フォルクスワーゲン・パサートCC(4WD/6AT)【海外試乗記】
行き場を失ったVWユーザーへ 2008.05.26 試乗記 フォルクスワーゲン・パサートCC V6 4MOTION(4WD/6AT)質実剛健と評されることが多いフォルクスワーゲンから、異色のモデルが登場した。その名は「パサートCC」。第一印象をドイツから報告する。
紛らわしいけどクーペです
車名の「CC」が表しているのは“クーペ・コンバーチブル”ではなく、“コンフォート・クーペ”の意味だという。クーペでありながら4ドア。そう聞くと脳裏には「メルセデス・ベンツCLS」の姿が浮かんでくるが、内容からすると日本のユーザーの受け取り方は、それとはちょっと違ったものになりそうな気がする。
「パサート・セダン」に対して全長を31mm、全幅を36mm拡大する一方、全高を50mm下げたボディは、長めのオーバーハング、大きく寝かされたウィンドウ、そして低いルーフによって、セダンとは比較にならないくらいエレガントな印象を醸している。その一方でフロントマスクなどは割とおとなしめで、全体の雰囲気は、むしろ上品という印象だ。
インテリアのしつらえも悪くない。運転席まわりのデザインはセダンから引き継がれているが、計器周辺や空調パネルなどは専用デザインとされ、またお馴染みブルーとレッドの透過照明も白に統一されている。
一番の不安材料は、このスタイリングで、どれだけの室内空間を確保できているかということだが、ルーフが低く、しかも試乗車にはパノラマベントサンルーフと呼ばれるガラスルーフが装備されていたにもかかわらず、意外なことに頭上を含め、窮屈さはどこにも感じることがなかった。それは2名用とされた後席についても同様。足元も頭上も空間には不満はなし。左右方向にはやや狭いとはいえ、この外観から想像するより、はるかに居住性は良い。気になったのはむしろ視界で、Aピラーの太さもあって特に助手席側の車両感覚が掴みにくく、駐車アシスト機能がないと東京では苦しいかもしれないと感じた。
日本仕様は「2リッターTSI」と「3.6リッターV6 4MOTION」
ラインナップは、当面はガソリン仕様が2モデル設定されるのみ。3.6リッターV6 FSIと1.8リッター直4 TSIがそれだ。このうち3.6リッターは「トゥアレグ」に積まれている狭角ブロックのものと基本的に共通だが、最高出力が300psに高められ、また6段DSGが組み合わされている。駆動方式は4モーションと呼ばれる4WDだ。
V6エンジンは吹け上がりに抑揚がなく、フィーリングとしてはあまり面白いと感じられるものではない。しかしながらパワーは十分だし回転もそれなりに緻密。適度に感じられる重厚感は、このクルマに合っている。かたや1.8リッターTSIは前輪駆動で車重が軽いこともあって小気味よく走るが、残念ながら日本には入ってこない。日本にはその代わりに2.0リッターTSIに6段ATを組み合わせたモデルが投入されるという。
今、フォルクスワーゲンを選ぶなら、やはりDSGが欲しい。となると、選ぶべきはやはりV6 4モーションかな……という気持ちをさらに後押しするのが、こちらに標準装備されるDCCアダプティブサスペンションである。いわゆる減衰力可変式ダンパーだが、これが非常にしなやかな乗り心地を実現しているのだ。試乗する前にタイヤはオプションの18インチだと確認していたのだが、そのことが信じられないほど乗り心地がいい。降りてから再度サイズを確かめてしまったほどである。
但し、気になるところもある。コンベンショナルなサスペンションの1.8リッターTSIモデルと較べると、ステアリングの正確性がやや劣るのだ。ロールが抑制されたことで、元々ステアリングの反応がやや過敏なところが強調されてしまったのかもしれない。
パンク穴を自己補修するタイヤ
新型パサートの新技術で注目すべきは、全車に装着されるコンチネンタル製の「コンチシール」と呼ばれるタイヤ。これはトレッド裏側を特殊なポリマーでコーティングし、パンク時にはそれが直径5mmまでの穴を自己補修してしまうという画期的な代物である。穴が塞がればランフラットタイヤのように交換は要らないし、乗り心地やハンドリングも犠牲にならないのだ。これは当面、フォルクスワーゲンの独占採用になるという。
見映えのするスタイリングに十分な居住性、そして心地良い乗り味を兼ね備えたパサートCCは、CLSのようなニッチかと思いきや、その高い居住性や快適性からして、特にここ日本では、すんなりパサートの上位モデルとして受け入れられそうに思える。実用車然とした現行パサートに食指が動かず、かといってトゥアレグには乗れないという行き場を失ったフォルクスワーゲン・ファンにはもちろん、価格によっては3シリーズやA4あたりのユーザーにもアピールするかもしれない。
日本での販売開始は今年終盤の予定。上陸したら、ちょっと面白いことになりそうだと期待させる1台である。
(文=島下泰久/写真=フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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