第375回:SCOOP!! ボルボが変わった……
いまだかつてないセクシーSUV「XC60」現る!
2008.10.30
小沢コージの勢いまかせ!
第375回:SCOOP!! ボルボが変わった……いまだかつてないセクシーSUV「XC60」現る!
大胆に変身したボルボ
うーむ、ついにコッチの世界に来てしまいましたね……という感じですわ。ボルボの新型SUV「XC60」。
前回お届けしたように、小沢はヨーロッパ取材に行っておりました。メインはボルボ期待の「XC60」。全長4628×全幅1891×全高1713mmのいわゆるプレミアムコンパクト(ミディアム?)SUVで、現在不況のヨーロッパでも猛威、ってほどじゃないけど高い人気を誇る「BMW X3」や「VWティグアン」あたりと同じカテゴリーだ。
発表は去年のジュネーブショーで、あの時は「ボルボもついにこのクラスに参入か!」ぐらいに軽く考えてたんだけど、実車をみてビックリ!! 新規参入どころか、こりゃボルボブランド全体の一大革命であり大変身ですよ!!
まずはデザイン。試乗会はスペインのバレンシアで行われたんだけど、ひと目みてムムッ? 写真だけ見た時は、単純に今までの路線の継承で、ようするに「XC90」の縮小版でしょう? と思ってたけど全然違う。
横長逆台形のフロントグリルといい、変形ヘッドランプといい、たしかに従来のボルボの路線を逸脱はしていない。しかし、よくよく見るとグリルはよりサイズの大きい、縦長の逆ホームベース型になってるし、ライトも有機的かつ立体的なデザインになってる。
そしてなんといっても全体のフォルムであり、醸し出すムードがたまらない。以前のマッチョだがマジメでスクエアな感じはどこへやら。真横から見るとかなり前のめりなクサビ形デザインになってるし、サイドの断面も最新アウディを思わせるほどエレガント。
ようするに現行ボルボの象徴だった筋肉モリモリなショルダーは残ってはいるものの、全体になだらかかつとろけるようなセクシー路線に“翻訳”されており、まさに今流行のエモーショナルデザインなのだ!
前後バンパーの四つ角には、鋭くえぐられた“エラ”のような絞りも付いており、これまた刺激的。
いわばムキムキのマジメマッチョな男が、いきなりほどよく遊びの入ったセクシー部長になっちゃったようなもんで、これはかなり大胆な変身だ。
個人的には、X3はもちろん、今後このクラスを引っ張るであろう「アウディQ5」よりも情緒的なカタチだと思う。
完璧な宗旨替え
で、デザインだけでなく、乗り味まで同様に大胆チェンジしてるんだから驚いちゃう。
新型XC60のプラットフォームは現行S80やV70と基本的には同じものを使っているはず。でもどうやらチューニングはかなり違うみたいで、乗り心地はしなやかだわ、ステアリングは軽くてビビッドだわ、今までの禁欲的な感じは一切ないのだ。
今回乗ったのは最速グレードの「T-6」。エンジンは3リッターの直6ターボを搭載してるんだけど、これが285psという最高出力以上に悦楽的。どうやらペダル開度に対し、過剰な早開き設定にしているらしく、ちょっと踏んだだけでグワーッと出て、吹けそのものもやけに軽い。
たしかに今までのボルボ車が持ってた安心感、人に対する優しさは失われてはいない。しかし、昔はデザイン、乗り味ともに「ちょっと退屈ぐらいが安全でいい」し、それこそ「ボルボらしさ」としていたのを、このXC60で完璧に宗旨替えしてしまったと俺は思う。
この裏には、3年半前にダイムラーから移籍してきたスティーブ・マッティンという開発担当のシニアバイスプレジデントの存在があるそうで、聞けばこのXC60は彼がイチから担当した初めてのクルマなんだとか。実際、担当エンジニアにさりげなく聞いたところ「今後のボルボはこの路線でいくかも?」という話だった。売れ行きにもよるが、このクルマをきっかけにボルボ全体がイメチェンする可能性も十分にある。
もはや「いい人戦略」も限界か……!?
それと、これは個人的見解だが、ここ10年ほどのボルボは正直、いき詰まっていたと思う。以前のボルボは、伝統的なスクエアデザインと、中身のスウェーデン的なダルさと、高い衝突安全性のイメージがちょうどよくバランスして爆発的人気を博した。しかし、進化の過程でスクエアデザインはモダンマッチョ路線に替わり、走りもどんどんアップデートされて、以前のボルボのイメージとはかけ離れていった。同時に販売も減少していった……。
なんというか昔の「いい人イメージ」が保てなくなったし、時代が求めなくなったのだ。かといってそれを捨ててしまってはボルボじゃなくなるし、安全第一というフィロソフィーを捨てるわけにもいかない。
で、いろんなカタチを模索していったあげく辿り着いたのが、このある種のフェミニン路線だと思う。見た目はほどよく美しくトレンディで昔ほどイカつくない。走りは横置き直列6気筒エンジンの特性を活かして、思い切って快楽方向に振ってあると。
最後になっちゃったけど、このモデルから日本市場はまだ未決定だが「シティセーフティ」と「オートブレーキ」というハイテク安全デバイスも採用された。簡単にいうと低速走行時に衝突の危険があると自動でブレーキをかけてくれるシステムで、一部海外では装着車の保険料が2割程度下がるっつう優れもの。安全装備のアップデートだって怠っちゃいません。
もちろんこの路線にはライバルも多く、BMW、アウディはもちろん、日本車も立ちはだかってくる。しかし、XC60を見たところ、走りもそうだが、特にデザインはかなりいいとこ付いてると思った。もちろん、コイツは実物を見なきゃ伝わらない部分なんで、来年に入ったら実際に乗ってほしいが、マジな話、アウディQ5の真っ向ライバルになるかもしれない。
とにかく生まれ変わったセクシーボルボ、必見ですよ!
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第454回:ヤマダ電機にIKEAも顔負けのクルマ屋? ノルかソルかの新商法「ガリバーWOW!TOWN」 2012.8.27 中古車買い取りのガリバーが新ビジネス「WOW!TOWN」を開始。これは“クルマ選びのテーマパーク”だ!
-
第453回:今後のメルセデスはますますデザインに走る!? 「CLSシューティングブレーク」発表会&新型「Aクラス」欧州試乗! 2012.7.27 小沢コージが、最新のメルセデス・ベンツである「CLSシューティングブレーク」と新型「Aクラス」をチェック! その見どころは?
-
第452回:これじゃメルセデスには追いつけないぜ! “無意識インプレッション”のススメ 2012.6.22 自動車開発のカギを握る、テストドライブ。それが限られた道路環境で行われている日本の現状に、小沢コージが物申す!?
-
第451回:日本も学べる(?)中国自動車事情 新婚さん、“すてきなカーライフに”いらっしゃ〜い!? 2012.6.11 自動車熱が高まる中国には「新婚夫婦を対象にした自動車メディア」があるのだとか……? 現地で話を聞いてきた、小沢コージのリポート。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。