BMW X6 xDrive35i(4WD/6AT)【試乗記】
見かけによらない 2008.09.01 試乗記 BMW X6 xDrive35i(4WD/6AT)……943万8000円
“新しいコンセプトのクーペ”を標榜する「BMW X6」がデビュー。特徴的なデザインに包まれたその新しさを、3リッター直6モデルで探った。
とにかく目立つ新デザイン
「BMW X6」はSUV本来の姿を追求したモデルだ。スポーツユーティリティ車であるから、いさぎよく2シーターでもよかったのだろうが、そこまで割り切るには至らず。まずは4ドアクーペとスタイリングで魅了し、実用性も適度にカバーしつつパーソナルユースに適した性格を強めている。
クーペ特有のなだらかなルーフラインは、下からの目線に対してより優雅なシルエットを映し出す。車高の高いSUVともなれば、立ったままの自然な目線から眺めてもそれが強調される。
そして、より遠くからでも目立つことになる。とにかく街を走っていて恥ずかしいくらいの視線を浴びる。自己主張が強く目立ちたがり屋の多い、アメリカ市場で大ウケすることは間違いないだろう。これぞ商品企画の冥利につきる。(ヤッタね!)
パッと見ると(特に後ろから見ると)、巨大なサイズを感じるものの、中に入って運転してみるとさほど大きく感じない取りまわしのよさがある。
「xDrive35i」は直噴ガソリンターボで、直列6気筒3リッターから306psと40.6kgmを発生。6段ATを介して2250kgの重量級ボディを最高速度240km/hまで引っ張り、EUモードで9.2km/リッターの好燃費もマークする。都内発で箱根に向かった実用燃費でも、ドラコンの数値は5.0km/リッターを割らなかったから、満タン85リッターの燃料タンクをもってすれば、400kmは無給油で走れることになる。
小さな不満は、Mモードで走っていると停止後2速発進になってしまうこと。Dならばまだしも、せっかくシフトを楽しんでいる最中で2速発進は解せない。Mにしてあっても、レブリミット付近ではシフトアップしてエンジンをもちろん保護するし、逆に負荷が増してくれば自動的にギアは下位のポジションに落ちる。うがった見方をするならば、1速と2速のレシオが開き気味だから、加速の落差を感じさせないためとも受け取れるが、シフトショックは少なく繋がりはスムーズだし、1速でも50km/hあたりまでカバーできるほどエンジン回転には余裕もある。
全体の加速性能に不満はない。厳しい見方をしたところでV8モデルとの差は発進時、スッと出る瞬間だけであろう。ただ、ブーンとエンジン音が高まってから出るトルコンスリップはBMWに似合わないと思うが……
走りはひたすら安定志向
xDriveはBMW伝統の4WDシステムに与えられた呼称。縦置きフロントエンジンで後輪を駆動する構成から、プラネタリーギアのセンターデフを経て、前40%後60%のトルク配分を基本とし、併設する電磁式多板クラッチを電子制御して、更にLSD的な用途として微調整のトルク配分も行う。
この多板クラッチは後輪の左右トルク配分を調整する部分にも使われている。タイヤは前255/45R19、後285/50R19とサイズを変えているが、回転差はもちろんセンターデフで吸収する。後輪を太くしたのは強大なトルクに対応するだけでなく、アンダーステアへの対応。このクルマもまた最近ありがちなBMWのステア特性にならい、回転中心を後方に置き、前輪をキビキビ動かすことでスポーティさを強調している。
後輪配分の60%トルクを使ってのオーバーステア特性を楽しむクルマではなく、ブレーキを4輪バラバラに摘むヨーコントロールなどとともに、徹底した安定性を志向している。ただし2トンを超す重量は、たとえばボートを牽引する際などには威力を発揮するだろうが、あくまでも平坦路での話。路面傾斜の強いところでは重さが裏目に出るから、用心も必要だ。
各種電化製品による便利装備も最近のクルマの例に漏れない。スイッチによるサイドブレーキもそのひとつ。Pレバー手前の「AUTO H」ボタンを押しておけば、信号待ちの間ずーっとブレーキペダルに足を載せておく必要はないし、坂道で動きだす心配もない。ただしサイドブレーキ本来の用途である緊急時などにこれだけで止めようとすると、スイッチゆえにオン/オフさせるだけで微調整は効かない。あらかじめ安全な機会に試しておくことをお勧めする。
細かいことはキニスルナ!?
背の高いクルマで不安になりがちな視界については、後方はバックモニターが使え、ソナーの備えもある。左サイドもナビ画面に側方の映像が写る。
ただし、これらはクルマが動きだすと消えてしまうから、走行中に後方やサイドを確認することはできない。カメラはミラーに設置されており、ミラーより前からノーズ直下の死角まではカバーしない。
バックドアはスイッチで開閉できるが、リッドそのものが高いし、トランクの敷居も高いから重量物の出し入れには難儀する。
この自動オープナーのスイッチはセンターコンソール前、右端の左サイドモニタースイッチの隣にある。一度渋滞速度で走行中に、横のバイクを見ようとして誤って触れたため、走行中にもかかわらず開いてしまった(!)のだが、いざ閉めようと思っても車内からの操作は不可。一旦停止して後ろに回ってオートクローズボタンを押したが、雨降りだったので濡れる破目に。せめて、左端にあるバックモニタースイッチとボタンの場所を入れ換えて欲しいものだ。なお、天井の低い駐車場でぶつけないように、リッドの開閉高さを調整することはできる。
“図体の大きなアメリカ人向け”と思われる箇所のうち、美点として挙げられるのは、クーペらしいデザインに反してリアシートの居住空間が広いこと。さらに、シートのサイズがたっぷりしていること。
やや不満なのは、フロアが高く乗降性に難があること。サイドステップは備わるものの、幅が狭いうえ外向きに若干の傾斜がついており、滑りそうで使いたくない。直接路面へ下りる時にズボンの裾を汚しやすい。また乗り込みに際してもアシストグリップの類がなく、特に助手席はつかまるものがない。細部にまだまだアメリカ的におおらかな詰めの甘さもあるが、大型高級SUVとして存在感のあるモデルだといえる。
このスタイリングに好感をもてる人にとっては狙い目の一台。ただし、このクラスのユーザーならば、たとえもう200万円高くとも、V8モデルの方が魅力的に映るだろう。
(文=笹目二朗/写真=峰昌宏)
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笹目 二朗
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