アウディS6(4WD/6AT)【ブリーフテスト】
アウディS6(4WD/6AT) 2008.04.15 試乗記 ……1306.0万円総合評価……★★★★
5.2リッターV10エンジンを搭載した、アウディのハイパフォーマンスモデル「S6」。高性能クワトロモデルの走りを試す。
「Sモデル」の伝統
“最高出力435psの5.2リッターV10”なんて聞くと、凄まじく速いんだろうなぁと思うと同時に、パワーを持てあましそうでコワイと不安になる。でも、アウディの手にかかればそんな心配は一切無用。腕自慢のドライバーにかぎらず、高性能を支配できるのがアウディ「Sモデル」の伝統である。
それを支えているのが、アウディのお家芸ともいえるフルタイム4WD「クワトロ」であるのはいうまでもない。テクノロジーで荒々しさを包み込み、クワトロによって強大なパワーを手なずけるアウディ流のクルマづくりこそ、ラクシャリースポーツ市場で戦うこの「S6」の武器なのだ。
それだけに、スポーツモデルならではの刺激が欠けるのかもしれないけれど、日々の生活でも快適に使えて、いざとなればスポーツカー顔負けのパフォーマンスを発揮するS6は、「A6」の最上級グレードにふさわしい才能の持ち主といえるだろう。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
アウディの「Sモデル」は、「Aモデル」をよりスポーティに仕立てた高級・高性能版。現行型は、2006年10月に導入された。
「S6」のエンジンは、最上級「S8」にも搭載される新開発5.2リッターV10。傘下のランボルギーニ「ガヤルド」用V10エンジンの技術に直噴FSIを投入、最高出力435ps、最大トルク55.1kgmを搾り出す心臓とした。
ティプトロニックの6段ATを介し、40:60のクワトロ4WDを駆動する。足まわりにはS6専用設定スポーツサスペンションがあてがわれる。
(グレード概要)
「Sモデル」のラインナップは、「S8」と「S6」。「S6」には、セダンのほかワゴンモデルも用意される。「A6」とのエンジン以外の違いは、S6専用のスポーツシートや、スポーツサスペンションのほか、ロゴ付きメーターパネル、LEDポジショニングランプ、ドアアンダープロテクター、リアスポイラーなど。見た目にもスポーティ。足まわりは、5アームウィングデザインアルミホイールに265/35R19タイヤを履く。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
運転席からの眺めは、ふつうのA6とさほど変わらない上品な雰囲気。しかし、センターコンソールやドアの化粧パネルがカーボンになり、メーターパネルやステアリングホイールに「S6」の小さなロゴが与えられるなど、アウディらしい控えめな主張が憎い。
ラクシュリースポーツにふさわしく、HDDナビに12セグの地デジチューナー、iPodなら接続できるだけでなく、車両側のコントローラーで操作可能なAMI(アウディ・ミュージック・インターフェース)など、快適装備も充実。ユニークなのが標準装着のソーラーサンルーフ。これは、ソーラーパネルで発電した電気を使って、駐車中の車内を換気するというもの。炎天下では重宝するだろう。
(前席)……★★★★
ヘッドレスト一体型の専用スポーツシートはサイドサポートの張り出しが大きく、迫力は十分。それでいて、座ってみると背中を包み込むようなフォルムがとても気持ちよく、座り心地も硬すぎない。当然、ポジション調節はすべて電動。ステアリングコラムのチルト/テレスコピック調節(こちらも電動)とあわせて、微調整が利くのは、ふだんの運転はもちろんのこと、スポーツドライビング時にも大いに役立つ。シートクッションの前端を伸ばせるのは大柄な人にはうれしい配慮だ。
(後席)……★★★★
フロントほどではないが、両サイドが少し張り出したリアシートは、身体の収まりがよく、肩まですっぽり覆う背もたれとあいまって、包み込まれる安心感がある。座面がちょっぴり低いので足を投げ出す格好になるが、5m弱の全長を誇るだけに足元は広々としていて、足を組むことも可能。ヘッドルームや横方向のスペースにも余裕がある。ルーフを含めて黒基調の室内はスポーティに思える反面、やや重苦しくも感じた。
(荷室)……★★★★
クワトロというとラゲッジスペースが狭い(浅い)というイメージがあったが、いまとなっては昔の話。このS6なら約50cmの高さを誇るうえに、奥行きも120cm弱と余裕の広さで、必要とあればリアシートを倒すこともできるので、たいていの荷物は呑み込んでしまうはずだ。トランクリッド自体はさほど大きくないが、ダブルヒンジ式でガバッと開くから、荷物の出し入れにも困らないだろう。フロア下にはスペアタイヤとバッテリーが収まる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
スターターボタンを押すと、キュルルルルと甲高い音のあと、ブウォーと目を覚ますアウディのV10エンジン。アイドリングでフロアやステアリングにかすかに伝わる振動が、タダモノじゃないことを予感させる。
ティプトロニック付6段ATが組み合わされることもあり、1000rpmを回ったあたりからすでにじわっとトルクを滲み出すパワートレイン。エンジン自体も、1500rpmに達したころからもっと踏んでくれ! とばかりに軽々と回り出し、2000rpm台後半にはトルクが本格化。常用する低中回転域ではスムーズかつジェントルで、アクセルを軽く踏むだけで十分な加速が得られる。大排気量エンジンの成せる技だ。クワトロのおかげで、ドライ路面であればその強大なトルクを持て余すこともない。
V10らしさを堪能したければ、アクセルペダルをさらに踏み込む必要がある。回転が上がるにつれて低いエンジンサウンドが控えめなボリュームでキャビンを満たすことになる。力強さは感じるものの、トップエンドに向かって一気に吹け上がる感じが乏しいのが惜しいところだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
A6のV8モデルとは異なり、エアサスを持たないS6。専用のスポーツチューンが施されているが、アタリが比較的マイルドなタイヤのおかげもあって、一般道では覚悟していたほど乗り心地が悪くない。路面が荒れてくると、上下に揺すぶられることもあるが、角が取れた硬さが救いである。高速ではエアサス付きのA6ほどはフラットではなく、ゆるいピッチングが気になることもあった。
一方、S6のハンドリングは痛快である。車両重量は2020kgに達し、それなりに重量のかさむV10エンジンをノーズに収めるにもかかわらず、ステアリングを切ると思いのほか良好な回頭性に驚くはずだ。その後は軽いロールを伴いながらコーナーを駆け抜ける。途中アクセルを踏み込んでいってもフロントが膨らむ気配を見せないのは、通常フロント40:リア60とリア寄りにトルクを分割するS6のクワトロが貢献しているのだろう。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2008年2月25日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2007年型
テスト車の走行距離:2800km
タイヤ:(前)265/35ZR19 98Y(後)同じ(いずれも、コンチネンタル SportContact2)
オプション装備:アダプティブクルーズコントロール(28.0万円)/7ツインスポーク19インチアルミホイール 265/35R19タイヤ(20.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(7)
テスト距離:441.7km
使用燃料:84.1リッター
参考燃費:5.25km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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