クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック
【スペック】全長×全幅×全高=4198×1842×1345mm/ホイールベース=2468mm/車重=1415kg/駆動方式=4WD/2リッター直4DOHC16バルブターボインタークーラー付き(272ps/6000rpm、35.7kgm/2500-5000rpm)(欧州仕様車)

アウディTTSクーペ 2.0 TFSI(4WD/6AT)【海外試乗記】

スポーツカーの新人類 2008.05.21 試乗記 サトータケシ アウディTTSクーペ 2.0 TFSI(4WD/6AT)

「アウディTT」に、新たな頂点モデル「TTS」が登場。272psのハイパワーエンジンと4WDシステムを組み合わせたニューモデルは、どんな走りを見せるのか? ドイツ本国からのリポート。
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

新しい匂い

クリック感が小気味よいシフトセレクターを「コンコン!」と2度手前に引く。すると、Sトロニックは瞬時に6速から4速へシフトダウン。スムーズにエンジン回転が上がり、いかにもヌケのよさそうなバリトンの排気音が盛り上がる。
「アウディTTS」は、がらがらに空いているアウトバーンの追い越し車線をスムーズに加速。
ミュンヘンからアウディ本社のあるインゴルシュタットへ向かった――

こう書くと、フツーの高性能車だ。けれども実際にステアリングホイールを握る身としては、フツーには思えない。「アウディTT」のシリーズ最強モデル、「TTS」のドライブフィールからは“新しい匂い”がプンプンする。

じゃあ、どんな風に新しいのでしょう? たとえば通常、高性能バージョンのパワーアップは「オーディオのボリュームを上げる」ようなイメージだ。でもTTSは、ボリュームを上げると同時に音質も向上させている感じなのだ。

TTシリーズのトップグレードとなる「TTS」。ヘッドランプはR8やA5らと同様、LEDを併用したデザインになった。
TTシリーズのトップグレードとなる「TTS」。ヘッドランプはR8やA5らと同様、LEDを併用したデザインになった。 拡大
ホイールデザインは、ダブルスポークの5アーム。標準18インチにオプションで19インチが用意される。ブレーキ径はフロント340mm、リア310mm。
ホイールデザインは、ダブルスポークの5アーム。標準18インチにオプションで19インチが用意される。ブレーキ径はフロント340mm、リア310mm。 拡大
アウディ TTSクーペ の中古車webCG中古車検索

パワーアップの秘訣

TTSは、アウトバーンの追い越し車線でも常に余力を残している気配がある。つまり、それだけパワフル。
TTSのハイライトのひとつが、アウディ史上最もパワフルな4気筒エンジンであることは間違いない。2リッターの直4直噴ユニットにターボを組み合わせたTFSIエンジンは、その成り立ちだけ見れば、TTクーペ/ロードスターに積まれるものと同じ。ただし最高出力は200psから272psへと、大幅にアップしている。

出力アップ最大の要因は、ターボのタービンを大きくしたこと。サプライヤーも変更し、200ps仕様でIHI製だったタービンは、272ps仕様ではボルグワーナー製になっている。高出力化に備えシリンダーヘッドやクランクケース等を素材から強化、また、吸排気系や冷却系統の見直しも図られた。

272ps仕様は、圧縮比が200ps仕様の10.5から9.8に低められている。したがって、ターボラグが大きくなることやレスポンスの悪化が懸念されたが、少なくとも個人的には体感できなかった。仮に差があるとしても、両車を同条件で同時に比較して、初めて感知できるほどの小さな違いではないだろうか。

TTSの心臓は、2500rpmで最大トルク35.7kgmを発生する。「Sトロニック」を介した0-100km/h加速は5.2秒。「ポルシェ・ボクスターS」(5.4秒)や「BMW135iクーペ」(5.3秒)など、並みいるハイパフォーマーを凌ぐ。
TTSの心臓は、2500rpmで最大トルク35.7kgmを発生する。「Sトロニック」を介した0-100km/h加速は5.2秒。「ポルシェ・ボクスターS」(5.4秒)や「BMW135iクーペ」(5.3秒)など、並みいるハイパフォーマーを凌ぐ。 拡大
エグゾーストは左右振り分けの4本出し。120km/h以上でせり出すリアスポイラーは、80km/h以下になると収納される。
エグゾーストは左右振り分けの4本出し。120km/h以上でせり出すリアスポイラーは、80km/h以下になると収納される。 拡大

