ホンダ・フリード Giエアロ(FF/CVT)/FLEXiエアロ(FF/CVT)【試乗速報】
ヒットの予感 2008.06.11 試乗記 ホンダ・フリード Giエアロ(FF/CVT)/FLEXiエアロ(FF/CVT)……252万円/248万8500円
“外は小さく中は広々”の新型車「フリード」がデビューした。ちょうどよさを謳う、その走りは? 居住性は? 都会の道で実力を試した。
欲が出るパッケージング
「フリード」は、いわゆる5ナンバーサイズの小型ミニバンで、外寸はコンパクトながら内容を充実させ、使いやすさを追求したクルマだ。
従来の「モビリオ」も狙いは同じ。しかし、欧州の路面電車をイメージしたクリーンなスタイリングの評価は高かったものの、若いユーザーが欲する刺激は、少々物足りなかった。そんな反省に立ってか、今度は「インスパイア」でも試みられた攻撃的な目元や、斜めの曲線を多用した躍動的な面構成を特徴とする。見た目の安定感を求めるには、水平垂直の直線的なデザイン処理も有効だが、不安定要素の多い現代の世相を反映して(?)、卯浪をかきわけて進むには、このくらい強い主張も必要というわけだ。
空力特性改善のため大きく寝かせたウィンドウとノーズの一体化は、燃費対策という時代の要請でもある。
外観同様、室内も大きく変わった。広いウィンドウゆえに広くなったダッシュボードの棚は、2段階に高さを分けることにより冗長さを無くし、さらに広々と見せることに成功している。
狭い駐車場などでは、片側に寄せて停め、リアのスライドドアを使って乗り降りする方法が定着しつつある。そんな時に便利なウォークスルー用の「廊下」の確保も特記事項だろう。動力や駆動系のメカを前方に小さくまとめたFFシャシーにより、キャビンの容積を大きく採り、無理のない3列シートが設定されているのも、フリードのウリ。
シートレイアウトは、5人乗りだけでなく、7人乗りと8人乗りも選べる。ついでに言えば、法規上9人乗りにして、チャイルドシートの設置場所を確保し、夫婦ふたりと双方の両親4人、さらに子供3人という家族を一気に運べるようにして欲しいところだ。フロントをベンチシートにすれば、人が乗らなくても小物の置き場として便利な空間となろう。そんな可能性も考えられるほどに、有効スペースの大きさは魅力といえる。
発進は軽快、動きは活発
ドアヒンジにマイナスキャスターをつけ、上方を大きく開くようにしたドアは、ピラーが寝たクルマにありがちな、頭をぶつけそうな乗りにくさはない。
それ以前にルーフは高くフロアは低いから、乗降性そのものは良好。座面の高さもあって、運転席からの視界も上々。三角窓も有効でドアミラーの位置をプジョー並に後退させた結果、ピラー周辺の視界も不満なし。ノーズはまったく見えないボディタイプながら、アンダーミラーが欲しくなるほどのオーバーハングでもない。
フリードのベースはコンパクトカーの「フィット」であり、搭載されるエンジンは1.5リッター(118ps)のみ。変速機はトルコン付きのCVTである。なおデュアルポンプ式の、簡便な機構をもつ4WD仕様もあり、この場合の変速機は一般的な5ATとなる。
走り出してしまえばほとんど触れることのないシフトレバーはインパネシフト。インストゥルメントパネル中央部の、足元空間は広々としている。横方向のウォークスルーもウリにする所以だ。
電気モーターアシストによる、パワーステアリングの操舵力は軽めの設定で、さほど路面感覚を伝えるタイプではないけれども、反応は素直で遅れがないため違和感は少ない。キャスター角を3.2度と大きめに設定し、トレールをオフセットさせていないから、復元性はまずまず。切り込むほどにキャンバーが増して、グイッと向きを変えてくれる頼もしさがある。従来のホンダ車に比べ、安定性は格段に向上した。
エンジンは音は、静かでスムーズ。トルコンが加わったCVTは、ショックの無い変速はもちろん、クリープも大きすぎず、滑らかな走行感覚はホンダならでは。駆動系全体のスムーズさは、この価格帯のクルマのなかでは最上級の洗練度をみせる。
パワーは数字の上ではフィットより若干少ないが、これはボディ違いによる排気管の取りまわしが要因。フィットより低いギアリングの設定と、もともとカバーするギア比の幅が大きいCVTゆえに、約1.3トンのボディ重量に対し、パワーが足りないような印象はない。むしろ、発進は軽快で動きは活発に感じられる。また高速道路では低い回転での巡航が可能で、低燃費と静粛性が強調される。
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何列目でも合格点
乗り心地は良好だ。姿勢はおおむねフラットで、ダンピングもまずまず。鋭い小突起などを乗り越えた際のハーシュネスも軽い。
シートは座面後傾斜角がやや浅く、しかも座面断面は凹面傾向にある。表皮は滑りにくい材質が選ばれており、腰が前にずれてくるおそれは少ないものの、長時間では腰にかかる負担が大きくなるタイプだ。2列目、3列目のシートも同様にこの傾斜角は少なめ。折り畳めるタイプのシートにしてはクッションは厚め、サイドのクッションは盛り上がっていて横方向のサポートを助ける。
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3列目の居住性は決して大きな余裕はないものの、つま先はシート下に入るし、膝の辺りはミニマムながら大人がちゃんと座れ、ヘッドクリアランスも十分。通常トランク部分の前後長はミニマムであるが、天井付近に3列目シートを畳んで釣りあげてしまえば、広大でスクェアな空間が出現する。
フィットで培った技術には更に磨きはかかり、シートアレンジなどの使い勝手もいい。フリードの走行性能に関しては、ハード面での魅力は確立されている。強いて要望として加えるならば、欧州車のレベルが上がってきている実態に鑑み、さらなる制動能力の向上と、パーキングブレーキの2度踏みリリース方式の改善くらいか。
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この新しいスタイリングが受け入れられて、フィット以上のヒットとなることを大いに期待したい。
(文=笹目二朗/写真=峰昌宏)

笹目 二朗
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