BMW Mモデル試乗会【試乗記】
熱いスピリットから生まれた 2010.11.04 試乗記 BMW M3クーペ(FR/7AT)/M6クーペ(FR/7AT)/X6M(4WD/6AT)BMWのハイパフォーマンスモデル「M」が一同に会するイベント「BMW M サーキットデイ」が富士スピードウェイで開かれた。そのパフォーマンスをサーキットで堪能したリポーターは、Mモデルの魅力は走りだけではないと感じたようだ。
サーキットで味わう気持ち良さ
BMWのMモデルを思い切りサーキットで楽しめる。そんなイベントが「BMW M サーキットデイ」だ。開催されたのは2010年10月7日、快晴の富士スピードウェイ。抽選を勝ち抜いて参加を果たした一般ユーザーに恐縮ながら混ぜていただき、このイベントに参加してきた。
それにしても、この日の富士はいい天気だった。澄み渡った空に富士山もクッキリ。胸をワクワクさせつつサーキットに到着してまず驚かされたのが、用意された車両の数だ。現在、Mモデルとしてラインナップされている「M3クーペ&セダン」「M6」、さらには「X5M」「X6M」がすべてそろい、ウォーミングアップを済ませていたのである。
Mの沿革について、そしてサーキット走行についてのブリーフィングを終えた後にはコースへ。参加者は早速、Mモデルの運転席へと案内される。走行は数台ずつのグループに分かれての先導付き。「アクティブハイブリッド7」などが使用された先導車には元F1ドライバーの高木虎之介氏をはじめとする現役&元レーシングドライバーが乗り込み、後に続く車両の様子を確認しながら、そして無線をつかってアドバイスを送りながら、徐々にペースを上げていく。そうして最終的に参加者は約1.5kmにもおよぶ世界最長のロングストレートでは公道では絶対に味わえない200km/hオーバーの世界を体験し、Mモデルのポテンシャルの一端に触れることができたのだ。
その後、取材陣向けにフリー走行の機会も設けていただき、再度コースへ出ることができた。Mモデルの奥深い走りのよろこびは、すでに一般道では何度も経験済みではあったが、サーキットでそれを解き放つ気持ち良さは格別のものがあった。
コントロールするよろこびがある
もっともサーキットが似合う1台といえば、やはりM3だろう。はじけるように8000rpmオーバーを極めるV型8気筒エンジン、優れた前後重量配分、念入りにセットアップされたサスペンションとディファレンシャルが可能にするのは、まさに思いのままの走りだ。挙動にはドライバーの操作がすべてダイレクトに反映される。クルマ側からの余計な手助けは無いから、うまくいかなければクルマの側からうまくいっていないというインフォメーションがしっかり伝わるし、うまくいけばこの上ないクルマとの一体感を得ることができる。
肝心なのは、だからといってシビアな操縦性だというわけではないということ。クルマが今どんな状態なのかをステアリングやシートなどを通じて濃密に伝達してくれるから、クルマとしっかり対話していれば、大きく失敗する前に修正できる。この対話性、コントロール性こそMの妙味。腕の良し悪しに関係なく、自分のペースでクルマをコントロールするよろこびを味わうことができるのだ。
そんなMモデルの楽しさは、他のモデルにも基本的には共通。その上でM6には、独特のサウンドとともに、まさに天井知らずに回るV型10気筒エンジンという強烈な個性が加わる。X5M、X6Mも実は同様。この大柄で背の高いSUVが、なんのちゅうちょもなくサーキットで全開にできて、しかもM3と同じベクトルの操る喜びまでもたらしてくれるのは、一般道での胸のすく走りっぷりから想像していたこととはいえ、やはり驚きに値するものだったと言えるだろう。
個人的にはかねてからファンだったX6M、あらためて「欲しい!」と思ってしまった。高いパフォーマンスを誇るSUVは今や少なくないが、X5M、X6Mにとって動力性能は魅力の一部でしかない。SUVだろうが4WDでターボでATだろうが、走らせればこれが紛れもなく「M」なのである。
麗しい関係
最後には、この日のために来日したBMW M社のカイ・ゼグラー社長の会見も行われた。「日本のユーザーはブランドや価格ではなく、本物を知っている熱狂的なファンなのがうれしい」というゼグラー社長。ここで日本専用車となる「M3クーペコンペティション」を発表した他、今後はMモデルのスペシャリストディーラーの展開を検討しているという、うれしい言葉も残してくれた。
さらに、こんなコメントも。
「スポーツカーは夢。それが無い人生は退屈です。そこには本当のスリルがあります。若い人がスポーツカーにひかれなくなっているのは残念です。理由はいくつかありますが、クルマの価格がどんどん高くなっているのは事実。そこで私たちは来春、『1シリーズMクーペ』をデビューさせます。チープではありませんがアフォーダブルなクルマになりますよ」
この言葉に、熱いクルマは、熱いスピリットがあってこそ、やはり生み出されるのだとあらためて実感させられた。
Mモデルの素晴らしいのは走りだけじゃない。ただ良いクルマをつくり、ユーザーのもとに届けるだけでなく、その価値を多くの人が体験できるこうしたイベントを開催してくれることも、称賛したいところだ。ここには熱いクルマを媒介にした、熱いユーザーと熱いメーカーの麗しい関係が成立しているのだと、今回大いに実感させられたのである。
(文=島下泰久/写真=高橋信宏)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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