スイッチひとつでガラリと変わる

アウトバーンを降り、市街地や緩やかなワインディングロードでTTSを試す。まず感銘を受けたのが、抜群の乗り心地のよさ。245/40R18という太くて平べったいタイヤ(ミシュラン・パイロットスポーツ)なのに、アタリが非常に柔らかい。広報資料によれば、「スポーティなスプリングで、車高は10mm下がっている」。これも、普通なら乗り心地には厳しいはずだ。

それでも路面の凸凹をさらりと受け流すのは、「マグネティック・ライド・ダンピング・システム」が効果を発揮しているからだろう。ダンパーのピストン内部に、帯磁気粒子入りのフルードを循環させる仕組みは、素人目には奇妙だ。
でもその効果は絶大で、センターコンソールのスイッチで「ノーマルモード」を選べばしなやかな乗り味、「スポーツモード」ではすばしっこい運動神経を手に入れることができる。両者の性格の違いは鮮やかで、スイッチひとつでウォーキングシューズをジョギングシューズに履き替えられるといったところだ。

エアインレットの拡大、バンパースカートの形状変更などにより、フロントマスクは若干アグレッシブになった。
エアインレットの拡大、バンパースカートの形状変更などにより、フロントマスクは若干アグレッシブになった。 拡大
TTS専用「2トーンカラーコンセプト」によるインテリア。黒内装を基調に、写真のマグマレッドのほか、シルバー、オレンジとの組み合わせが選べる。
TTS専用「2トーンカラーコンセプト」によるインテリア。黒内装を基調に、写真のマグマレッドのほか、シルバー、オレンジとの組み合わせが選べる。 拡大

最強のTT=繊細なTT

アウトバーンでは感じられなかったけれど、この高性能エンジンは市街地やワインディングロードでもいい味を出す。2500rpmという低い回転域から5000rpmまで最大トルクを発生するエンジン特性は、たとえば信号からの発進や、タイトコーナーからの脱出でありがたい。
しかも、ただ実用的というだけでなく、3000rpm付近からの野太い快音(やや作為的にすぎる感もあるが)、6800rpmから始まるレッドゾーンに向けて一気呵成に回るスピード感など、官能性も持ち合わせている。
だから、普段はジェントル、その気になれば武闘派に変身、「ケンカも強いインテリ」という趣だ。

この大トルク、大パワーを受け止めるクワトロシステムにもふれておくべきだろう。日本で乗ったFFのアウディTT 2.0 TFSIは、フルスロットルを与えると多少トルクステアが出て、ややとっちらかることもあった。でも、クワトロシステム搭載のTTSは、どんなシチュエーションにあっても常にクールで上質なのだ。
この、パワフルなモデルになるにしたがって繊細な手触りになる、という部分が、このスポーツカーに新味を感じた最大の理由。高性能車というと、通常は動力性能を高くすることだけに注力しがちである。けれど、アウディTTSはコンフォート性能や官能に訴える性能も高めている。

筆者も含めた昔ながらのエンスージアストには、あるいは優等生過ぎると感じられるかもしれない。
「色男、金も力も手に入れた」的な佇まいも悔しい(?)。
でも、一糸乱れぬ洗練されたフィールを持つこのモデルの方向こそが最新スポーツカーのトレンドで、新種のクルマ好きに受け入れられることは間違いない。

ドイツ本国では2008年6月より販売される、TTSクーペ/ロードスター。日本への導入は本年秋で、まずはクーペから。価格は未定とのことである。

(文=サトータケシ/写真=アウディ・ジャパン)

 
アウディTTSクーペ 2.0 TFSI(4WD/6AT)【海外試乗記】の画像 拡大
TTSクーペの欧州における価格は、4万4900ユーロ(1ユーロ=160円換算で、約720万円)からとなっている。
TTSクーペの欧州における価格は、4万4900ユーロ(1ユーロ=160円換算で、約720万円)からとなっている。 拡大
サトータケシ

サトータケシ

ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。

試乗記の新着記事
  • 日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
  • アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
  • ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
  • ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
  • アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
試乗記の記事をもっとみる
アウディ TTSクーペ の中古車webCG中古車検索
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。