにはオプション設定される、電子制御の可変減衰力ダンパー“PASM”の味付けだ。「スポーツ」モードで走行した際のダンピングのハード化がずっと緩いのだ。
既存のカレラシリーズではこのモードを選ぶとサーキット走行をも意識したかなりハードな乗り味となるのに対し、タルガでは「ノーマル」からの変化は明確ながらも、それでも高度な快適性が保たれる。
実際、「足回りのセッティングはまずは快適性に配慮したのがタルガの特徴」とのこと。そんな開発陣のコメントが全てのキャラクターを象徴する、911タルガなのである。

(文=河村康彦/写真=ポルシェジャパン)


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【スペック】タルガ4:全長×全幅×全高=4435×1852×1310mm/ホイールベース=2350mm/車重=1530kg/駆動方式=4WD/3.6リッター水平対向6DOHC24バルブ(345ps/6500rpm、39.78kgm/4400rpm)(欧州仕様車)/価格=1466.0万円
【スペック】タルガ4:全長×全幅×全高=4435×1852×1310mm/ホイールベース=2350mm/車重=1530kg/駆動方式=4WD/3.6リッター水平対向6DOHC24バルブ(345ps/6500rpm、39.78kgm/4400rpm)(欧州仕様車)/価格=1466.0万円 拡大
河村 康彦

河村 康彦

フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。

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