フォルクスワーゲン・ゴルフTSIコンフォートライン(FF/2ペダル6MT)【試乗記】
侮れない実力 2008.03.11 試乗記 フォルクスワーゲン・ゴルフTSIコンフォートライン(FF/2ペダル6MT)……289.0万円
VWゴルフに1.4リッターTSIエンジン+DSGを搭載した「TSIコンフォートライン」が登場。「GT TSI」より快適性を重視し「GLi」に代わるモデルとなる140psバージョンに試乗した。
TSI効果
日本導入から3年あまりが過ぎ、そろそろモデルチェンジの声が聞かれる「ゴルフ5」だが、その人気は衰えるどころか、一部のグレードでは納車まで時間がかかるなど、いつもと違う状況に見舞われている。その人気を支えているのが、2007年1月に投入された「ゴルフGT TSI」で、2007年におけるゴルフの全販売台数のうち約3割を占め、納車待ちがなければさらに比率が高まったのではないかと考えられる注目のモデルである。
人気が集まる理由はいまさら説明するまでもないが、このモデルに搭載されるTSIエンジンが、わずか1.4リッターの排気量ながら2.4リッタークラスの力強さを誇り、燃費は排気量相応に低く抑えられること。加えて、スポーツサスペンションや17インチタイヤの採用によりスポーティさを前面に押し出したことで、エコロジーとスポーツの両立を図ったのが、ファンの心をくすぐったというわけだ。
その一方で、年配や女性の客からは、もう少し快適性を重視したモデルを望む声が多かったという。そんな声に応えるべく追加されたのが「ゴルフTSIコンフォートライン」である。
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通が選ぶ「GLi」
ゴルフTSIコンフォートラインは、「ゴルフGLi」の後継車。2リッター直噴エンジンを積むゴルフGLiは、1.6リッターの「ゴルフE」と並んで快適性を重視したモデルであり、「GT TSI」や「GTI」のような派手さはないけれど、軽快なフットワークと快適な乗り心地、そして、程よいエンジンパワーによって、絶妙なバランスを備えていた。これを“ベスト・ゴルフ”と推すモータージャーナリストは多く、実際に購入した人も少なくない。実は私もそのひとりであるし、自動車専門誌『CAR GRAPHIC』の長期テスト車として活躍していたことも記憶に新しいはずだ。
そのゴルフGLiのエンジン以外をほぼそのまま受け継ぐのがゴルフTSIコンフォートラインである。エンジンはゴルフGT TSIと同様、1.4リッター直噴エンジンにターボとスーパーチャージャーのふたつを組み合わせた“ツインチャージャー”ではあるが、GT TSIが170ps/24.5kgmという余裕の性能を誇るのに対し、TSIコンフォートラインには少し控えめな140ps/22.4kgmのマイルドバージョンが搭載される。
期待を裏切らない
試乗したのは“リフレックスシルバー”と呼ばれる明るいシルバーのクルマ。テールゲートに「TSI」(このうち“I”だけが赤く塗られている)のバッジが備わるが、それ以外にGLiと区別する手段はない。室内の様子も最終型のGLiとほとんど変わらないが、GLiの元オーナーとして唯一不満だったステアリングホイールが、このTSIコンフォートラインでウレタンからレザーに変更されたのは喜ばしい進化である。いまさらという感じはするが、文句をいい続けてきた甲斐はあったようだ。
さっそくエンジン始動。アイドリング時のノイズ、振動は低く抑えられている。シフトレバーをDレンジに入れて、ブレーキペダルから足を離すと、クルマはゆっくりと動き始めた。このクルマに載るトランスミッションは、DSGと呼ばれる2ペダルMTで、2組のクラッチを交互につなぎかえることで、スピーディなシフトを可能にしている。トルコンATほどクリープは強くなく、かすかに振動を伝えてくるが、以前に比べるとギクシャクする感じもなくなった。DSGの進化は留まることを知らないのだ。
軽くアクセルペダルを踏んでやると、2リッター直噴よりも明らかに軽々とスピードを上げる。右足のわずかな動きに即座に対応するレスポンスの良さも実感。DSGのシフトは相変わらず素早くスムーズだ。加速時、ガサついたエンジン音がやや耳障りなのが1.4リッターTSIの欠点といえるが、それさえ目をつぶれば不満のない仕上がりである。そして、マイルド版のツインチャージャーとはいえ、実用域で不足を感じることはまずない。
高回転域では、170psのTSIほどの“伸び”は感じられないものの、高速の追い越しなどでも十分な力強さ。正確な燃費は計測していないが、10・15モードで2リッター直噴を約18%上回る14.2km/リッターをマークする実力の持ち主、オンボードコンピューターの表示を見ていても燃費の良さが感じられた。
ベスト・ゴルフ
ゴルフTSIコンフォートラインの走りっぷりも期待どおりだ。標準のサスペンションと195/65R15のコンフォート系タイヤが装着される試乗車は、ゴルフGLi同様、マイルドな乗り心地が特徴で、バネ下がバタつく感じもない。動きは落ち着いていて、スピードによらずフラット感も十分。それでいて、ステアリングを切ればスッとノーズが向きを変える軽快さも兼ね備えている。これみよがしのスポーティさはないが、気持ちのいい動きを見せるという点では、決して侮れない実力を備えている。
短時間の試乗ではあるが、TSIコンフォートラインがGLiの快適さに、TSIならではの高性能と低燃費を備えていることを実感した。これまでGLiをベスト・ゴルフと推してきた私としては、今後はこのTSIコンフォートラインを勧めるつもりだ。
そうなると気になるのが、エントリーモデルのゴルフEの将来。今年半ばにも、スーパーチャージャーを持たない1.4リッターの“シングルチャージャー”TSIと7段DSGを搭載してくるということで、その実力によってはベスト・ゴルフのタイトルがこちらに動く可能性もある。いまから試乗できる日が楽しみである。
(文=生方聡/写真=荒川正幸)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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