第353回:青臭いニッポンのレーシングオヤジに乾杯!
誕生、童夢S102&日本自動車レース工業会
2008.03.15
小沢コージの勢いまかせ!
第353回:青臭いニッポンのレーシングオヤジに乾杯! 誕生、童夢S102&日本自動車レース工業会
レースはマシンを見に来るモンだ!
いやー、久々にニッポンの青臭いレーシングオヤジの底力を見た! と言いたくなってしまいました。そう、先日東京で行われた童夢S102&日本自動車レース工業会の発足発表会でだ。
正直レースにはそれほど詳しくない俺だが、カンタンに言ってしまえば童夢S102ってのは、日本を代表するレーシングコンストラクターの童夢が、今年のルマン24時間に挑むための久々の新作プロトタイプレーシングカーである。
このマシンのキモはディーゼル対策。
今やアウディとプジョーというヨーロッパの2大ワークスが、本気のディーゼルエンジンレーシングカーで鎬を削る舞台に、童夢は今までどおりの630psのジャッド製5.5リッターガソリンV10のミドシップカーで挑むことを決めた。童夢カーボンマジックの奥明栄社長によれば、「レギュレーション的にはディーゼルのほうが170馬力ぐらい有利だけど、エンジンが重い分、バランス的に不利。ウチは逆にシャシーバランスのよさで勝負します」とのことで、どうやら予選トップタイム奪取を狙ってるらしい。
まあ、車重900kg台で、170馬力差ったらトンでもなく不利な気もするが、それを承知で勝負を挑むドン・キホーテぶり(!?)には全開で拍手を送りたい。
さらにシビれたのが、当の童夢代表であり新団体、日本自動車レース工業会会長の林みのるさんのお言葉だ。
要約すると「レースはドライバーのテクニックを競うものとされているが、本当は自動車開発技術の戦いであり、ファンはその技術の結晶であるレーシングマシンにより多くの魅力を感じるもの」という内容で、日本におけるレースの解釈の間違いを指摘したのだ。
これを受けてレース工業会では、「レースは自動車開発技術の戦いであることを理念とし、日本に技術の戦いを取り戻し、最終的には現在年間約1200億円ともいわれているレース購買を国内に取り戻し、輸出を拡大すること」を目標とするという。
オヤジたちの一致団結に感激
つまり、俺達が日本のレース業界を改革する! やったるぜーってわけだ。
具体的なアイデアも盛りだくさんで、
・新たにレースにおけるエンジニアリング・スタンダードを制定
・毎年、専門誌レース記事の「最高」と「最低」を表彰
・レーシングカー用の汎用カーボンモノコックを供給
・F660、つまりお手軽な“軽自動車フォーミュラレース”を開催
などなど13項目も企画。
しかし、不肖・小沢がどこに一番感激したのかって、主催者全員がかなりのいい歳揃いであることだ。今年63歳になる林みのるさんを筆頭に、副会長のトムスの大岩さんは今年69歳だし、理事で最も若そうなムーンクラフトの由良拓也さんでさえ57歳。一般的には定年を迎えてもおかしくないオヤジたちが一致団結して、日本のレース界の元凶とも言うべき“マンネリ&儲からない”体質にメスを入れ、改善しようとしてるわけだ。
実際のところ、そうそう上手くいくとも思えないし、理想通りにはいかないものだろう。しかし、挑戦のないところに成功はもちろん失敗もないわけで、逆に俺達やもっと若い世代の情熱のなさ、ノーアイデアぶりを思い知らされたのも事実。
それだけじゃない。林会長は名誉会長に、「自身レースファン」という現国土交通省副大臣の平井たくや氏も招聘。なかなかの手腕ではないか!
ってな具合に老いてもなお声高にパワフルに、青臭い夢を負い続ける日本のレーシングオヤジたち。まったく持って頭が下がりますよ。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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