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【スペック】全長×全幅×全高=4635×1770×1430mm/ホイールベース=2670mm/車重=1500kg/駆動方式=4WD/2.5リッター水平対向4DOHC16バルブ・ターボ(285ps/5600rpm、40.0kgm/2000-4800rpm)/価格=535万5000円(テスト車=555万4500円/マッキントッシュサウンドシステム=16万8000円/ボディカラー(サテンホワイトパール)=3万1500円)

スバル・レガシィS402セダン(4WD/6MT)【試乗記】

レガシィ自身が目指した地平へ 2008.09.08 試乗記 島下 泰久 スバル・レガシィS402セダン(4WD/6MT)
……555万4500円

「S402」はSTIが手がけた“スペシャルレガシィ”。それは、単なるスポーツ性の向上に力を注いだものではなく、グランドツーリングカーとしての理想をSTI流に追求したモデルだった。
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当たり前のことを当たり前に

あれこれスペックを読み込むよりも、まずは乗り込んで真っ直ぐな道をしばらく走ってみればいい。STI=スバルテクニカインターナショナルが、その知識とノウハウをフルに活かしてつくり上げた「レガシィS402」の本当の価値を知るには、何よりそれが一番である。

ステアリングの操舵力は決して重くはないが、それでいて直進を保持するのも非常にラク。それはボディとサスペンションの動きが高い精度で連関しているからだろう。路面のうねりを拾っても、硬過ぎないサスペンションがしなやかに動いてそれを吸収し、車体を上下に煽ることなく、また余計な修正舵を求めてもこない。レガシィS402は、そうやって当たり前のように直進していくが、それは決して、どのクルマも当たり前にできていることではないのだ。

もし、直進だけでは今ひとつピンと来なかったとしても、ひとつふたつコーナーをクリアすれば、今度こそ納得するに違いない。ステアリングを切り込んでいく瞬間、掌にはタイヤが横方向のグリップを発揮していくさまがありありと伝わってくる。ほんの指1本分の操作にさえ、その反応はダイレクト。ロール自体は決して小さくはないし、タイヤだって殊更にグリップ指向というわけではない。しかし、そんなふうにすべての挙動が操作とピタリ一致するため、持てる旋回力を容易に、余さず使い切ることができるのである。


スバル・レガシィS402セダン(4WD/6MT)【試乗記】の画像 拡大

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センターコンソールには、402台限定を示すシリアルナンバープレートが備わる。
センターコンソールには、402台限定を示すシリアルナンバープレートが備わる。 拡大
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持続的な歓び

この走りを実現するため供せられたアイテムはと言えば、まずボディまわりではフレキシブルタワーバーが挙げられる。単なる突っ張り棒ではなく、中央にピロボールを挟み込んだこれは、主にコーナリングに効く横方向の入力に対してはガッチリと高い剛性を確保する一方、乗り心地や直進性などに影響する縦方向あるいは捻り方向の入力は適度に逃がして、しなやかな走り味をもたらす。前後のフレキシブルロワアームバーも、同じように剛性としなやかさを両立させるもの。サスペンションのセッティングも別物とされているようだが、それも、こうした土台となるボディづくりとセットで語るべき話なのだ。

ただし、STIが心血注いでセットアップしたシャシーだからといって、一般的な意味でのスポーツ性を追い求めたのではないということは、一応強調しておく。ワインディングロードをカッ飛ばそうとすると、特にS字の切り返しなどではロールをもう少し抑えたくなるし、グリップ自体もっと欲しいとも思う。しかし、S402の狙いはそこではない。目指したのは「究極のグランドツーリングカー」と謳われているように、長距離を走って疲れず、そして刹那的ではなく持続的な歓びを享受できる。そういう領域なのである。

それは本来、ベースとなったレガシィ自身が目指した地平だ。しかし、特に日本の市販車はコスト等々の制限によって、理想を極限まで追求することは難しい。つまりS402は、そうしたメーカーの仕事をSTI流に補完したモデルだと考えていいだろう。


スバル・レガシィS402セダン(4WD/6MT)【試乗記】の画像 拡大

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ブレーキはフロントに、ブレンボ製のモノブロック対向6ポッドキャリパーを採用。235/40R18サイズのPOTENZA RE050Aは、S402専用チューニングが施されたもの。
ブレーキはフロントに、ブレンボ製のモノブロック対向6ポッドキャリパーを採用。235/40R18サイズのPOTENZA RE050Aは、S402専用チューニングが施されたもの。 拡大

こだわりをあと少し

しかし不満もないわけではない。たとえばエンジン。B4にはない水平対向4気筒2.5リッターターボに、さらに専用のツインスクロールターボや等長等爆エグゾースト等々を採用したこの心臓は、それでも依然としてボトムエンドのトルクが細く、6段MTとの組み合わせを以てしても、もどかしさから逃れられない。レガシィとしては、あるいはボクサーターボとしてはこれでも悪くはないのだが、せっかくSTIがここまでこだわったなら、最高出力は285psも要らないからタービン径をもっと小さくして、最大トルク40.0kgmの発生回転数を現状の2000〜4800rpmよりさらに引き下げる、なんて試みがあっても良かった気がする。贅沢な悩みではあるが、なまじシャシーのデキが良いだけに、期待値も高まってしまうのだ。

このレガシィS402、プライスボードには535万5000円という価格が掲げられている。これは「B4 2.0GTスペックB」より200万円以上高く、「BMW 323i Mスポーツ」だって買える価格だ。レガシィにこれだけ払うのは抵抗があるという人も少なくないだろう。しかし、それでいいのだ。そこに価値を見出した人にとっては、このレガシィS402はほかに代わるもののない、至高の存在となるはずだから。

(文=島下泰久/写真=荒川正幸) 


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本革仕様となるフロントシートには、低反発の専用クッションが使われる。
本革仕様となるフロントシートには、低反発の専用クッションが使われる。 拡大
島下 泰久

島下 泰久

モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。

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