スバル・フォレスター2.0XSプラチナセレクション(4WD/4AT)/2.0XT(4WD/5MT)【試乗記】
すっかりSUVになっちゃって 2008.02.20 試乗記 スバル・フォレスター2.0XSプラチナセレクション(4WD/4AT)/2.0XT(4WD/5MT) ……286万1250円/296万6250円2007年12月のフルモデルチェンジで誕生した3代目フォレスター。それは以前のモデルとは別車種になったかのような変貌を遂げていた。
動きがちょっと鈍くなった?
SUVとセダンをミックスしたクロスオーバーSUVの草分け的存在として、1997年に初代が登場したフォレスター。それから10年が経って登場した3代目は、当初のコンセプトより、ずいぶんSUV寄りのクルマに変わっていた。先代モデルはベースとなったインプレッサほどではないが、オンロードで優れたパフォーマンスを示すセダンライクなクルマだった。新型になってそうしたクロスオーバー的なキャラクターは薄れ、グッとSUVに近づいた感じだ。
どんなところがSUVっぽいかというと、図体が大きく“腰高”になったところだ。これが見た目の雰囲気をワイルドに見せているだけでなく、走りやユーティリティ面にも影響している。良い面としては、着座位置がアップしたため、見晴らしが良くなったことが挙げられる。また、高い車高に最適化されたサスペンションにより良好な乗り心地が味わえるようにもなった。またサイズアップにより荷室が広がったこと(ゴルフバッグが4つ入る)や、ちょっとした段差も気にせずガンガン行ける頼もしさも魅力だろう。
ただし、先代モデルと比べ、オンロードでの動きはやや鈍くなった。車高(重心)が高くなった影響で、ステアリングを切ると従来よりワンテンポ遅れて反応する。また、最近のクロスオーバーモデルの中にあってフワフワ感も少ないほうではない。そうしたことから「すっかりSUVになっちゃって」と感じたのだ。
スバルらしさより、SUVらしさ
もっとも新型フォレスターでは、メーカー自身が「SUVとして開発した」としているのだから、もはや先代モデルと比べるより、SUV車としてどうなのかを評価すべきだろう。そうした観点からいくと、新型フォレスターはSUVとしては上々、スバル車の中では、並レベル(=価格相応)といったところ。なぜスバル車の中で並レベルかというと、同じくクロスオーバーSUVに類するレガシィ アウトバックほどは動きがシャープではないから。アウトバックがこの点において非常によくできたクルマだけに、それと比べてしまうと少し見劣りするといわざるを得ない。
そこで価格帯を見比べると、アウトバックが約268〜323万円であるのに対し、フォレスターは約199〜282万円と大きな開きがあり、両者は違って当然ともいえる。いっぽうハード面で見ると、車両の動きに影響を及ぼす地上高は、アウトバックや先代フォレスターが200mmであるのに対し、フォレスターは215〜225mmとさらに高めに設定されている。このことからも開発段階における目標設定の違いが見て取れる。つまり、フォレスターは舗装状況のよくない海外市場での需要が多いことから、対地障害角を広く確保した設計で、アウトバックほどオンロードでの走りは追求されていないようだ。
ただし、誤解なきように付け加えておくと、他社製まで含めたSUV全体の中でフォレスターのシャシー性能が絶対的に低いというわけでは決してない。むしろレベルは高いほうで、高い位置で適度にロールを許すものの、そこからグッと粘ってくれる感じがあり、質量の大きさをさほど意識させず、むしろ軽量感さえ感じとれる。ただスバル車は全体的にシャシー性能が高く、ユーザーもそこへの期待値が高いため、スバル車の「いつものあの感じ」を望むと肩すかしを喰らう可能性があるということだ。
そういうわけで、新型フォレスターは(以前ほど)飛ばしたくなるような類のクルマではなくなった。「そもそも初めから飛ばすようなクルマではないだろう!?」という意見もあろう。そこで今度はそういう視点に切り替えて見ていこう。
4人にとっては快適なキャビン
内装については、インプレッサと基本デザインは類似していて、加飾パネルやデザインの工夫によってSUVらしさが演出されている。質感もそれなりに確保されていて、高級とまではいかないが、安っぽい感じもない。内装の質感は価格相応に感じた。
シートは、プラチナ内装と呼ばれる明るいシルバー系と、ブラック内装の2タイプが設定される。黒シートは防水タイプ(XS、XTグレード)となり、座面や背もたれの外側はビニールっぽい素材、中央部に滑りにくい素材が使われている。サイドサポートが適度にはり出していることと相まって、体が接する部分の滑り止め効果が高くなっている。座り心地については、表面がソフトでありながら体の落ち着きがよく、ホールド性はいい。なかなか心地よいシートだ。
リアシートもクッション性は十分。リクライニング機能もあり、姿勢を崩して安らぐこともできる。ただし中央席の座面は回転させてドリンクホルダーに様変わりする仕組みのおかげで、座面が硬く座り心地は良くない。長距離移動では実質4人乗り。5名乗車はちょっと辛そうだ。
オススメはフツーに乗れるNAのオートマチック
次にエンジンについてだが、NAモデルのほうはとてもしっくりくる乗り味に仕上がっていた。これぞ新型フォレスターのコンセプトを体現されているようで、スバルはこういうクルマを作りたかったんだ……というのがわかる。すなわち全体的にそつなく、乗り心地が良くて静粛性にも優れている。加えて見晴らしも良く、運転がしやすい。エンジンとシャシー、制動力、それにNVH性能まで含めバランスが良く、ファミリーカーに向いていると思った。
いっぽうターボ車のほうはマニュアル仕様の印象ではあるが、NA+4段ATモデルで感じたほどのバランスの良さは感じられなかった。というのも、230psもあるとエンジンの存在感が全体の中にあって俄然際立つ。それ自体は悪いことではないが、その勢いに乗ってエンジンに高い期待を寄せると、低回転域でのトルクの細さと、ギアチェンジの際の回転落ちの悪さにガッカリする。このふたつの弱点が災いして、スポーティに走らせたい気持ちがそがれてしまうのだ。またちょっとしたオフロードに乗り入れた時も、トルクの線の細さから簡単にエンストしやすい。2リッターのSUVに多くを期待するのは酷かもしれないが、オフロードを走る機会のあるSUVなら、もう少し低回転域からトルクが太くあってほしいところ。このセッティングだとせっかくのMTを選ぶ価値が見出しづらい。
それに対し、NAのオートマチック車を選べば、手頃な価格でSUVらしさが味わえ、走りもそこそこ楽しめて、荷物もたくさん積めるクルマということで納得できる。
ともあれ、スバルのラインナップに今まで存在しなかった本格的なSUVモデルが加わったことで、六連星の配置がずいぶんと最適化されたように思う。これまでは“走りの良さ”を身上とするモデルに偏りがちという感が否めなかったが、フォレスターがSUV寄りにシフトしたことで、ラインナップ全体の守備範囲が広がった。実際、新型フォレスターに「レガシィの廉価版」的なイメージはない。所帯じみたイメージを嫌う向きや高めの乗車位置を好むユーザーにとっても、新型フォレスターのSUVらしい外観は魅力だろう。
走破性についてスバルのフルタイムAWDシステムは従来より定評のあるところだが、新型ではさらにロードクリアランスが増したことで、オフロードの機動力に磨きが掛かったのも見逃せないポイントだ。
(webCG 曽宮/写真=高橋信宏)

曽宮 岳大
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